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     2023.10.29 Sunday

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     2012.12.30 Sunday
先日、新橋のホーブン[1]でいろいろ買ってしまった。

まずはこれ。


ニーボードはずっと欲しかったのだが、前回の渡航時はパイロットではなかったのでよく知らなかったのと、値段が高いので二の足を踏んでいたものだ。主にクロスカントリーで必要なフライトログと呼ばれる記録用紙をこの上に置いてものを書きながら飛んでいく。私の学校で採用されていたのは、A4サイズのこういうもの。



膝に置くと両脚が隠れる。書きやすいのだが大きくて邪魔でもあった。右側に見える青い物体は付属ではなく、


手作り品である。[2]
 
これに空港の情報が書いてあるA5のチャートを入れて使う。En Route(巡航中)では上の写真のようにA4のボードに挟んで中身を右側に垂らしておき、空港が近づいてきたらボード上に中身をめくり上げて空港の情報を確認する。金具部がカチカチと開くようになっているので、次の空港に向かう場合は今使ったチャートを取り外して順序を入れ替え、同じように使う。

でも新しいニーボードの方がかっこいいのでは開くと両脇にポケットができて便利そうなのでついに買ってしまった。




次がこれ。



プロッターは、地図上の距離やトラックと呼ばれる飛行経路の角度を測るために使う道具。分度器と定規が一緒になっているのが欲しくて探していた。分度器の部分が回転するもの[3]もあったけど、高いのでこちらにしておいた。ちなみに学校で使っていたのはこういうやつ。



分度器と定規が分かれている。これも地上では特に問題ないが、上空だと狭いコクピットでぺらぺらした物体をとっかえひっかえやるのは面倒だった。落としやすいし。


ホーブンで探検
それにしてもホーブンという店は面白い。飛行機で使う本物の道具が売っているので、ほとんどのものが他の場所で見たことが無いようなものばかり。こういうチャート(航空図)もそう。




って、これからNZ行くのに日本のチャート買ってる!!でもまぁ日本人の学生をもし受け持ったらこの地図を見せて「Timaruは沼津だね[4]」なんて言えばイメージが湧くかななんて。



それにしても日本ってニュージーランドと似ている。真ん中に脊梁山脈、南北に細長い島国、関東に平野がある。同縮尺の地図を二つ並べてみる。ニュージーランドの方が少し小ぶりか。。。

ホーブンのおっちゃんがまた人懐こいのでしばし話し込む。最初、ニーボードをにらむような目で見ていたら「自衛隊の方ですか?」って自衛隊の人も買いにくるのかここには?国が支給するんじゃないの?ニュージーランドでMEIRとCPLまで取った旨を伝えるとすごいですね、なんてお世辞をもらったが凄いことはない。大変なのはこれからなんだから。がんばらねば。

がんばらねばね。そうそう、こういう本[5]でちゃんと勉強をしてがんb



買っちゃった。。。立ち読みしてたら結構良い内容だったから。。ニュージーランドからでもネットで注文してくれればEMSで送りますよ!だそうだ。笑


ABCマートで靴探し
飛行機の訓練用に良いものを探していた。前回はリーガルのビジネスシューズだったのだが、NZの飛行場は草地であることも多く、雨や朝露で草が濡れると靴に水が染みる。加えて私のものには通気性を良くする為に靴の底に穴があいているというメーワクな構造でより水が中に入ってきやすかったため、雨が降ったあとはトカゲみたいな歩き方でプリフライトチェックをしていた。また、小型機の場合は、万一不時着したときのことを考えて足下はある程度しっかりした靴の方が良いかもしれない。あまりゴツいとラダーペダルの操作に違和感が出るかもしれないので、適度に。しかも出来るだけ軽いほうがいい。色は黒、と一応不文律もある。そういう条件を全て満たす靴というのは、なかなか無い。

そして行き着いたのはこの靴!


