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     2011.09.25 Sunday
ILSというのは、Instrument Landing Systemの略だ。航空業界には、やたらとこういう略語が多い。こいつらをしたり顔で使えるようになれば、一人前のパイロット、なわけない。

同じように空港の周りに飛んできて、同じように降りているように見える旅客機も、実はいろいろな方法を使って降りてきている。先回の最後にやったアプローチは、VOR/DMEアプローチという。VORとDMEはそのとき解説したので省略するが、この二つの機材を使って空港への方向と距離を確認しながら降りていく。方角と距離、ということは、平面上、つまり2次元の情報だ。縦方向、高度の情報はどうするか、というと、パイロットが持っている空港周辺の地図に「5DMEまでは1400FTを切らないように」みたいな高度制限情報が絵で書いてある。高度制限は、空港に近づくにつれて階段みたいに低くなっていくので、これを「DMEステップ」と呼んだりする。パイロットはこの階段に当たらないように、いちいち紙に書いてある情報を確認しながら降りなければならない。(普通は絶対にその階段に当たらないようなパスを作るように降下開始位置を決めて降りていくが、確認は必要。)

このVOR/DMEアプローチに、高度の情報を組み込んで3次元化したのが、ILSというコンセプトである。

といってもVOR/DMEとILSはまったく別の機材で、周波数帯も違う。ILSは、ものすごく簡単に言うとパチンコ屋のサーチライトみたいに、飛行機が飛んでくる方向に向かって一直線に電波の道を作っている。このサーチライトの中に飛行機を入れ続けるように飛ばしていけば、滑走路の決った位置にドンピシャで着陸できるというすごい代物だ。問題は、この機材の精度の良さにある。ものすごく敏感なので、パイロットの腕が悪いと滑走路の中心に飛行機をもっていくことすらできない。特に接地間際は大変だ。サーチライトの幅はどんどん狭くなっていくので、ちょっとのズレでも計器の針が端っこまでぶっ飛んでいく。それにだまされて大きく修正すると、滑走路に近づくにつれて大きく蛇行が始まる。これはスネーキングといわれ、戒められる。

これを防止するには、ひたすら飛行機の姿勢を止めて、その結果一定の降下率を確立して「念力」で飛ばすしかない。角度誤差をあらわす計器に惑わされてはいけない。1マイルでの1°のズレと、10マイルの1°のズレは違う。「Rate of Descend ・Attitude、Rate of Descend ・Attitude」と呪いをかけるように唱えながら降りていく。ラダーをうまく使って、センターラインを外さないように。このときも、かなりいい調子でいっていた。それでもGSが敏感な領域に入ってきて、ずれ始める。手が反応しそうになる、だがだめだ、何も動かすな。念力だ。

「GSはいいから、DAをよく見とけよ!!」

わかりました、といってApproaching DA Call。DAとはDecision Altitude の略。DAまでに滑走路が見えなかったら着陸やり直しになる。GSが下にすっ飛んでいく。でも追うな、と言われたので、高度計を見るとDAにまさに到達する瞬間だった。DA!と言おうとした瞬間に、

「おるぁ!!『GSを追っかけろ』といっているだろうが!!!!」

と叫ばれてコントロールコラムをぶん殴られた。「何ですとーーー?!?!?」と叫びたかったが直ちにDAをコール。

「Visual!」

「Landing!!」

目の前に見えるRWY。悪くない位置にいる。後はA4(いつも降りる目安にしているところ。滑走路の真ん中らへんにあるTaxi way)の横をめがけて下ろすだけだ、とパワーを落とし過ぎないように注意しながら引っ張っていく。東からのX/Wだ。と、

