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     2023.10.29 Sunday

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     2012.11.07 Wednesday
先日、学校の教官募集にCV(履歴書)を出す機会があったのだが、それを書いていて思ったこと。

Achievementという欄に書く内容を考えあぐねていた。日本の履歴書なら賞罰みたいなものか。。。卒業証書と資格証書をのぞいては、およそ賞状というものからは縁のない人生だった[1]ので、それをいきなり目の前に見える形で見せてみろといわれても書くことなどない。学歴や資格は別に書く場所がある。そのうちなんかあるだろと思って放っておいたが、他の全ての内容を書き終えた後も、紙面には口をあけたままの空欄が。

ずーっと考えていたのだが、学生じゃないんだから仕事の成果を書けばいいのでは、と気づいた。ならば、ショックアブソーバーの特許を2、3取ったことがある[2]のを思い出し、特許広報みたいなサイトから見つけ出して登録番号とともに書いて無事提出した。

目の前の仕事を片付けろ!
数年前の自分に感謝しなければならない。あのときは、C制度やらなんやらで心はパイロットになると決めていたが実際にやることはパイロットとは関係のない仕事で、プライベートと仕事で完全に精神が分裂して辛い時期だった。でも目の前の仕事に100%で取り組まないとすぐに見抜かれる状態だったので、適当なことはできなかったし、まわりに適当な人がいたら軽蔑していた。モチベーションなんか全くなかったけど、やる気なんかなくても仕事はできる、と言い聞かせてその時点での最高のアウトプットを目指して仕事をしていた。それがパイロットの仕事をつかむ段になって思いも寄らぬ形で役立つものだということを今更ながら知った。

よく考えれば、仕事が変わるからって前職とそれに続く仕事に断絶があるわけないのだ。仕事をするのは自分なんだから。今、地上にへばりついてやっているパイロットとは関係ない仕事に対する態度と成果は、自分という仕事の主体が変わらない以上「パイロットとは関係ない」ことはあり得ない。未来のことは未来の自分に任せればいい。たとえ乗り気のしない仕事でも、それが目の前にあるうちは成果として結実させるためにコミットすることが出来る。未来の自分に武器を渡すつもりで目の前にある無駄に見える仕事を全力で片付けることだ。

それがそのまま出るぞ。



1. 唯一思い浮かぶのは小学三年生のときの写生会で描いたショベルカーの絵に貼られた赤紙だ。
2. もちろん特許権は会社に帰属してます。入社時にそういう契約書にサインします。日本の悲しい風習。
     2012.10.30 Tuesday
ジクアスという目薬を知っているだろうか。



先日、NHKの試してガッテンでやっていた、ドライアイ用の目薬。既にいろいろなブログなどで紹介されているので[1]ここではあまり詳しくは書かないけど、かいつまんで話すと、

・ドライアイを改善する薬であること
・それまでのヒアルロン酸の目薬と違い、ムチンという眼球から元々分泌される物質の分泌を促進する薬であること。
・ドライアイの人の中にはムチンの分泌が不足している人がいて、これがないと涙や目薬などで潤いを与えても、それがスムースな膜を作れないため乾きが早く、涙の膜の表面がでこぼこになるので時間とともに視力が落ちてしまう。

ということらしい。翻訳という仕事柄一日中PCの画面を見ているため、目が乾きがちだなと思っていた。パイロットなので目は大切にしないといかん。[2]市販薬ではなく、眼科で処方してもらう必要があるとのことで、早速眼科に「最近目が乾きます」と言って突っ込んでいった。もちろんジクアスがあるかどうかを確認してだ。

ちなみに「ジクアス」というのは商品名で、番組ではその成分名である「ジクアホソル」という名前で紹介していたため、最初は「そういう薬はありません」と言われた。2つ目の眼科で「ジクアスのことですね?」と確認されて、初めてこの薬が「ジクアス」という品名であることを知った。番組では「レバミピド」というもう一つの薬も紹介していた。今のところ両方とも日本でしか認可がおりていないらしい。

使ってみた感じは、、、今のところいい感じ、のような気がする。今もこうして文字を打っていてなんだか目の乾きが改善されているような気がする。眼科医によると、効果には個人差があり(そもそもムチン不足のドライアイかそうでないドライアイかで効果は全く違うのだし)一定期間やり続けないと判定できないようだ。