GT HAWKINS タウンシューズ 4INCH PLAIN TOE HL20003 BL/BLACK

軽いし歩きやすいし適度にしっかりしているし革だから防水スプレーでしっかり覆えば朝露くらいはなんとかなりそうだし。何より安い!防水性能を考えたらこっちもいい。今回は長くいる予定だから2足買っていくかも。

さらに



ソニーのbloggie。フライトの動画を残そうと思って前から適当なのを探していた。こいつの特徴は360度撮影ができること。こういう動画が撮れる。YouTubeでよくコクピットからの定点動画なんてのがあるけど、前しか見えない。視界が良いアルファに乗ってこれで撮影したら面白そうだ。[6]


金、、、つかいすぎた。






1. ホーブンとはマニアックな飛行機関連用品を取り扱っているお店のことです。

2. A5サイズのバインダーを買ってきて、表紙をぶった切って作った。中身はA5が入る透明のリフィル。この二つを探して町中の文具屋をさまよい歩いたが、たったこれだけのものがなかなか見つからなかった。ニュージーランドの文房具の品揃えの悪さは、日本のそれに慣れた身には堪え難いものがある。

3. 分度器の部分が回転するやつは、トラックに定規を当てた状態で分度器を回せば角度が分かるので便利そうだ。私の買ったものでは、分度器の中心をトラックの上に当て直さなければ角度が測れないため、2度手間かもしれない。ただし、これも地上での話。上空ではどうだろう。使ったことが無いので分からないが、定規を線に当てながら分度器を回す作業を片手で(もう一方の手は操縦桿だから)やるのは難しそうだ。

4. クライストチャーチを羽田に見立てて考えると、Timaruは沼津、Hindsは富士山、Kaikouraが日立市(あるいはDAIGO VORTAC)でNZCH-Rangiora間の距離は東京アクアラインの端から端の距離と大体同じだった。

5. 飛行機の操縦 応用操作編 飛行機の操縦 航法編 需要がほとんどないためか、こういう専門書は高い。アマゾンにはプレビュー画像すらない。笑

6. 自分の訓練を記録するという意味もあるが、プロモーションビデオみたいなものを作ってNZ中の学校に売り込もうかなと。私の母校が雇ってくれるとは限らないので。
     2012.12.29 Saturday
ほんと前回やったことをなぞっている気がしてならない。同じような記事を書いた。

県警本部に無犯罪証明(正式名称は犯罪経歴証明書だけどそんなふうに言いたくない)を受領するため再度赴く。駅前にはこんなのがいた。



翻訳者のときには何回かお世話になりました。ミニを改造したレッドブルカーでかわいい女の子が「こんにちはーレッドブルいかがっすかー(無料)」っていうから



そりゃ飲むよね。


翼を授けてもらって意気揚々と県警に乗り込むと、1階の受付で跳ね返された。13時まで昼休みなのでそれまで待ってくださいとのこと。まぁ、しょうがないか、ちょうど私も昼飯がまだだったので弁当を食べて30分くらい待つ。受付の人が交替する。5分前になったところで当然のような顔して「無犯罪証明とりにきました」といったら通行証をくれた。

無犯罪証明は鑑識課が発行する。誰も乗っていないエレベータで上の階に上がって暗い廊下を歩き、突き当たりの扉を開けるとサスペンスドラマでよく見る青い制服(背中に鑑識ってかいてあるやつ)を着たにーちゃんたちが電気を消した薄暗い部屋の中、それぞれのデスク(これもドラマにある灰色の業務用のやつ。椅子も同様。)で反っくり返って昼寝していた。まぁあと1分だから待とうかなと思って壁際の椅子に腰を下ろしたときに若いにーちゃんがやってきて、慣れた身のこなしで引換券と同じ番号の茶封筒を取り出した。身分証を確認した後に台帳をずいと目の前に寄越し、ここに受け取りのサインを、と言った。私の列しか見えないように窓がくりぬかれた厚紙が上に乗っている。徹底しているなー。

開封無効、とあるけどなんで自分の犯罪歴を確認しちゃ駄目なんだろうか。よくわからないが裏側から光を当ててがんばって読むとなんとか大丈夫そうだということが分かった。笑


ビザについて
ビザについてはもう色々あって書きたいことが山ほどあるのだが、実際書くとなると話がこんがらがって面倒くさい。でもがんばって書いてみる。[1]

結論から言うと、ワーキングホリディビザで入ることになった。

最初は学生ビザで入るつもりだったのだが、いろいろとやっているうちに間に合わなくなってしまった。そしてあるとき、イミグレのHPを見ていたら、「あれ?ワーホリ使えるんじゃないのこれは」と思い立ち申請してみたら、何と数日で発行された。[2]しかもオンライン申請。笑

なんでもニュージーランドの日本人向けワーキングホリディビザは、一年間に承認していい人数に上限が無いのだそうだ。それにしても他のビザとの面倒くささに比べてこれはないだろうというくらいのあっけなさだった。何しろ、パスポートすら提出する必要が無いのだ。何だったんだいったい。で、学生ビザの何がそんなに面倒だったのかと。