「さっさとパワーをきりなさい。」

ん?ちょっと高いか?それでもA4に持っていくんだろうし、、、

「さっさとパワー切ろっつってんだろうが!!」

それでもA4に向かっていく私。

「Okじゃねぇ!!何やってんだこの間抜けが!!」

A4のかなり手前に着陸。後でわかったが、X/Wでは長い間浮いていると流されてしまう危険をわざわざ増やしてしまうので、さっさと脚をつける、とのことだった。

「さっさとRWYを空けるんだ!」

はい、といいながらvacate。雨で周りが見えづらい。タキシングのスピードを落として慎重に。

「そんなんじゃ左エンジンが止まるぞ!」

E12でマーカーボードをよけるために、いつもどおり左右に少しCentre lineを外す。

「As long as you stay on the Centre line, you'll be alright!」

ハンガー前までタキシングし、180度回転して止める。

「全然回ってないじゃないか、何やってんだ!」

Shut down CHKで、タイマーを忘れていることに気づく。

「タッチダウンしたらタイマーをオンにしておかないからそういうことになるんだ!」

Propが止まる。

「はいはい、もう(どうでも)いいから後で中に来い。」 (と私には聞こえた。)

ため息とともにPeterが去っていく。無力感しか残らなかった。程なくして同期のTAKAが入ってきて、どうだったときく。絶対にフェイルだ、と言った。とりあえず飛行機を集まってきてくれた同期や後輩に預けて、中へ。レセプションにいた八木さんに、「絶対に落ちました。」と告げる。あんなフライトで受かるはずがない。悪いところしか見つからない。「何かクリティカルなことした??」と聞かれて、AS でMDAを一瞬だが超えてしまったこと、YWに向かうところで高度がかなりずれたことを挙げた。とりあえず行くぞ、と葬式に行くような気持ちでPeterの待つ部屋へ。

彼はすでに部屋で座っていて、なにやら書類をぱらぱらとめくっていた。「What do you think about your flight today?」と聞かれ、「最悪だった。」とこたえた。APへの習熟が足りない、すべてのtrackingにおいて修正が遅い、spring backを読みきれていない、と悪かった点を並べ立てる。そうだな、とPeter。

「However...」

Howeverだと?!?

「精度・錬度に関しては課題が残るが、Overallでは、、、」

Peterが大きな手を差し出してきた。八木さんがびっくりしているのがわかったが、私のほうがびっくりした。あんなフライトで合格でいいのか、と思ったほどだ。混乱したまま手を握り返す。

「彼のグランドはよかった。100%だったんだ、kiwiなんかひどいもんだ。先週もkiwiを二人フェイルさせたし、今日の午前中のCPLもフェイルだった。彼がここ最近ではじめてのPassだ。」

午前中のCPLとは、Benのことだ。

「Just a couple of things」
と言って、以下のことを挙げられた。



・VOR AppではMtAp Pointの最低でも1NM手前でMDAを取り、RWYを探す時間を作ること。
・DME Arcは入りが少し遅れた。その結果、少し広くなったがその後修正していたのでよし。
・ASからYWでは、さっさとAPをエンゲージしてクリアランスをもらう。考えなくてもできる仕事は、もっとAutomaticにできるようにしないと、漏れが出る。DMEのIDENTとかもそうだ。必ず一連の流れでやるように。
・X/Wで長いことRWY上をホバリングしているのはよくない。流される危険が在るから、さっさと脚をつけること。
・Compass turn、CPLでやるからな、覚えとけよ。

そういいながらステッカーに記入をし、ログブックを渡してくれた。身支度をして出て行くPeter。八木さんとがっしりと握手を交わした。何か言おうとするが言葉が出てこない。やっと搾り出して、

「八木さん基準では間違いなくフェイルでした。」

と言った。信じられないほど脱力していて、なかなか部屋から動けなかった。


PPLもCPLクロスカントリーも苦手意識をぬぐいきれぬまま紙一重で乗り切った手前、IFRは自分の得意技にしたいと意気込んでいた、でも始まってみると、いつもどおり誰よりも下手でやっぱりな、とがっかりなスタートであった。双発になり、頭が追いつかないままじゃじゃ馬に振り回され、それでも同期のうち試験は一番手で行きたい、といったのは、意地もあったかもしれぬ。

