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     2011.09.10 Saturday
一旦所要で日本に帰国していたRYOが帰ってきて、また4人で動き出している。

RYOは、我々がやったようにELITEシミュレータで基本的なIFRのトラッキングとスキャニングの練習を始めた。我々が苦労したように、最初はちゃんとした飛行もままならなないだろう、何回墜落するだろうか。と楽しみにしていたのに、30分程度の訓練を終えて返ってきた教官の八木さんの言葉は、

「何も面白いことが起こらなかった。。。」

何ーー!!

墜落とか、蛇みたいな軌跡とか、フレアで300FT上昇した後失速とか、滑走路に斜めに突っ込んでバウンスとか、そういう面白いことが何もなかっただとーーー!!!


orz


IFRの最初の段階では、4人それぞれの個性が出て面白い。TAKAは、VFRや学科に関しては「なんだかよくわからないができた」と言うことがこれまで多く(笑)その天才ぶりを発揮していたが、IFRでは飛行機を落ち着かせるのに苦労した。MAKIはPPLで着陸がわからなくなったことがあったが、もともと操縦が穏やかなのでIFRではその操縦センスをいかんなく発揮している。ASH(私)は、PPLとCPL XCでまずスランプになったが、IFRでもとりあえずまずスランプになった。笑 RYOは今書いたとおりだ。


木曜日。私が飛んだ日。LINEUPを待っていると、40KT近い西風に対し、B3がアサッテの方向に機種を向けながら(B3の進行方向は、この写真でいうと左方向。)RWY02に降りて来る。小さくて見づらいが、よく見るとB3が向いている方向に滑走路はないことがわかる。だがこの時地上100FT以下はまったく風がない状況という恐ろしい事態。PHOTO BY TAKA


ところで、飛行機という乗り物は、狙ったコースに対して風上側に置いたほうが、そのコースにのせやすい。風に逆らわず、その力を利用できるからだ。そこで、なんとなくカンがよくてすぐにできてしまう人のことをここでは便宜上「風上の人」、なかなかできるようにならない人を「風下の人」と呼ぶこととしよう。

IFRに関しては、RYOとMAKIは「風上」から入っている感じがする。TAKAとASHが「風下」組。(まぁ私はVFRも風下まっしぐらだったが)笑 でも、現在までの結果はどうか。木曜、金曜と私、TAKAがテストトラックを飛んだが、細かい取りこぼしはあるものの、2人ともあと1週間後に迫ったテストには十分間に合う仕上がりになってきている。双発機のフライトタイムは現在12時間程度で、八木さん曰く、これはかなりいい進み具合だそうだ。MAKIは双発に乗り始めたのがASH TAKAより遅かったのだが、すぐに追いついてきた。さすが。


木曜日その2。強いWESTERLYの日。山を越えてきた風が激しい乱気流となって飛行機を翻弄してくる。負けねぇ!PHOTO BY TAKA


IR(INSTRUMENTS RATING)の試験を受けるためにはIFRで飛んだ時間が実機(単発を含む)で少なくとも20時間必要で、セネカであと5時間ちょい飛ばなければならない。少なく見えるが、同期でバックシートをしているので「実際に操縦はしていないが飛行機に乗っている時間」を入れると、フライトタイムは単純計算で3倍(3人で回していたから)だ。ひとりでやっていたら、もっとかかっていたはずだ。特に双発機は単価が高いので、これは大きい。

こうやってみてみると、最初に操縦が下手というのは、実はあまり問題ではないことがわかる。重要なのは、自分や同期のフライトをしっかり復習して、同じミスを繰り返さないようにすること。上手くなり続けること。私は今までのフライトに関して、どうしてあの時上手くいかなかったのか、どうしてできるようになったのか、それをすべて言葉で説明できる。PPLから今まで「風上サイド」から入ったことがないからだ。きっと「なんだかよくわからないができる」ということは、私に限っては、これからもない。でも、それでいい。それは私の上手くなり方じゃない。まずは風下に出てしまっていることを認識することが最初だ。そうして、風上に一度抜けて、そこから微調整。まさにIFRのアプローチ。


木曜日その3。EN ROUTE上にあるRAKAIA RIVERに沿って、もやもやしているレイヤーがある。山からの吹き降ろしと、FUNNEL EFFECTで加速された気流で、埃が舞っている。時に50KTにもなるらしい。PHOTO BY TAKA