面倒くさいので箇条書きにする。笑


・ビザ発行の管轄機関がニュージーランド大使館からVFSニュージーランドビザ申請センター(以下VFS)というところに変わった。[3]

・これに伴いビザの発給部署が本国ではなく、ニュージーランド移民局上海支部になった。

・学生ビザの発給で要求してくる書類の中に、今までとは違う「戸籍謄本・抄本」が含まれており、しかも英訳(翻訳会社の証明書付き)で出せと来た。

・本国イミグレにSkypeで確認を取ったところ、学生ビザに出生証明(日本では戸籍謄本・抄本が代わりになる)は必要なく、日本の担当機関がなぜそれを要求するのかわからんとの仰せ。

・本国に裏を取った上でVFSになんでそんなもんがいるんだといったら上海から出せと言われてるんだとのこと。

・上海支店に「ほんとですか」とメールしたら「学生ビザに出生証明は必ずしも必要ではないんだけど、そこは担当官の判断で必要になることもあるよ」とお役所的模範解答。それは質問に答えたことにならないのだよ。こうなったらつけるしか無いじゃないか。

・根拠はグレーなまま「通常は必要ないんだけど」の戸籍抄本を家族に取ってきてもらい、ネットで探した翻訳会社にPDFデータにして送付。2日後には到着。安くて早くていいものが上がってきた。[4] これはこれで、びっくりした。笑 ちなみに利用したのはくまざさ出版 翻訳サービス おすすめです。相見積もり取ったところの中には6300円という値段を出してきたところもある。

・書類はそろったんだけどこの時点で12月第1週目に入っていた。ビザの発給には通常3週間程度かかるから、クリスマス休暇を考慮したらかなりヤバいことになっている。VFSによると「お急ぎで」と手紙でアピールすることが出来るらしい。早くなる、とは決して言い切らないが、口ぶりからいってきっと前例があるのだろう、何となく行けそうな気もしていたが、ここでパスポートを手放すのは痛い。どうする、ビジターで入って現地で申請するか?[5]

・ここでハタと気付く。そういえば学校から学費の領収書が届いていない、と。これは正真正銘の必要書類。戸籍謄本に気を取られてこっちを忘れていたボトルネックがこんなところに!!!

・なんてこったい。

・半ば諦めてイミグレのHPをうろついていると、Working Holiday Scheme の文字が。

・冒頭に戻る。笑


ワーホリは31歳の誕生日まで申請が出来る。30歳で申請することをギリホリと呼ぶ。ギリホリ万歳。おかげで私は救われた。就学は6ヶ月可能。学生ビザを取るより長い期間のビザが出てしまった。Permanent な仕事には就けないけど、教官になるなら最初の仕事がPermanentなわけがないから逆に都合がいいのかも。


誤ったビザ申請情報?
以下余談(いやむしろ全部余談か?)です。

上で述べたように、ビザ申請窓口が変わったのだが、ここの対応は少し疑問に思うところが多かった。私の質問に対し、論点が2転3転。また、誤った情報を案内されて、後から訂正されたこともある。例を挙げると

・肺のレントゲン(INZ1096)が必要な人の範囲について。ニュージーランドに滞在する期間が6ヶ月未満の場合は、どんな場合でも提出は必要ないのに必要です、と言われた。(私のコースは5ヶ月程度だったので学生ビザの範囲としては6ヶ月未満だったのだ)6ヶ月以上の滞在予定者は、日本(=肺結核のリスクが高い国)に6ヶ月以上滞在した場合にこの提出が必要になるのだが、その条件とこんがらがったようだ。[6] 何回も確認して間違いだったと訂正された。

・INZ1198という、特別なワークビザを出す申請書がある。これは、自分の配偶者やパートナーがニュージーランドの市民権や永住権を持っている場合に、パートナーシップという方法を使ってワークビザを出してもらう方法。これは学生ビザではないのだが、VFSのHPには学生ビザであるかのように書かれている。

後者は特に問題で、私が指摘して担当者も最後は「これは学生ビザではありません」とメールで回答してくれたのに、未だに直っていない



3つ目をクリックすると、申請に必要な書類のチェックリストが出てくるのだが、INZ1198なのに学生ビザ。そういうものは存在しないと担当者は言った。


上記リンク先の3つ目の中身。Student visaとある。


これでは誤解する人がいるのではないだろうか。単純に間違っていただけなら、訂正してもらえば問題ない。そんなに目くじら立てることもないだろう。でも、間違いだって言ったのになにも対応していないから今回載せた。「今回の事例を教訓とし、今後一層の勤勉とサービス向上に・・・」と言ってくれただけに残念である。