保険適用で500円だそうだ。ついでにコンタクト用の目薬も数本出してもらった。こちらは保険適用で150円/本。市販薬より断然安い。





1.「ためしてガッテン ジクアス」でググるとたくさんでてきます。
2. 先日買ったZoffのPCメガネもいい仕事してます。
     2012.10.26 Friday
前回のつづき。

んでまぁいろいろあって(雑ですみません)立ち直った深キョン管制官が勉強の成果をみせて、また飛行機をさばき出すわけですが。終盤にもう一転する。悪天候の羽田に片方のエンジンが止まった外国の旅客機が燃料が少ない状態でダイバート(目的地外の空港に着陸すること)してくるというのだ。なんとか着陸態勢に入るダイバート機。ところが悪いことに風と雨が強まってきた。深キョンはここで、

「ダウンバーストが接近しています、ゴーアラウンドさせてRWY34Lに誘導します!」

という賭けに出る。

ダウンバーストを予想したのは伏線があって、前回のミスの後、いろいろな現場を回って「努力」をした。鳥を追い払う裏方の人たちに突撃取材し、鳥が低く飛ぶときは天気が崩れるという観天望気を伝授されるのだ。同僚の気づかないところで努力したことで獲得した「武器」で誰よりも早く天候の変化に気づく深キョン。先輩の反対を押し切って外国機にゴーアラウンドを指示、ショートファイナル(着陸寸前)で見事に風は止んだ。0kt、無風だ。予想は見事に的中!というようなハッピーエンドだったのだが果たして。

ショートファイナルでいきなり0kt??
ショートファイナル(着陸の最終局面)で風がいきなり無風になるのは好ましいことではない。それまで向かい風に乗って飛んでいた飛行機が無風状態の空間に突入したら、突然つっかえ棒が取り払われたように前のめりになってしまう。具体的には、揚力が減って飛行機が沈む。地面が近いショートファイナルでこれは起こってほしくない。ドラマの状況ではガスト(風向風速の定まらない突風)が吹いていたので、それよりは無風の方がいいのでは?と思うかもしれないが、そうとも限らない。それは「ダウンバースト」を話題にしていたからだ。

ダウンバーストの恐怖
ダウンバーストというのは、積乱雲からの吹き下ろされる強風のことだ。積乱雲は寿命が短く、垂直方向に大きく、急激に発達・消散する。空高く持ち上がった湿り気のエネルギーがいっぺんに雨となって地面に降り注ぐ。その際、上空の冷えた空気が上から落ちる氷や雨に引きずられて落ちてくる。落下の途中で氷や雨が蒸発すれば気化熱で周辺の空気を冷やし、冷えて重くなった空気はさらに加速し、、、と続いて地面に達する頃には急激な下降気流となる。夕立の前にひんやりとした風が吹いた後に雨がざっと降るのはこのためだ。あれは下降気流が地面に当たった後、横に向かって広がっていくときの風。風の広がりの先頭をガストフロントなんて言う。ちょっと絵を描いてみた。[1]



この絵をよく見るとわかるのだが[2]、ダウンバーストを発生させる積乱雲の直下を飛行機が飛行した場合、最初は向かい風だ。そしてある時点で無風(上からの下降気流のみとなり横の成分がなくなる)になり、最後には追い風に変わる。これがダウンバーストの恐怖で、急激に風向きが逆方向になり、つっかい棒がはずれるどころか後ろから押されて飛行機が急激に沈む。この現象が解明されるまでには時間がかかったらしく、事故もよく起きたようだ。最近ではドップラーレーダーなる積乱雲を詳細に追跡できるレーダーが設置されている空港もあり(羽田にはあるだろう)かなり正確に予想できるようになったようだが。。

ショートファイナルで無風ということはまさしく向かい風から追い風に変わるところ、下降気流に叩き付けられる瞬間だったとも解釈できる。燃料欠乏の片肺の飛行機に乗っているパイロットとしてはあまりうれしい状態じゃない。

ダウンバーストの「可能性」でゴーアラウンド?
深キョンはダウンバーストが吹く「可能性があるから」ゴーアラウンドと言っていたが、私はここで思ったのは


「ダウンバーストの可能性があるからといって管制官がパイロットにゴーアラウンドを指示する権限はあるんだっけ?」

ということだった。そこで、Facebookにそのまま疑問を流してみた。だれか反応するかな。[2]




同期のRyoが反応してくれた。この後、ラインで飛んでる先輩もそういう話は聞いたことがないと言っていた。やっぱ最後の最後は機長に任せるという方針なんだろう。自分が飛んでいるとしてもそう思うだろう。




1. このためにホワイトボード買ってきた。日本の100均ってすごい。

2. わかるだろうか?