宣言したはいいが、そう言ってからテストまで、自分の中でこれなら受かる、というフライトは一切なかった。テスト前のフライトなど、教官の八木さんが心配になるほどの出来の悪さで、順番を変えるか、とかマルチパイロット(飛行機を2人でオペレーションするという限定資格。RADIOのセットアップや通信といった仕事を試験官が担当してくれる。)で行くか、とかいろいろ心配をかけた。最後の最後まで、「お前なら受かる!!」といってくれた人はとうとう現れなかった。笑 最後の一週間はかなりの精神力を要した。何より、気を抜くと自分自身の声が「お前なんかに乗り切れるわけがないだろう。」とささやいてくるから。

終わった日のビールはこの世のものとは思えないほどの味だったなー。私の人生は、これからもテスト・チェックの繰り返しだ。意気込み過ぎなくてもなんとかなるように、テストに慣れていかなければ。そうしたら、ビールの味は変わるのだろうか。支えてくれた皆さんありがとうございました。

MEIR 合格!!次、CPL!!!

     2011.09.22 Thursday
【AS-YW】
ASでの戦いが終わり、ここからはCHCHの西8マイルにある、EYREWELL(エアウェル 記号はYW)というVORに向かう。VORというのは、VHF Omni-direcdtional Radio rangeといって、基本的にはNDBと同じように雲の中を飛ぶIFR機に経路の目印を提供する電波標識だ。NDBに比べて直進性の高いVHF帯の電波を使っており、特に悪天候時の精度にブレが出にくい。とまぁとにかくそういうもんがあって、そこに向かうのだ。

ASからYWに向かうには、YWの電波をまずキャッチしなければならない。ラジオのように周波数を合わせるところまでは飛行機も一緒なのだが、間違えてセットしていたら違うところに飛んでいってしまう。そうなっては大変なので、ここで「IDENT」という作業を入れる。何をするかというと、モールス信号を聞く。YWは「てーててーてー・ててーてー」だ。機材についている[IDENT]ボタンを押している間、この信号音が聞こえてくるので、これで正しいVORにセットできているかが確認できる。問題は、今ASを出発して、この信号が拾えていないと言うことだ。

ASを出て数分が経つ。何らかの理由でIDENTが取れない。だが直ちに原因探しを始めてはいけない。とりあえず飛行機を飛ばすこと。RMIはまだAS NDBの電波を拾っているので、RMIの針の反対側を使ってYWへの経路016を維持してトラッキング。

原因は、IDENTを取る時の操作ミスだった。詳しくは省略するが、こうやって小さなミス、いつもやらないミスを繰り返して、自分で自分の首を絞めている。そして、その小さなミスごとに隣に座っている人がわめきたてる。騒ぐだけならいいのだが、けなしてくるのが精神的にこたえる。何より、自分自身がこんなフライトではFail(不合格)だ、と思ってしまう。先輩のレポートに、Failだと思っても最後までやり通すことが重要、と書いてあっても、実際に経験してみるとここで気力を維持するのが本当に難しいことがわかる。それでも脳の神経の接続を一本でも残してやるべきことをやる。IFRは気合だ、ということの意味が更新されていくのがわかった。

YWに着くと、Holdと呼ばれるレーストラックのような形を描く飛行を実施。実は、ASでもHoldは行った。テストでは、VORとNDBという二つの電波標識に対して、同じようにHoldが作れることを見せる。Parallel Entry。APは切られず、そのまま周る。Outbound HDG002。1分でターン。holdは上手くいった。Peterのコメントも、「DMEをもっとよく見ろ、馬鹿野郎。」程度だった。ちなみにDMEとは距離測定装置の略。これも電波を利用している。地上施設からの距離を教えてくれる機材だ。




書いていて疲れてきたので休憩。笑 今日クラブに来たセスナのサイテーションに群がるうちの学生の図(風の音がうるさいので音消して見るとよいです。)プライベートジェットだ。オークランドから来たらしい。もちろんしっかりコクピットに座らせてもらった。下から生えてる操縦桿。B3みたいだ。


【ARC-VOR APP】
Holdを抜け出して、CHに着陸するためのパターンに移行する。空港から半径13マイルの円弧上を飛行して、RWYの延長線上に来たところで空港に向かって90°旋回し、そこから長いファイナルを作って降りていく。実に、チェロキーで飛んでいた時の、13倍の長さのファイナルである。