まぁ、とりあえず無事入れることになりました。




1. ここに書く情報は私が体験したことを一般的な情報として載せるだけです。ビザ申請のアドバイスを個人的、具体的にするには専門の資格を持った人でないと出来ないことになっています。ビザ申請は必ず自分自身か資格を持った人の責任において行ってください。
2. 12/9に申請して12/18に発給された。申請時に肺のレントゲン(INZ1096)が必要なことが分かっていたので、12日に日比谷クリニックでこれを受け、当日に書類をエアメールで発送。担当官にメール添付で先行で送ると翌日には凄く感じのいいメールが返ってきたので、この時点でほぼ決まっていたはず。そうなると、所要わずか3日!orz
3. これによって取扱手数料なるものが4000円くらい取られることになった。これまでは査証料金のみだったので、日本在住の人はこれが免除だったから実質無料だったのに。
4. 私だって翻訳者の端くれ、こんな字数少ないのに3000円とはね。と思ったがしょうがない。実際早かったしこういう公的書類っていうのは独特のいいまわしもあるから自分でやっていたら変なのになった可能性もある。
5. このやり方はあんまりよくない。ビジタービザの目的は観光とか誰か友達を訪ねる等だから、初めから学生ビザが必要な学校に行くことが分かっているのにビジターで入ったら嘘をつくことになる(と私は個人的に思う。)まぁビジターです、後で気が変わってこの学校行くことにしました、といってもそれが嘘だとは証明はできないんだろうけど。
6. まぁ書いててこっちもこんがらがってくるけどさ。
     2012.09.23 Sunday
ぐだぐだと迷っていたが、やっぱりニュージーランドに行くことに決めた。

2つ選択肢があってどちらかを捨てなければならないことを、失うものがある、考えたのが迷いの原因だった。どっちだって一緒だ。こういう迷いは良くない。どちらを選ぶにしても、準備が必要で、準備する為にはそのための時間が必要だ。どちらかに決めないと、時間だけが無駄に過ぎる。エンジンが止まった飛行機の上から2つの不時着地点をいつまでも見比べているようなものだ。その間に最も重要な高度を失うことほど間抜けなことはない。


アホだ。


不安材料はいくつかあって、考えようによってはそれらは決定的とも思える性質のものだ。つまり「無理なんじゃないの」と思えるようなものだ。でも、そのくらいで丁度いいんじゃないだろうか。困難なイベントとの戦いがまったくない人生というのもつまらんだろう。これは私の戦いだ。なにも敗戦国の総理大臣をやるというわけではないのだからして。

ということでさっさと航空券を取った。



そして、まさかのニュージーランド航空!!しかもトリプル(777)!!試しに座席指定をコクピットにしてみたら、、、ははは、NZっぽいね。

全部で10万くらい。いつか社割で乗ってやる。


     2012.09.16 Sunday
NHKの土曜ドラマスペシャルで今「負けて、勝つ〜戦後を創った男・吉田茂〜」というのをやっている。面白い。吉田茂についてWikipediaで調べていると、主演の渡辺謙のインタビューが載った記事を発見した。そこで共感したことについて、記事を引用しながら述べてみたい。(以下、引用部は枠で囲って示す。)


吉田茂役に重ねた経験!渡辺謙がこだわる“日本の俳優”という価値 トレンディネット


マッカーサーと英語でやりとりするにしても、何故、ほかの人ではなく、吉田だけがちゃんと物事を進展させていくことができたのか。中略 外国人というのは、持っているものを「ボン」とテーブルの上に広げて「さぁ、どれをとる?」とやったほうが、「そうか」と前に乗り出してくれる、みたいなところがあると思うんです。


「物事を進展させる」という言葉が、最近仕事をしていてよく考えていたことに少しピンときた。会社内を見回すと二通りの仕事をしている人がいる。一つは、物事を進展させる為の仕事をしている人、もう一つは、物事の進展にあまり関係のない仕事をしている人。まぁ私がどっちに属しているかはこの際深く言及はしないが。(笑)

私もできるだけ物事を先に進める仕事ができる人間でいたいと思っている。そして、物事を進めるコミュニケーションというものがあるようだ。それは文化ごとに異なるルールを持っていて、大切なのはルールに差異があることを知っていること。自身の経験に照らして語った次の文から、そんな印象を受けた。