私が飛んだ日の午後、RYOがELITEをやる前にマイクロソフトのシミュレータ(MSFS)で練習をしていたので、横に座ってあーだこーだ言っていた。私が午前中に飛んだ状況(NZAS NDB HOLD 300M30KTくらい)を再現して飛んで、私がやったのと同じようにして、横風に流されていくRYO。面白いことに、人が操縦しているところを見ながら横で口を出していくと、自分ができなかったところが何故なのか、それが手に取るようにわかる。自分ではできなかったところなのに、そのとき私はそれを「教えて」いた。つまり、教官が飛びながら何を認識しているのかをトレースしたということだ。この認識は、学生として飛んでいるだけでは気づけなかったかもしれない。学生同士で「教官役」を交互にやると、もしかしたらものすごく訓練が進んだりして。


MSFS。コントローラはRYOの私物。個人的にはELITE3と呼んでいる。笑 

さー。来週1週間終わったらテストだ。がんばりましょう。

     2011.09.05 Monday
IFRの訓練は、外が見えなくても安全に飛ぶための技術を身につける訓練だ。フォーグルと呼ばれる視界をさえぎるめがねをかけたり、サンバイザーのばかでかいやつをかぶったり、キャノピー全体にカーテンをかぶせたりして(!)外が見えない状態を作り出す。普通、補助パイロット(大体は教官)は外が見える状態で、見張りを担当する。

このようにして飛んだ時間は、SIMULATED INSTRUMENTS TIME という名前で区分され、ログブックに記載する。訓練中、実際に雲の中に入ることももちろんある。それは、こんな感じだ。



雲の中に入る瞬間が、一番危ない。気流が荒れると言うこともそうだが、訓練生はフォーグルのすきまからみえてくる雲の影が猛スピードで動いているのがどうしても見えてしまい、脳が混乱を起こして傾いていないのに傾いているように感じる「バーティゴ」に陥りやすい。気象状況がVMC(天気がいい状態)でも、IFRのルールで飛んでいるライン機のような飛行機では、高いところから降りていく時に、動画のように雲の中に突入することがあるだろう。そのとき、ちゃんと頭をIMCに切り替えることが重要なのだそうだ。(ちなみに動画の中で右を向いた時、下のほうにブロッケン現象が見える。丸い虹。)

最近はこいつ(セネカ)で飛んでいる。速い。。。



今日は南島の左下(笑)にある、MILFORD SOUNDにひとっとび。セネカの後ろにはフィヨルドの山脈。



昼間に帰ってきて夕方はMAKIのHK便に乗った。



イーグルのD1900がきたと思ったら、大野さんだった。軽く挨拶して(高度8000FTで、だけど)CHへ。



つかれたー。





【メモ:最近の課題。ひとりごとなんで気にしないでください。。】

・T/O:ROTATIONのPITCH UP RATE:10°まで「ゆっくり」上げる。CLIMB SPEEDをしっかり取りに行く。

・MtAP:ROTATIONのレートは、一般的にはT/O時よりポジティブに。ただし、CONFIGによって変わる。バックサイドでつってきているような時は考えないとまずい。フラップをたたむタイミングも同様。ちゃんスピードをとりにいくというコンセプトは、T/Oと一緒。プロシージャを流せばいいと言うわけではない。

・ASYMMETRIC(片エンジン停止)時の姿勢:特にTEARDROPの BASE TURN中。BANK BALL PITCHをばしっと。瞬間冷凍したみたいにばしっと止めやがれ!!でも、固くなってはいかん。何事もなかったように。手は止める。目は動かし続ける。CONTROL YAWで決めたところを踵で固定。

・NDB TRKでのADFのクセ:セネカは針がびよんと戻ってきたり、TRK中もふらふらふらふら酔っ払っているのかというくらい落ち着かない。それに振り回されるのは、こちらから理屈をぶつけていないから。機材に文句を言うやつは、パイロットではない。

・風。難しいけど、こいつを読めないとさらに操縦が難しくなるので悪循環。前に進めない。読め。

・APへの習熟:AVIATEの負担を大幅に軽減できるが、間違えて使うととても危険。手足のように使えるように。HAND FLIGHTの技術は、HOLDINGやAPPROACHで活かす。