Establish Inboundをcallし、118.4(CHタワーの周波数)に切り替えてもう一度HSIをチェックしていると、「今何をしなければいけないんだ!」と聞かれる。いつもは落ち着いたところで118.4にコンタクトしていたが、さっさとコンタクトしてほしいらしい。「Do what you are told to do!!!」

いつもどおりに降りていると、もっと早めにMDA(RWYが見えない状態で降りていい最低高度)に降りろ、との指示。いつもどおりの降下では間に合わない。せっかく安定していたのにここでConfigurationを変えたくなかったが、仕方がない。PWRを下げる。1000Ft/minで降りてなんとかMDAをゲット、HISは真ん中にある。大丈夫だ、と思った瞬間に

「てめぇ、グラスに向かっているだろうが!ベースにチェロキーがいるんだぞ、左に回れ、左だ、ひーだーりー!!!」

死んでもMDAは切るな、と自分に言い聞かせて左に少しだけ旋回。RWY上に戻ったのだろう、MtAp(着陸を断念して上昇すること)の指示。GA Mode Engage、トリムを取って、とやっていると、さっさとタワーにMtAp Callだ、といわれる。APを入れる作業を中断して、118.4にコール。その後、さっきの例もあるのでさっさと120.9にコンタクト。APを入れる作業にもっと習熟しておくべきだった。ここでもたもたしていると、Radioだのなんだのと他の仕事を要求されてしまい、余裕がなくなる。

あとはレーダーで空港の周りを誘導されて、最後の締め、ILSだ。

つづく。
     2011.09.21 Wednesday
NDB HOLDは滞りなく進んだ。先回も書いたが、ASでの目的は、飛行場においてあるNDBという施設から電波を受信し、それを使って決ったコースを飛ぶこと。その技量を見せることだ。RMIという矢印がついた計器を見ながら、施設の上を飛ぶ。矢印の頭が施設を指すので、矢印の頭を追いかけていけばいつかはNDB直上を通過(OVH)することになるのだが、勝手なコースを飛んでOVHしても意味はない。雲で外が見えない状況でも、山やビルにぶつからないように各空港ごとにこういうルートで飛べよ、というルートが決められていて、それをRMIを使って忠実に守りながら飛ばなければならない。風が吹くと特に難しくなる。針路を固定していても、流されていくからだ。




【後述するUnusual Attitude Recoveryの訓練。パイロットが目をつぶった状態で教官が飛行機の姿勢を崩して(この場合は失速直前のものすごいノーズ上げ姿勢から下がり始めるところ。)直後に失速か急降下(Dive)かを判断して異なる対処法で対処する。瞬時にほぼ正反対と思える動作をしなければいけないので、結構難しい。ビデオの最後で指差されている計器は昇降率を表すVSI。針が振り切れている。鉄の塊となって落下しているということだ。カメラワークを失敗して90°傾いているが、このほうが気持ち悪さが伝わってくるかと思い、そのままに。笑】


セネカのRMIには癖があり、訓練中も苦労した。そのひとつはSpring backと呼ばれる、針のオーバーな動き。ここだ!!と思って飛行機を戻すと「ビヨーン」なんつって違う方位を指したりする。それでもいつもは10°くらいだったのだが、この日に限ってなぜか20°位だったので最初のinterceptに苦戦した。修正したあとは、大きく外すことはなかった。それでもPeterは叫び続けている。

「Don't chase the needle any more, use your brain!!!」

再度のOVH後、Teardropと呼ばれる方式で空港に降りていく。NDBから涙が出ているような形をしているのでこの名がついた。NDBから一直線に離れるように一旦飛び(Outbound)、在る地点で左に180度旋回(Base turn)してそこからまたNDBを目指す(Inbound)。その間に飛行機を決められた最低高度(MDA)まで降ろして空港が視認できることを条件に着陸ができる。


【Unuseal Attitude】
AsでCircling approachと呼ばれる方法でApproachを実施したあと、東に出、目の前の計器のいくつかをぼろぼろのボール紙みたいなので隠すPeter。Compass turnを2回実施。