3. 最近仕事(翻訳)で真面目に業務改善案を出したりして「めんどくさいこというキャラ」になっている身としては反応してくれる人がいてうれしかった。(笑)日本の会社では空気を壊してでも何かをやり遂げようとか改善しようとかすると得てして煙たがられる。早く100%の力で打ち返せるヒコーキの世界にもどりたい。
     2012.10.15 Monday
TOKYOエアポートというドラマを見た。毎週日曜日だそうだ。前作はTokyoコントロールといって、DVDが出ている。




とても面白いドラマだった。深田恭子主演。設備や機材ももちろん本物で、見たことがないものを見せてもらってありがたい。羽田のタワーの中は初めて見た。クライストチャーチのタワーの中にははいったことがあったが、何となく似ていた。管制官が使うSIMも初めて見た。これやりたくなった。



ドラマを見ていて、突っ込みたくなるところもあった。これはいい勉強の機会と捉えた。実際あれ?これってそうだっけ?どうだっけ?と思って教科書を開いたような場面もあって、そういう意味でも面白かった。以下、紹介してみたい。念のため断っておくけど「へへーんそれって本物とはちがうんじゃないのー」と後出しじゃんけんのように難癖をつける意図はない。当然第一話のネタバレになるので、まだ見ていない人は気をつけてください。では制作側への敬意を込めて。。






いいですか?





キャンディーバー
さて。まずは、つっこみというより「意外」だったこと。この記事にも書いた、「ストリップ」をまだ使っているんだ、ということ。ストリップというのは、それぞれのフライトプラン(1便ごとの飛行計画)の情報が書き込まれるキャンディーバーのようなプラスティックの板。下記は記入前のもの。



管制はタワー(飛行機の離発着許可を出す)、デリバリー(飛行場内の飛行機の動きを管理)、コントロール(空港上空への飛行機の出入りを管理)等、いろいろな部署が連携している。間違いがないように、ストリップに各フライトの情報を一元化してあらかじめ決められた順序とルールに乗っ取って確実に情報をやりとりする。ストリップを受け渡すことが、すなわち担当の責任を受け渡すということだ。クライストチャーチではこのストリップを全て電子化していたのに、飛行機が遥かに多い羽田で手書きのストリップというのが面白かった。




ミスる深キョン
中盤、主人公の篠田(深田)がミスを犯す場面があった。先輩管制官の竹内(瀬戸朝香)のサポートのもと、そつなく飛行機をさばいていたのだが、竹内が違う同僚と話をしに一瞬場所を外した。その間に、滑走路脇での待機を指示したChina air (だったかな)の飛行機が滑走路へ誤進入したのだ。[1]

その滑走路には違う飛行機がアプローチ中だった。正確にどう言ったかちょっと忘れてしまったが、「China air, hold short of RWY 34R」という主旨の深キョン管制官の指示に対し、誤進入したパイロットは「Rojer」と答えた。正直、竹内が席を外した時点でなんか起こる空気があったが、「Rojer」の時点で「あ、誤進入するな」とわかった。

航空無線では、相互の意思の齟齬を最小限にするためにリードバック項目というのが決められている。滑走路の名前や離発着のクリアランス、ホールドする場所の位置など、間違えたら直接事故につながる情報は、管制官の指示に対しパイロットが復唱をする決まりになっている。もし間違って伝わってしまっていても、リードバックさえすればそれを発見し、訂正することが出来る。滑走路の脇で待機せよ、という指示に対して「Rojer(了解)」と答えるパイロットはいない。クリティカルな場面で不適切な表現が出てきたので、ピンときたのだ。


日本語の使い方
竹内が異常に気づき、アプローチ中のパイロットにゴーアラウンド(着陸復航)を指示した。その際、竹内は日本語を使用し「●◎便、すぐにゴーアラウンドしてください!滑走路に飛行機が誤進入しています!」と指示していた。日本の管制では、緊急時に日本語で交信することが認められている。こんな風に運用されているのかーと思った。