・XC EN ROUTE状での仕事は全部頭が先行していないとFLIGHTに余裕が出ない。余裕のないパイロットは、お呼びでない。

・ILS TODの前にCONFIGと速度を作って、絶対に逃さない。後は「DO NOTHING」の域を目指す。

・PWRのRETARDはトマホークとだいぶ違う。フレアの最後の段階で、2トンの機体をパワーなしで支えるのは、スリップストリームを失ったエレベータではそもそも不可能。かならず、PWR ON。


これらを後2週間で仕上げるぞ。
     2011.08.26 Friday
さて、順調に(?)IFRの訓練を進めているわけですが。

昨日今日と初めてエンジンが2個ついた双発機に乗った。例によっていろいろ小難しいことを考えながら飛んでいるわけですが、とりあえず面白い動画が取れたので今日はそれを紹介して記事にしてしまおうと思う。なんせやることがたくさんあるので。。。

一つ目は、久々のNEW BRIGHTON GAA。双発機の60度バンクターン。双発はとにかくでかくて重いので、操縦桿が重い!!片手でやれ、と言われて支えきれずに落ちていくTAKA。笑 (まぁ私もなんだけど。)でも、降りてきた後、同期のKIWI(かなりでかいやつですが)と話をしていたら、「NO ONE CAN MAKE THAT TURN WITH ONE HAND」って言っていたんだけどな。。。





二つ目は、ABORT TAKE OFF。離陸中止訓練。クライストチャーチ国際空港のRWY02を占領して、普段はいかない滑走路端から離陸滑走を開始、離陸直後に途中で片側エンジンが壊れたため、離陸中止を判断してエンジンシャットダウン、滑空して滑走路に降りるという想定。



通常は浮いてしまったらそのまま飛び続けるのだが(そのためにエンジンが2個ついている)RWYに余裕があることがわかっていれば、そのまま生きているほうのエンジンも切って滑空しながら着陸してしまったほうがいい場合もある。

この訓練の前には、まだ飛行機が浮いていない状態で同じことが起こって、飛ぶことなしに離陸を中止する訓練も行った。国際空港の真ん中でこんな邪魔な動きをしているイタリア製の飛行機に乗った日本人。世界にはいろいろな人がいますね。

このサイズの双発機は「世界で最も危険な乗り物」だという。エンジンが2個ついているということは、ポテンシャルとしては確かに単発機より高いのだが、それを操作する人間、つまりパイロットに迷いを生じさせる余地がある。ポテンシャルをうまく引き出せなかったり、間違った操作をすると、あっという間にスピンに入ってしまう。プロペラが出す力の中心が、機軸上にないためだ。また、下手に飛び続けようとして事故になるケースが多いという。単発機では迷うことのない状況で、選択肢が増えるために迷いが生じるのだそうだ。HUMAN FACTOR。

精進しまっす。




     2011.08.17 Wednesday
当校では、初等教育を重視しています。

飛行機の訓練は、最初が肝心です。

後になって変な癖がつかないように!!


・・・民間の飛行学校の広告で、よく見るうたい文句である。


初等教育は重要だし、変な癖をつけないことは肝心なのだが、私が訓練学校を選んでいたときに再三目にしたこの科白は、しかし、私を混乱させた。「初等教育が重要じゃない」という意見が間違っていることはわかる。でも、どういう訓練がダメな初等教育で、どういう訓練がよいのか、変な癖とは何なのか、どこの学校の教官も、私の腑に落ちる説明をしてくれなかったからだ。


今日は、この点について150時間飛んだ自分の視点から、説明してみたいと思う。


さて、このアイディアを象徴するような文章が、日本の航空大学校のHPに載っていた。以下に引用する。

「三つ子の魂百までの喩えのとおり、操縦訓練の初期段階(中略)からこの安全運航に対するプロフェッショナル・スピリットをしっかりと身につけなければならないと考えています。」

航空大学HP 航空大学校について 使命・理念の背景 より引用

「プロフェッショナル・スピリット」を身に着けるにあたり、重要なのが「質の高い」「適切な」初等教育というわけだ。大多数の民間飛行学校も、同じようなことをうたっている。私の学校もそうだし、教官もそう言っている。