「Maintain 2000ft, turn HDG200.」

「Climbing to 2500ft, turn HDG 340.」

Compassにもspring backのような特性があり、たとえば真東から真北に旋回したいとしたら、南半球では真北から30度オーバーさせたところでWings level.みんな苦手だ。笑 せっかくタイマーがあるのだから、それを使うべきだ。Roll in/outもタイミングを逸しないように。私のCompass turn をみたPeterの感想。

「うーん、ゴミだね。Hahaha」

はは、は。。。


続いて、冒頭のビデオにあったUnusual Attitude recoveryを実施。想定は雲の中。計器(AH、DI RMI)が部分的に壊れているというもの。これがまたビデオとはかなり違った。急旋回、上昇でGをかけるところまでは一緒、その後涙がせり出してくるほどのマイナスGをかけられる。その後もう一度引き起こし、完全な無重力状態を作ってASI(スピード計)がおかしな動きをしているところでYou haveされ、一瞬後に針が一気に下がった。頭ではDiveとわかっていたが、無重力に状態にあるからだが何とか触覚による情報を探そうとして混乱しかけた。それでもなんとか理性を引っ張ってきて手がスロットルを叩き切り、TCを水平にした後バフェットがくるまで引き起こしてPWR ON。

うーん意外と面白かったなぁ。

つづく
     2011.09.21 Wednesday
Multi Engine Instrument Rating(MEIR)の試験が、19日にあった。その前の一週間はその準備に追われてどうしてもブログの更新ができなかった。ごめんなさい。なにせ、1年の訓練を通して目玉と言っていいテストだ。このテスト代だけで、でっかい薄型テレビが買えてしまう。まさに目(ん)玉(飛び出る)商品。


フライトは午後13時の予定だったが、前線が来ているため(すでに地上は南風だったが)フライトが早まるかも、との情報。午前中に同期のBenというkiwiが私のテストと同じ試験官のPeter(おじいさんという部類に入ると思う。飛行時間30000時間くらいときいたことがある。)とCPLを受けてFAILしてさらに早まる。先週、先々週とKIWIのMEIR(みんな同期)4人に続いて、これで5連敗だ、嫌な流れ。

入って左手奥の部屋でPeterがBenとブリーフィングを終えて、出てきた。何かを探すそぶりを見せながらレセプションに歩いていく。そのまま着いていき、レセプションにPeterが何か言いかけると同時に挨拶。第一印象は重要。目をしっかりみて握手を交わす。「君のことを探していたんだ。」とPeter。聞いていたより穏やかな印象だ。そのまま自分でセットアップした部屋に案内すると、荷物を左手奥の部屋にもってこいという。KDR(学科試験の間違えたところを復習したレポート)とLogbook、受験票をPeterが取り、私が残りの荷物を持って部屋についていき、荷物を置くと同時にKDRを返される。

「はい、これはもういいよ。」

口述試験は、先輩のレポートにあった質問に準じたものだった。事前に予習しておいた。ここでしっかり自信満々に答えておくことと、体裁のいいKDRを提出することで、自分でサボらずに勉強できる人間だ、ということをアピールしておくことが大事だと感じる。後から述べるように、私のフライトは決してよくできたものとはいえなかったが、試験官の気持ちになってみれば、落としたいとおもってやっているわけではないだろう。彼から見れば、我々の誰だっていらいらするほど未熟であるわけだが、未熟者である上に勉強をサボる、となったらそんなやつに安心してRATINGを付与するわけにはいかない。


【Taxiing-T/O】
フライトテストが始まった。先にいってクリアランスをもらっておけ、といわれて荷物を持って部屋を出る。ちんたらしていると機嫌が悪くなるらしい。あらかじめヘッドセットやフォーグル(目隠しをするためのめがねみたいなもの。つけるとx-menみたいになる。)はすでに飛行機の中に準備して、あとはシートベルトをつけるだけという状態にしてあった。乗り込んでCOM2を127.2にセットしたところでPeterが歩いてくるのが見えた。ATISをとり終えて、クリアランスリクエスト。ここでスタンバイとのこと。ファイルしてから時間が短かったかもしれない。1分くらいの沈黙。その後にクリアランスを無事取得。RWY 20 ALVAD 1C。