記者:それはやはり、渡辺さんのこれまでの海外経験から、そうするものだという実感があったということでしょうか。

渡辺: ありますね。たとえば、自分のキャリアや能力、そうしたものをひけらかした瞬間、あいてもガッと寄ってきます。自分が胸を開いたとき、相手も開いてくれる。そうした瞬間が、いままでたくさんありましたね。日本人というかアジアでは、そうした関係性を手さぐりで進めていく感覚があるんですけど、西洋、米国を含めてヨーロッパでは、こちらがポンと開いた瞬間、向こうもポンと開いてくれる瞬間が多かったんです。ですから、吉田も、そういうタイミングを掴むのが上手かったんだろうな、と…。

中略

記者:日本の制作現場とはまたちがう感覚なんでしょうか。

渡辺: 同じだとは思いますけど…。ただ国内現場は、言葉が通じたり、価値観がそんなにちがわない中で、だいたいこう思っているんだろうなという、ある種の錯覚で成り立っているようなところもないとはいえないですね。


ドラマの中の吉田茂は、外交官だった。敗戦国の外交官だ。ルールが決定的に異なる中で、敗者が自らの要求を通すというのはほとんど不可能に近かったはずだ。ただ、少なくともルールが異なることを知っていたために、彼は天皇の戦争責任を回避するという一番欲しかったものを手に入れることができた。物事は前に進んだ。それを演じる役者も、その差異に気づいている人でないとできなかったのかもしれない。

今の自分に当てはめてみよう。例えば、私がこれからニュージーランドで教官の仕事を取ろうとした場合に学校の社長やCFI(Chief Flight Instructor)と取るコミュニケーションと、日本でパイロットとして就職しようとした場合に航空会社の役員面接を受けるときに取るコミュニケーションにも、同じような差異があるのかもしれない。ガッとひけらかすのか、手探りでやるのか。そこに自覚的にならないと欲しいものは手に入らない。大げさに言うつもりはないけれど、ニュージーランドで外国人として仕事を取るということも、異なるルールの中で欲しいものを手に入れるという点で「外交」なんだと思う。


日本と海外の映画撮影現場の違いに話は移っていく。



ただひとつ言えることは、映画産業の中でも俳優たちだけが行ったり来たりしているだけで、スタッフは行き来できてないですよね。中略 録音や照明、スクリプトライターなんていう人たちも、行ったり来たりできる環境がもっと整ってくると、日本の映画産業ももっとオープンになっていくだろうし、技術的にも高くなっていくと思うんですよ。それがまだ叶わないのは、日本が大きな海峡をそこに作ってしまっているからなんじゃないかな、という気がしますね。

中略

僕が行き始めた2000年代前半には、海外で日本人スタッフに会ったり、若い子が向こうの大学に入って勉強して、そのままその業界に入っていたりもしました。ただ、その彼らがなかなか戻ってこられない。戻ってきたとしても、また1から徒弟制度から始めなければならないのだとすると、海外で培った技術をなかなかこちらで発揮できないんじゃないでしょうか。


なんか、航空業界にもありそうな話だな、と。


     2012.09.07 Friday
座談会が無事に終わって、いろいろなてんやわんやが一段落した。

こういう飲み会の幹事みたいな仕事は本当に面倒だが、それをやる人がいないと世の中回っていかないことはよく知っている。まぁがんばった甲斐はあった。先輩とも意見交換ができたし、青系会社に決まった先輩にも会えたし、数年かかって使用事業のコクピットを射止めた先輩とも祝杯をあげられた。

また、今回座談会にきた人はいろいろなバックグラウンドをお持ちで(というか毎回そうなんだけど)入学が決まっている人、ちょっと興味があって参加した人、昔少しだけ飛んでた人、海外を目指す人、ローンにめっちゃ詳しい人。。。

その方はいかにお金を借りるか、ということにものすごく詳しくて、びっくりした。私の知らないお金の借り方が何個も出てきて「あら、これなら私もいけるんじゃないの」というような実践的かつ具体的な方策をいくつか伝授してもらった。(追記:今やっているけどやっぱ結構厳しい。。。)毎回座談会にはすごい情報を持っている人というのが何名かいらっしゃる。こういう人たちは「わからないので教えてください」の「わからない」ものが何なのか、自分である程度切り分けてきていることが多い。そういう人がする質問というのは、具体的で、さらに個性的であることが多い。自分の問題に特化した質問だから。