訓練校を選んでいた当時の私はこれをきいて、

「日本人が日本のラインで働くことを念頭にやる訓練と言うのは、アメリカ人やkiwiがやる訓練と初めから(だって初等教育から違うんでしょ)コンセプトが違って、なんだかよくわからないが『質の高い』訓練をするらしい。。。」

そんな風に思っていた。MADE IN JAPANはすげーんだと。

そうやって鼻息荒く Effect of controlという最初の科目に臨んだのだが、これがまったくの見当違い。なにがなんだかよくわからず、むしろkiwiのほうがさっさとこつをつかんで訓練が進んでいる。どうなっているんだ、日本人の飛ばし方は、世界一正確で、ビシッと飛ばせるはずじゃなかったのか。「より適切な」初等教育を受けているのにもかかわらず、「普通の」初等教育を受けているkiwiより遅れている、ということはつまり、私が個人的に訓練についていけていないと、そういうことではないのか。驚いたことに、私は、訓練の最初からいきなりスランプになったのだ。


150時間飛んだ今から思うと、ちゃんちゃらおかしい。


いいですか。(過去の私に向け 笑)


初等教育、というのは、PPLの最初のほうだけではない。私は、今だって初等教育の真っ只中にいる。これから進んでいく大型の飛行機に比べたら、蚊みたいな速度と格好をしたトマホークで、やっとXCの目処がついたところだし、IFRだって決められたことをやるだけで精一杯だ。三つ子の魂を語るなら、私はまだ1.5歳くらいであり、赤熱した鉄である。

私達は、これから生涯にわたってテスト・チェックを繰り返していく。この「試験」に受かるためには、練習が必要だ。それを訓練と呼ぶわけだが、ここに落とし穴があると感じている。どういうことかというと、訓練を練習だけにとどめてはいけない、ということだ。

試験に受かるための訓練が、易しいというわけではない。試験というのは、日本だろうがアメリカだろうがNZだろうが、骨が折れる。完遂するには、反復練習しか方法がない。逆を言えば、試験に受かりたいなら、決められた手順をひたすら反復練習すればいい。


たとえば、机に紙を置いて「こんにちは」と正確に紙面に書く、というテストがあったとしよう。つまり、紙とペンが2段目引出しに入っていることを頭に入れて、2段目の引き出しをあけて、紙を机上に置き、右手でペンを持って、左手で紙を押さえて、「こんにちは」と書き、それがちゃんと「こんにちは」と読めれば合格。「質の悪い訓練」というのは、この一連の動作をひたすら反復して誰よりも正確に、早く、動作を完了できるようにする、そういう練習に偏ることだ。そのうち脳みそすら使わず、脊髄反射だけで手が動くようになるかもしれない。


でも、もしペンのインクが切れていたらどうしよう?

紙が破れていたら?

漢字で書けという指定があったら?

紙が黒でペンも黒で書いても字が見えなかったら?

間違えて「こんにちわ」と書いてしまったら?

書いている途中に蚊が腕にとまったら?

居眠りして紙の上に涎がたれてしまったら?

・・・


つまり「判断」を要する場面に出くわしたら、どうするか。どこの引き出しに何が入っているのか、引き出しの位置は全部覚えているか、いやまて、引出しの中に、物を入れた記憶が、そもそもあるのか。いつもいつも2段目に白い紙と黒いペンが入っていると考えて、そればっか練習していたら、それはそれは薄っぺらなパイロットになってしまうことだろう。それでも試験には多分、合格できるだろうけれど。

だからと言って、作業を練習することが必要ないといっているのでは、もちろんない。作業(PROCEDURE)と判断(DECISION MAKING)は両輪だ。作業は、すべての内容を網羅した一覧表を作り、それを上から順に繰り返し練習する。膨大な量だが、練習自体は決められたことを繰り返すだけなので単純で、やればやるほどうまくなる。だが、判断の練習と言うのはケーススタディを個別に研究するしか方法がなく、しかもそこで得た判断の材料は、いつ使うかわからない。引退するまで引出しの中から出さないかもしれない。結果が見えづらい。さらに悪いことに、これをやらなくても作業のほうを練習していれば「サボっている」という感覚がないので、一生懸命やる人ほど、応用が利かない反復練習に明け暮れる。