Departure Brief(TCTWO CHK)を流し、最後にOperational Threatsのところで「今日はフライトテストなので、ナーバスな私が脅威そのものです。」と言ったら笑っていた。ちょっと気がまぎれる。タキシング中は、左エンジンの回転数が低くなりがちなことに注意を受ける。「止まっちまうぞ」などと軽く注意を受ける。この時は、まだわからなかった。彼の本性がどんなものかを、だ。

Auto pilot(AP)のチェックでは、FDが機能しているかどうかAPを外した状態でのチェックがあるのだが、ここでは「APが入っていないじゃないか!」と指摘を受ける。正確には、後からそう言ったのだと理解した。FD単体でのチェックはPeterは行わないようだ。先入観から何を言われたのかよくわからず、もう一度FDでやろうとしたら「入ってねぇっていってんだろ!」と口調を強めながらAPボタンを押してきた。ここで言っていることを理解し、いつもはこうやっているんだけど、と説明したらあっそう。とあしらわれる。無理に噛み付かず、「ですよねー」と流す。伊達に社会人を4年間もやってきたわけではない。

Fuel Pumpには、午前のフライトを終えて帰ってきたMAKIの機体の周りにみんながいる。心配そうな顔が並んでいる。頼むからそんな顔をしないでくれと思いながら、E12でエンジンチェックをする旨を伝え、T/O クリアランスまで万事滞りなく進む。定刻より2分早い、0058に離陸。しっかりVisual Referenceを取って、真っ直ぐ。私は訓練時、Rotation後すぐにAHのみで飛ばすくせがあり、すぐに10°ピッチにあわせてしまってAsymmetric(片エンジン停止時)にスピードが足りないことがよくあった。今日はそうならないように気をつける。300ftまでは、あくまでVisualで飛ぶこと。テスト要件にも、Instrument transitionという項目があるのだ。


【CH-AS】
Ashburton(AS)という飛行場にNDBという電波施設があり、それを頼りに決められたルートを正確に周れるかをこれから見せに行く。AS までの中間点でPeterにAS MtAp Timeを0155と報告したところ、「●×▲※□●×▲※□」と言われる。はて。

35NMでControlにMtAp Timeを報告しようとして思いとどまる。さっきなんて言ってたっけ?もう一度MtAp Timeを読み上げた。やっぱり「●×▲※□●×▲※□!」ちょっとマイクの声が遠い。もう一度聞き返して、「On the hour!」といっているのが聞き取れた。0155という中途半端なものではなく、0200にしとけ、と言っていたようだ。そうですか。Peterの機嫌がどんどん悪くなっていっているのがわかる。

途中GSからHead Wind25kt程度だと読んで、35NMでMP26にし、減速。39NMでTweedle Turn Time Talkで119.1(AS付近を飛んでいる人たち)に10NM東にいるからね、とCALL。Intercept 295 to AS。風に対する修正を10度取ってRMIという計器のフィードバックを待つ。いい感じ。次は降下だとAPのDOWNボタンを押す。降下率を表すVSIが下がっていく。RMIを見て若干プロサイドにいることを確認。いいじゃないか。ふとVSIを見る。降下率が0に戻っている。足りない。おかしい、なんだこれは。操縦桿の紅い丸ボタンに親指を伸ばしかけて気づいた。ALT modeが入ったままだ、このモードではAPは一定の高度を維持しようとしてしまう。ALTボタンを解除するのと、Peterが叫ぶのが同時だった。

「How come you think you can descend with the ALT mode ON!?」

APが完全にお荷物になっていた。RMIのスキャニングが弱くなり、ProsideにいたはずだったTRKもズレはじめる。OVH直前の針の角度差と周る速度から考えて、0.5マイルくらい離れていたかもしれない。お前の修正はものすごく遅いんだよ、と言われて思わずYES SIRと答える。このへんから雲から出ていたように思う。気流が荒れ始める。

つづく。




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2010パイロット訓練 2013インストラクター 2018エアライン(訓練中) 命を削って、キャリアを掴む。
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