私は日本の管制をほとんど聞いたことがない。以前北海道の学校に見学に行ったとき、函館タワーの管制を聞いたことがあるのみだ。だから、あの状況で実際に日本語が使われるのかどうか本当のところはよくわからない。日本で飛んでいる飛行機の多数が日本人パイロットによる(はず?)と考えれば難しいところだが、個人的には安易に日本語に頼るのは良くないと思う。周りの外国人パイロットとの調整がとれないし、緊急事態に陥るパイロットが日本人とは限らない。大変だけど、がんばって一本化するべきだと思う。上記の例では「●◎, GO AROUND due to runway incursion.」で済む。[2]


怒られる深キョン
誤進入した飛行機とゴーアラウンドした飛行機が間一髪で(これも誇張が入っていたが。時間的には余裕があったからあんなに接近することは考えられない。)衝突を回避し、重大インシデントとなったのか篠田と竹内ら直属の上司たちがどっか暗い部屋に呼び出されて、現場にいない上司に怒られる場面があった。私は、管制官はこんな風に怒られてはいけない。と思った。

脚本として「聞き分けの悪い保身第一のキャリアに理不尽な叱責を受ける現場」というわかりやすい構図を見せたかったのかもしれないが、事故やインシデントが起きたときに現実の管制官やパイロットがあんな風に怒られることがないと信じたい。ああいうのは百害あって一理なしだ。ミスを犯す前提で、小さなエラーが起こってもそれを収束させるようなシステムを作ることが大切なのであって、ミスを犯した個人を叱責して、「次は気をつけます」と管制官やパイロットに言わせた瞬間に将来のもっと重大な事故へのカウントダウンが始まるのだ。

ここだけはドラマティックにするための脚本上の演出であるのか、取材の結果あんなことがあるのかわからなかった。実際の管制官がミスを犯した場合にどんなふうに対応されるのか、興味が有る。


終盤またひともりあがりあるのだが、長くなるので次回に持ち越し。

ちなみにこの番組、前作のTokyo Controlとストーリーや出演者に関係があるような雰囲気だった。100%3Dカメラで録られているらしくちょっと見たくなってる。。。








[1] ちゃんとリードバックを要求しなかったという点で管制官のミスでもあるが、あそこでRojerと言い放って進入するパイロットもゴーアラウンドを指示されたのに直ちにフルパワーにしないアプローチ機にも問題あるんじゃ、、、とおもったけどテレビです、わかってます。

[2] そうはいっても、仮に今の私が今の英語力で日本で飛んでてクリティカルになったら日本語になるんだろうな。。。もっと英語がんばらねば。
     2012.08.24 Friday
最近は夜布団に入った後から寝付きが極端に遅い。

熱帯夜のせいもあるが、考えることがたくさんあって脳の電源がオフにならない。

その反動か、昼間翻訳をしていると不意に眠くなることがある。時差ぼけのように体内時計がずれて午前中は身体がまだ寝ている。涙の分泌が少なくなるため目が乾き、疲れる。どうしたものか。

目の疲れが頭痛になった日に危機感を覚えて、とりあえずzoffでブルーライトをカットするという色付き眼鏡を買った。色なしもあったが。色付きと比べてカット率が下がるのと、上を向いたときに眼鏡がキラーンって光るのが嫌で色つきにした。前者がブルーライトを「吸収」するのに対し、後者は「反射」することで低減する。だから、キラーンとなる。





結果は。。。いい。これは結構いい。これをした後にもう一度外し、改めてパソコンを見てみるとすごくまぶしい。目の疲れも少しは軽減された、、、気がする。

ちなみにJinsも考えたが、Zoffでは他社フレームの持ち込みもやってくれたのと納期が早いのでこちらを選んだ。フレーム持ち込み、度付き・色付きレンズで5980円だった。私は左右で視力が違うので度を入れた方がいいと思った。近くを見る作業をするときにかける眼鏡なので弱めに入れた。