質の高い、適切な、初頭訓練と言うのは、膨大な作業を効率よく(本当は効率よく、なんてのはない。サボらないでやるだけだ。)運動神経にしみこませ、人や自分の経験を、時に(試験のためには)無駄ともとれるような範囲に及んで研究し、引き出しにスペアインクやセロハンテープや辞書や42色のクレヨンや修正液や虫除けスプレーやハンカチを忍ばせておくこと。そういう訓練のことを言うのではないだろうか。

判断のための研究に必要なことは、まずはそれが大事だと学生自身が気づくこと、自分の教官が四次元ポケットを持っていること。そして、教官自身も出てくる道具のメンテを怠らないこと。もらった道具が壊れていたら、意味がないからだ。

自分も間違えることもある、と考えている教官は、経験の上にあぐらをかいている教官よりパイロットとして誠実だ。私の学校の教官(日本人もKIWIも)は、皆そのバランスがよく取れている。生徒に不安は絶対に見せないが、同時に発展途上の自分を認めている。わからないことは、こちらを真っ向から見返して「わからない」とはっきり言い放ってくれる。笑 それとて、間違えたことを教えられるより数倍いい。教官達のそういう姿勢は、学生にも伝播し、ここに「適切な」初等教育が完成する。

私が今、こうやって自分の訓練を振り返ってよかったこと、よくなかったことを仕分けして、アイディアを更新していること、つまり、この文章を書いていることそのものが、「適切な」訓練を受けている証左になるとおもうのだが、どうだろう。
     2011.07.23 Saturday
IFRは、飛行機が雲の中に入ったりして、まったく外が見えない状態でも安全に飛行するための航法だ。パイロットは外が見えないので、ほとんど目の前の計器を見て飛行機を飛ばす。(ただし、IFR下でも見張りの義務はある。)今はその訓練をシミュレータを使ってやっている。

シミュレータといっても航空会社が持っている数億円するような6軸のフルモーションのもの(記事の最後に動画あります。)から、マイクロソフト社のフライトシミュレータ(通称MSFS)というパソコンゲームまで、いろいろある。私が今学校でやっているのは、ELITEと呼ばれるパソコンゲームの進化版だ。これが設置されている狭い部屋に、教官とASH TAKA MAKIの4人が詰めて座る。お互いのフライトを見ながら自分の番が来るのを戦々恐々と待っている。笑 それでも、一回で800〜1000NZドルが燃えてしまう実機訓練を無駄にしないために!と酸素不足になりながらがんばっておるのだ。

さて、ELITEである。(ふん、挑戦的なネーミングだ。)


こいつはコクピットのスイッチなど、設備はよく再現されているのだが、他の高級なシミュレータのように舵にかかる圧力やGを再現することはできないので、モニターに表示されている画像(主にここででは計器だが)を「目で見て」飛行機を操縦しなければならない。じゃぁ、実機のリアルさを再現できないこいつでは、それなりの訓練しかできないのかというと、そんなことはない。なにしろELITEである。パイロットは、IFRで飛行機を飛ばすのに最も重要な技術をここで習得しなければならない。


向かい合った相手の手の上に自分の手を添えて、相手がすばやく上下左右に手を動かすのに自分がついていこうとした時、目を開けているとできないが、目を閉じていると簡単にできる、というようなことがある。触覚は、視覚より運動神経に伝わるのが早いので、こういうことが起こるのだろう。

実際の飛行機では、操縦桿を引いたり押したりするときには、それなりの力が要る。また、飛行機の姿勢に変化がおきれば、身体がそれを感じる。目を閉じて手を追跡するときと同じ情報が身体に伝わる。

ELITEにはこれがまったくない。失速するまで機首を上げたって、横転するまで飛行機を傾けたって、操縦舵輪に感じる手ごたえはスッカスカ。強すぎるパワステみたいにだ。結果、ちゃんと飛ばすには計器を連続的に目で確認するしかない。目を開けて、手を追っかけるようなものだ。悪いことに、車と違って飛行機にはタコメーターみたいなのが6個ぐらいついている。飛行機の姿勢を示す計器(AH)や、垂直方向の動きに対する速度計(VSI)あるいは高度計、気流に対する滑りをあらわすBALLなど、とにかく数が多い。これらを一定の間隔で常に確認して、それを「判読して」手を動かす。判読という仕事が入るために、動作が遅れたり、修正量を読み違えてオーバーコントロールになりやすい。