だが目痛・頭痛の根本原因は睡眠リズムのずれだろう。こっちをなんとかしないといかん。


なんとかせねば。


先日、メールをチェックしたらアマゾンから1514円分の謎のクーポン券が突然送られているのに気づいた。



しかも、有効期限がその日になっている。なんだこれは、だが使えというのなら使ってやろう。なにがいいかな。。。。


そういえば、以前池袋の無印良品で買い物をしていたとき、店内でアロマディフューザーが動いていて欲しくなった。強烈な暑さの屋外から店内に入ると、なんだか柑橘系の香りがしていてすごく良かったのだ。だが無駄遣いできないので少し様子を見ていた。今、アマゾンの画面には1500円相当の「エッセンシャルオイル入門セット」が。。。





うむ。これがいい。

ということで初めてエッセンシャルオイルというものを手にした。そんなオサレなものとは遠い場所にいたし、そもそもキャンドルやデフューザーを一緒に買わなかったので使いようがない。とりあえず今日はもういいや、さっさと寝よう。




     2012.06.10 Sunday
褒められた!

翻訳の仕事というのは、楽チンそうに見えて結構しんどい。大体、8時間のほとんどを座ってすごすのは、場合によっては動き回るより疲れる。事務仕事をしている人はわかると思うけど、腰と尻に疲労が蓄積してくる。私は最近、電車で目の前の席が空いても座らなくなった、他人と体が触れ合うのが嫌だというのもあるが、なにも電車で座らなくても尻に鈍痛が出るまでオフィスで座れるからだ。

尻の痛みに耐えながら来る日も来る日も同じ作業を続ける中、先日翻訳を納品したクライアントから、こちらの上司経由でありえないフィードバックが返ってきた。

「担当のAtsusukeさんという方は、物事の要点の捉え方がピカイチです。」

最初は何をいっているのかよくわからなかったが、どうやら私のやった仕事を褒めてくれているようだった。これはうれしかった。仕事で褒められたのなんていつ以来だろうか、100年ぶりくらいだろうか。。。

工夫している点はある

私はもともと技術者なので、技術者が書くわけのわからない独特な日本語というのに相当な免疫を持っている。だから、主語と目的語が両方ともないような文章(例:○○時、Reset復帰にて再開する)とか接続詞の誤用(例:「〜だから、〜のため」と書いてあるのに因果関係がない、あるいは「〜だが」とあるのに逆接になっていないとか。)に対して書き手の本当の意図に比較的簡単に気づくことができる。

また、質問を具体的な提案という形にすることができるのも強い。今述べたように、文章の裏側を読むことができるので、「本当はこう言いたかったんじゃないですか?」という風に、YES/NOで答えられる質問が作れる。ほかの翻訳者は、質問をするにしても「これはどういう意味ですか?」という風にしか聞くことができないので、結局また相手のわけのわからん独特な日本語が上塗りされてこんがらがってしまう。

パイロットと同じく、翻訳者も最初の仕事を得るのが難しい。仕事を得るには経験が必要で、経験は仕事をすることでしか手に入らない。その点で、私はものすごくラッキーだった。翻訳の経験がいっさいないのに、翻訳専属の仕事が見つかることはほとんどない。大体は、事務仕事の傍らに翻訳をやらせてもらい、それを積み重ねて経験とする。私の場合、派遣会社に登録した次の日にたまたま今の会社の案件が振ってきたらしい。運がよかった。

そういうわけで、私はほかの翻訳者とは少し毛並みが違う。(相対的に優れているという意味ではなく、単純に「違う」という意味で。)平たく言うと、日本語で勝負している翻訳者だ。英語もがんばっていはいるが、私の英語はほかの翻訳の人に比べるとまだまだ浅い面が否めない。ほかの人は、たとえばeconomy、an economy、the economy、 economiesの違いを知って訳すことができるが、私は(最近意識しだしたけどね)そういう力はまだまだだ。その代わり、エンジニアの日本語を平易なわかりやすい「日本語」に翻訳する能力は、他より優れている。わかりやすい日本語なら、私も精度よく訳すことができる。結果品質も上がる。

越権行為

今回の思いがけないフィードバックは、私の持つ、翻訳者としての異質さが先方の担当者(設計者)によく映ったということなのだろう。普通の翻訳者は、原稿に書いてあることを正確に訳すことに全力を尽くす。また、パフォーマンスを上げるために無駄なことは一切しない。原稿が間違っていようが、意味のわからない日本語だろうが、そこに書かれている言語としての構造を日本語から英語にするだけだ。それは、当たり前のことで、翻訳者のひとつのあるべき姿でもある。

だが、私は誤記を見つけたら確認する(仕様書なのに数字が間違っているということもある)し、だらだらと長い文章で書かれた表現を箇条書きにしたり、さらにそのフォーマットを他にも適用して変化を数字だけにする(そうすればそのフォーマットで書かれた箇所は数字の違いだけを見ればいいので「読まなくてもわかる資料」が出来上がる)ことを提案したりする。今回はそれがいいほうに取られた。つまり、書かれていることの意味と意図を徹底的に理解して、それを逐一設計者にフィードバックしながら翻訳作業を続けていたので、設計者にとって「なんて物分りのいい翻訳者なんだ」と映ったのだと思う。

一方、まったく逆の評価になっていた可能性もある。私の翻訳は、そのスタイルから原稿にも大幅な修正が入ることがある。自分の書いた文書にうだうだと突っ込みを入れられるのを快く思わない人だっているだろうし、なにより私のやっていることは翻訳者としては越権行為だ。それでも、社内翻訳という立場で外注の翻訳者との違いを見せるために、設計者との近さを活かしてより優れたアウトプットをしようと、あえてやっている部分もある。

褒めた人がすごい

見方によって文句を言うことができた状況で、いいところを見つけて、言葉にしてそれを伝えるという行為の珍しさを考えると、賞賛すべきは私ではなく、私を褒めてくれたその設計者だと思う。普通、仕事相手に文句を言うことはあっても褒めることはほとんどない。皆ちゃんとやって当たり前だと思っているし、他人を褒めると自分が低くなったように感じることもある。人をちゃんと「褒める」ことができる人はとても少ない。

でも、その日仕事が終わって駅まで歩いていくときの気持ちのよさといったら。夜のビールのうまさといったら。周りの世界はいつもと何一つ変わっていないのに、誰かの気持ちをこんなにクリアにできることができるなら、これは是非やるべきだとおもった。今回のように、誰かのやったことは同じでも、自分が返すフィードバックは2通りという場面は多くあると思う。どちらを選ぶかは自分次第だ。

私は人を褒める側にいたい。減るモンじゃあるまいし。










     2012.01.12 Thursday
asahi.com(朝日新聞社):「つらい一日」「死ぬまで闘う」=落胆の遺族、控訴に期待―福知山線事故 - 社会
「有罪にならないと安全対策がおろそかになる」


これから航空輸送に携わる個人として、書いておこうと思う。

福知山線の事故は、本当に事故の再発防止策を講じることを目的とするなら、刑事裁判で決着をつけようとしてはいけないきがする。

遺族の気持ちを慮れば、とても無神経な判決に聞こえる。だが、JR西日本の社長が有罪か無罪かは、事故の再発防止には直接関係ない。再発防止策をまとめるのは、事故調査委員会の仕事だ。「無罪判決になったから、再発防止も真相究明も闇の中だ」というふうに、ごっちゃにしてはいけない。

肉親を殺された遺族の心を救済するのが目的「なら」、社長の刑事責任を追求するのがいい。だが、再発防止と真相究明を目的とする「なら」、会社と事故調査委員会がどんな報告書を出したのか、その仕事ぶりを評価することでしか達成できない。どっちの話をしているのか、混同しないことが重要だ。


目的は2つあっていい。もう一度言うと、ひとつは遺族の感情を救済し被害を補償すること。2つ目は、事故の原因究明と再発防止とこれから起こりうる事故の予防策。前者には刑事ならびに民事裁判。後者には、事故調査委員会(と会社)の仕事評価。そして今日の判決で、前者のための法体系がないということがわかった。

但し但し、人を160人も死なせる事故を起こして、責任が誰にもないというのはおかしい。今の法律では、社長のポジションにあった私人に対しての刑事裁判では、議論ができない。(個人的には、正しいFMEAをやっていたら十分防げたと思うから、予見可能性はあったと思うが。)