それでも目を開けていなければならない理由は、IFRでは外が見えないためだ。外が見えない状況で目を開けて飛ぶ、とは、なんだか矛盾するように聞こえるが、そうではない。触覚は、早いが、だまされやすい、というのが理由だ。視覚情報を奪われた状態で加速度の変化が起こると、人間はすぐに「上がどっちなのか」がわからなくなる。「加速」している時にシートに押し付けられる感覚を「上昇」のそれと勘違いして「上がらないように」操縦桿を押す。機首が下がる。さらに加速。さらに押す。さらに。。。どーん。

そして、ただ飛行機をまっすぐ飛ばしていりゃいいかというと、そんなことはないわけで。それをしながら、RMIやHISなどといった、自分が今どこにいるのか、という情報をあらわす計器も見なければならない。IFRで初めて使うこいつらを読もうとするとき、慣れないのでついそこに目が留まってしまう。たちまち、まるで壁に映った光を追っかけるペンギンのように、飛行機の頭が上下左右に踊りだす。他の計器を確認することを忘れてしまうことを、「LAZY EYES」といって戒めているのはこのためだ。

ELITEはこの「LAZY EYES」を絶対に許さない。学生にこれを克服させるために、操縦桿の感度をMAX(OR それ近く)まで上げてあるらしい。私の最初のELITEは、かくして、ぐっちゃぐちゃになったが、最近はいくらかマシになってきている。高度もずらさなくなってきた。それをみた教官。

「ちょっと負荷をかけてみようか。」

なんですかなんですかなんですかやめてくださいよ必死なんですから。

「通っていた中学校の名前は。」

そうきたか!グラっ。

「ほう、それはどこにあるの。」

埼玉の西ですか。グラっ。

「高校は。」

埼玉の南ですか。グラっ。

「好きな子いた?」

そうきたか!なんか面白いことを言わねば!!(←?)グラグラグラ。

「彼女の名前は?」

K林さん!(後ろで見ているTAKAの苗字。もちろん大嘘。)そしてHOLDING PATTERNとはアサッテの方向に飛んでいく自分。一同大爆笑。

IFは楽しい。orz


おまけ。高級なシミュレータの例。B737のフルモーションシミュレータ。
     2011.07.17 Sunday
IFRの訓練が始まった。

今はELITEというシミュレータで飛行場の周りをぐるぐる周る練習をしている。これが難しい。IFRはINSTRUMENT FLIGHT RULEの略で、天気が悪くて外が見えないときに利用される航法だ。外は雲で何も見えない。夏になると、よく車内の温度上昇を少しでも抑えようと、ウィンドシールドの内側に銀色の遮光シートを取り付けるでしょう。あれをつけたままどこかのスーパーに買い物に行くような感じだ。


南半球では冬。この前の朝なんか空港の気温、 -7℃だって。


IFRで飛ぶ飛行機が通るルートは、そのルート上を正確に飛べば絶対に障害物に当たることがないようにあらかじめ高度とTRKが確保されている。だから、前が見えないからといってわき道から子供が飛び出してくるんじゃないか、電柱にぶぶかるんじゃないか、みたいな心配は要らないわけだ。ただし、ルートを外れなかったら、の話だ。そして、これがまた難しい。

どうやって、空に引かれた道筋を正確にたどるかというと、地上にある、携帯電話の基地局のような施設から電波を受信し、自分の位置を確認しながら飛ぶ。飛行機の中に、その基地局の電波をキャッチして電波の飛んでくる方向を矢印で指し続ける ADF(Automatic Direction Finder)という機械があり、それを使う。ADFがキャッチする電波を発信する基地局を、NDB(Non Directional redio Becon)という。ちなみに日本ではNDBの運用はもう行われていないと聞いた。より直進性が強く、気象状況に左右されにくいVHF帯の電波を使うVORという基地局や、もっと効率的なGPSを利用した航法が主流だそうだ。ただ、VORもADFの進化系みたいなRMIという計器を使うので、訓練でADF(RMI)を使うことは未だ有用だ。


計器の読み方を整理するために作った、手作りのRMIとHSI。涙ぐましい。。。


機内でくるくる回る矢印から、自分が基地局に対してどこをどのくらい離れて飛んでいるか、風はどこから吹いているのかといったことを瞬時に頭に視覚化して飛行機を基地局の真上に持っていく。飛行機を操縦しながらそれをやるのはものすごい負荷だ。特にELITEは操縦桿の感度をかなり上げてあり、少しの操作でも飛行機が敏感に反応する。スキャニング(多くの計器の連続確認)を怠るとすぐにHDGがずれたり、高度がとっちらかったり、しまいには基地局をOVERHEADできない状態になる。ただぐるぐる周ることがこんなに難しいとは。外が見えていれば、飛行場の上を通過することなんて、朝飯前なのだが。。。



あれ、なんでMAKIそんなにできるの??