本来は、メディアがちゃんと分けて伝えなきゃいけないことではないか。遺族や会社は当事者同士だから、客観的な視点を入れようとしても無理がある。遺族が、「有罪にならないと安全対策がおろそかになる」と言ってしまうのも理解できる。無理もない。でも、そこに冷静な第三者の目を置くのは、本当は、メディアの仕事だ。最終的な責任が誰にあるのか、法人に課すならそういう法律を、私人に課すならその条件を規定する法律を、作らなければならん。
     2011.09.30 Friday
クライストチャーチの道路には必ず歩道が設けてあり、その歩道にはほぼ100%芝生が植えられていて、街路樹も多い。家のレンガの赤と補色になって本当にきれいだ。そして、意外なことに街路樹には桜も多い。


ハグレーパークの桜!!(と、歩道の芝生。)


こちらでは、桜が咲くと「あぁ、一年が終わるな。。。」という感慨になるのだそうだ。ふむ、一年の終わりが春ですからね。また、路上駐車が駐禁の場所を除いて認められている。


日差しと芝生とサイダー!(この日はあんまり日差しはなかったっけ。)公園など、公共の場所(屋外)で酒は飲めないことになっている。サイダーでも十分いい気分になれる。


日時計。tokyoの方角もかいてある。



エイボン川をいくカヌー。

川も街並みも水もきれいで、そこいら中に馬や羊が草を食んでいるし家には暖炉もオーブンもあるのに国際空港があってお金をかけずにいろんな遊びができて、でも物欲が出ない。笑 人が生きていくうえで何が重要かってことを誰もがわかっていて、なんてすばらしい街なんだとおもう。間違いなく第二の故郷になった。地震もあったけど、私はCHCHにきてよかった。

この街にいるのも、あと3週間だ。
     2011.08.28 Sunday
先日、ある友人からこんな相談を受けた。

「就活って、なにすればいいの??」

友人は日本人だがNZに来て10年がたつ。こちらの大学に通っていて、博士号を目指している。でも、日本で就職もしてみたいと言う。その話をしていて出てきた質問だった。日本で就職するには、就職活動、いや、就活、いやむしろ「シューカツ」をしなければならないからだ。私も数年前にした。それにより内定した会社で働いていたわけだが、在職中に航空会社の自社養成試験を受けた。これも基本的にはシューカツのフォーマットにのっとって行われた。そんな私からのアドバイスはこうだ。


「みんなと同じ黒い服を着て、お辞儀の角度やドアのノック回数で迷ったりするのがシューカツだよ。」


D1900!!

半分冗談めかして言ったが、私はシューカツ、ひいては新卒一括採用という制度に批判的だ。だから、実際に経験した身として、この友人の質問に対して真摯な態度を取ると、どうしてもシューカツを卑下した態度を取らざるを得ない。

もちろん、今がんばって就職活動をされている方を馬鹿にしているわけではない、逆だ。そういう人たちが真剣に自分のやりたいことを考えたり、バックグラウンドが違う年齢層の面接官に必死に何かを伝えようとして表現を工夫していることは、それが見た目にどんなに滑稽でも、絶対に馬鹿にしたりはできない。私が批判しているのは、そういう後出しじゃんけんみたいな状況をつくりだすシステムそのものだ。景気の動向と統計に翻弄されて、しまいには最終面接で人格を否定される人たちは、数年前の自分である。誰が馬鹿にしたりできようか。


PARTNAVIA!!

私がシューカツの果てに入った会社は、大学の学部や専攻にある程度工学系への偏重はあったものの、大学で学んだことを仕事に活かしてもらおうという風土は皆無だった。むしろ、大学ではこうでした、という文脈はタブーでさえあった。現場には現場のやり方がある、頭でっかちはいらん。空気を読んで、周りの人たちとうまくやっていくことが最も重要だと。(私の会社だけ??笑)

新卒採用が好まれる理由はここだ。会社は、新しく入ってくる人たちが今いる社員の共同体にうまくなじむことを最重要視している。大学でどんな勉強をしてきたかなんて、どうでもいい。とにかく、みんなとうまくやってくれと。それをよくシューカツでは「コミュニケーション力」と呼んでいたように思う。私はこの言葉も嫌いでよく馬鹿にしていた。こみゅにけーしょんか。基本的には「何も知りません、教えてください」という姿勢が重要で、低い物腰と遠慮がちな態度と、先輩を立てる器量がある人。そういう人は、シューカツでピンクのスーツを着たりはしない。ピンクのスーツを着ろといっているわけではない。少なくとも、そういう突拍子もないことはしないということだ。


KINGAIR!!

どんな大企業でも、中小企業でも、新卒採用をやっているところは基本的にそういう無難な人を求めている。求めている、と言う意識は当事者にはないかもしれないが、結果としてそういうメッセージを送っている。そういうことに気づいていない。無難な人が悪いわけではない。でも、少なくともアウトローを認めていない。私のように、大学を辞めて学校を変えたりいろいろいろいろやってきたような人間には、新卒採用に象徴される日本社会の不文律は、いちいちプレッシャーなのだ。(私はもう新卒というカテゴリーには当てはまらないけど。念為。)でも、私の同期も含め、やりたいことをやっている人というのは結構たくさんいる。よかった、変なおじさんは私だけではなかった。


自分の欲望に忠実に生きたら、あれこれ迷って紆余曲折があって然るべきだ。


新卒採用をしている会社は、新卒採用をしていることによって、その紆余曲折を認めていない、あるいは、紆余曲折はないほうがいい、というメッセージを送っている。高校を卒業したら浪人(示唆的な言葉だ)せずに大学に入ってほしいし、大学を卒業したらすぐにどこかの会社に就職してほしい。さらに言うと、勉強ばかりしていてはだめで、アルバイトでもして適当に社会経験も積んでおいてほしい、、、うーん、やりたいことが見つかってその勉強を一生懸命やっている人はダメなのか。会社を辞めてパイロットになる訓練をするなんていのは、紆余曲折に入るんだろうか。NZで10年勉強して、博士号とって日本の会社に就職するのも、紆余曲折なんだろうか。


エンジン故障!エンジン故障!

うーん、こんなに楽しいのになぁ。笑
     2011.07.25 Monday
今日はCPL XCの試験日だ!!


って、カーテンをあけるとこれだよ。センター試験じゃないんだぞ。。。orz

クライストチャーチ15年ぶりの大雪だそうで。カンタベリー平野は関東平野と同様に雪が少ないので、交通機関が雪に対して脆弱なのか、バスも電車も飛行機も止まった。当然、私のCPL XCテストもなし。キャンセルの電話を学校に入れる。この天気なら、学生の間で悪名高いキャンセルフォーム(書かないと300ドルチャージするぞ!!と、建前上言われている。)を出さなくても口頭で認めてもらえるだろう。




試験官になるはずだったSCOTTにも一報を、って番号知らないのでテキストが送れない。「試験官の俺が来ているのに学生のおまえがきていないとは!」などというチンピラみたいな反応をする教官ではないことはわかっているが、そこはこちらの誠意の問題だ。番号を教えてくれと学校に再度連絡したが、それは教えられないルールになっているらしい。そりゃそうか。RECEPTIONのMATT曰く、

「大丈夫だよ、他にも来ていないやついるし!」

そりゃそうなんだけどね、何か面倒が起こってからケツ拭くのは、風下側に流された後のトラック修正みたいにめんどくさいんですよ。大丈夫大丈夫と誰かに言われたことを安易に信用して、実は大丈夫じゃないことがわかってお客さんに罵倒されにいくのは、いつだってその誰かじゃなくて私なんですよ。。。などととっさに愚痴り倒すには、私の英語の運用力は発展途上に過ぎる。とりあえず、MATTには雪でいけないという旨を、SCOTTに十分伝えてもらうことにした。


さーてしょうがないな!!何って、外が雪だってことは雪かきだ!!海なし雪なし県に生まれると、いくつになっても雪が降ると触らないことには気が済まぬ。張り切って外に出る。


フラットメイトの大きい人たちが、当たり前のように雪だるまを作っていた。しまった、出遅れた。


これは雪だるまではない。SNOWMANだ。



EUROPIANが作る雪の人形は、妙にリアルである。



そして、平均年齢は25歳以上のSNOW FIGHTが始まった。フランス人のステファンが私の車めがけて投げてきやがるので、サッカーボール大に丸めた雪をひそかに用意して、彼が彼の彼女(こちらはオランダ人)に雪球を投げ終わった瞬間に被弾するように放ってやった。ルースで巨大な雪だまを、そのとんがった鼻筋に食らうステファン。完璧なカウンターパンチだ。かわいそうに。さーて、股関節も痛くなったし、家に入って茶でも飲みますか。


やれやれ。



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命を削って、ニュージーランドでキャリアを掴む
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