シミュレータは飛行機の描いた軌跡を現在進行形で見ることができるのだが、MAKIの軌跡と私やTAKAのそれをくらべると、全然違う。ずれたトラックを戻すのもよくできている。なによりすごいのは、それを高度やHDGをずらさずにできていること。うーん。やっぱ一番センスあるよ。私のは特にひどい。何せ、広がりすぎてトラックを表示するマップの縮尺が変わってしまったのだ。orz


ただ、「うまくいかないこと」には、絶対に原因がある。


EFFECT OF CONTROLのころからセンスなどという言葉から無縁の私は、自分が「できない」ということにびっくりしなくなった。そんなの、原因を見つけて、対策を立てて、修正すればいいだけだ。そういうのは得意だ。多分原因は、

・情報の視覚化がうまくできていないこと。
・場面ごとに考えるべきことと考えるべきでないことの整理がついていないこと。

だとおもう。

HOLDING PATTERNは、直線と曲線がそれぞれ2本ずつの、ちょうど小判のような形をしている。小判のふちに沿って飛行機がぐるぐる回る。左右どっち向きになるかは、地上にある基準点がどこにあるかで決まる。この基準点には、NDBが設けられていて、飛行機はまずその上空を通過する。NDBをOVH(OVERHEAD)したあと、すぐに小判の曲線部に入る。ここでは右旋回として1分間で180度旋回した後、反対側の直線に入って1分間直進。1分後、もうひとつの曲線に入ってさらに1分、右に180度旋回。これでNDBに機種が向いていることになり、さらに1分直進すればまたNDBのOVHだ。これを繰り返す。

何言っているかわからない??そりゃそうです。IFRですから。計器だけを見て飛ぶというのは、今のような文章を理解しながら飛ぶということだ。でも、文章を理解する、という方法では、飛行機のスピードには追いつけない。時速200km/hで飛んでいる飛行機に追いつくには、言語化ではなく視覚化しなければならない。頭の中で絵にして、その絵を「見て」飛ぶのだ。


LET'S VISUALIZE! 家にある暖炉。火を見ていると飽きない。何に見える??


小判の縁取りの各時点で考えるべきことがあって、逆に言うと考えるべきでないことがある。たとえば、NDB OVH直後
の右旋回と、後ろに進んだ後のもうひとつの右旋回では、考えていることがまったく違う。2つの直線も、それぞれで考えることが違う。その時に、何を考えているべきなのか、それがわかっていないと見るべきときに見ていなければならない計器から目が外れて、情報を見落として、高度が、速度が、旋回半径が、そしてHOLDING PATTERNの軌跡そのものが、とっ散らかる。これが、HOLDING PATTERNがうまく描けない原因だ。原因が分かれば、対策を立てて、修正できる。


クロスカントリーや他のすべてのフライトにいえることだが、フライトにはいろいろな場面があって、そのときそのときに考えるべきことと、考えるべきでないことがある。おそらくこれは、プロとして飛び始めてからも同じだろう。この先、飛行機を飛ばすことそのものの負荷は、どんどん減ってくる。オートパイロットだって付いている。(D1900にはついていないんだっけ、、、)つまり、今私が苦労しているようなことは、全部機械がやってくれるようなコクピットが用意されるのだ。そこで、自分がいつ、何を、考えるのか。そして無限の選択肢からそれを選んだのは何故なのか。

きっと、フライトに唯一の解なんてないんだろう。自分のフライトをしよう。



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プロフィール
2010パイロット訓練 2013インストラクター 2018エアライン(訓練中) 命を削って、キャリアを掴む。
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飛行機の訓練や免許取得、NZでの生活など、私が何かお役に立てることであれば出来る限り誠実にお答えします。お気軽にどうぞ。右下をドラッグして入力エリアを拡大できます。また、送信ボタンを押して内容を確認後、送信できます。


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