エアマンシップ
訓練をしてきた経験から言うと、こういう姿勢はものすごく重要だ。自分で道筋を立てられない人は、いつまでたってもパイロットにはなれない。自分がなにをやったらいいか、人から教えられるのを待っている人は、先生が上手ければ結構うまく育つかもしれない。でも先生がいなくなったときに破綻する。パイロットになるということは自分がたくさんの人をのせた航空機を飛ばすのに必要な能力と技術を持っていることを、常に一定のレベル以上に保つ責任が発生するということだ。パイロットの技量というのは、それが定期的なチェックで客観的に評価されるから、怠ければすぐにばれる。PAPIで3度外したときぐらいすぐばれる。笑

パイロットというのは「ほら、やってみろ」といわれてそれができなかったら、クビだ、ということ。普段からガタガタ文句をいったり人のせいにする自分に無自覚だと、いざ入ったSIMの中で飛行機が暴れだすことだろう。文句を言うことは、準備ではないからだ。文句を言うということは、言ってる間にできることをやっていないとも言い換えられよう。その結果本番で上手く行かなくて「あのときあの人がこういったからこんな結果になったんだ!」と叫んでも待っているのは同僚の冷笑だけ。そのかわりに人の命を手の中に握ることを許されている。お客さんからしたらそれくらいしてもらわないと、と思うだろうがこれからパイロットになろうという者にとっては、すごく恐ろしいことだと思いませんか。なんてったって、そこに人生かかってんだから。

エアマンシップとかライトスタッフとかよく呼ばれるんだけど、訓練が終わってみて、振り返って「あぁ確かにそれが一番大事だよな」と実感するたぐいのものなんだと思う。だから訓練をしたことがない人にこれをリアリティをもって伝えることは結構難しくて、座談会では毎回工夫しているのだがなかなか上手く行かない。でも、もしこれを身につけることなくパイロットになってしまったら、いつかどこか大事な本番で「うっ」って頭が真っ白になる事態に出くわすような気がする。


全部自分のせい
このエアマンシップを会得するには時間がかかるし、自分で自分のけつをふく姿勢というのは維持するのがしんどいのですぐに心が怠けてくる。それが常に要請される環境で訓練するより他はないのだが、身につけるために学生がしなければならないことはひとつだけ。それは、


絶対に現状の原因を外部に求めない」ということ。


コクピットの中では、どんな理不尽なことも起こりうる。なぜなら、どんな人間よりも気まぐれな「機械」と「自然」が相手だから。誰かがやったことが自分の意に沿わなかったり、期待していたけど裏切られたというようなときに、文句をいいたくなるのはわかる。でもそれを実際に口に出して言うのかどうか、時と場合を選ばなければいけない。ことの善し悪しは別にして、全部織り込み済みで行動する。誰かが自分の思い通りに行動しなくて当たり前。アンフェアな扱いをされることも織り込み済み。「自分に一切の責任がある」と吹っ切れたときに、初めて現状に「対応」できるようになる。なぜなら、誰かに責任の一端を背負わせている間は、その部分に対して自分自身が行動を起こすことができないから。



実は、今回の座談会で学校の様子を聞き、私がニュージーランドで仕事を取る為に不利な材料がたくさんあることが判明した。正直、

「こんなに面倒な仕事をした俺にはなにもなしか。。。」

と思った。でも、そこで文句を言って終わりなら、今まで述べた理由で私にはエアマンシップが欠如しているということになる。どのみちどこかでフェイルするだろう。最近は少し目が曇っていたようだ。ポジションが欲しいなら作るしかないことはわかっていたはず。でも何か期待していた節がある。私はボランティアで仕事をしたのだしそれは自分の意志でやったことだ。下手に期待して裏切られた気分になっているほうがおかしいのだ。

一度NZ渡航計画は白紙に戻して、日本とニュージーランドのより詳細なアクションプランを立てることにした。何か邪魔が入ってもパイロットになるための道筋。基本的にこのブログでは私が持つ情報を全て公開しているけど、これだけは秘密。ゲームに参加するんだから、カードを見せてはいけない。


当たり前だけど「君には仕事ありません」って言われたときだれも責任とってはくれないのだ。


     2012.08.27 Monday
眠れなかったのには訳がある。

この記事にも書いたが、日本での有資格者を対象とした募集が始まり、複雑な気持ちになっていたところに、ジェットスター(NZ)のパイロットの友人がこんなことをいったのだった。


「I still think getting jet time is still more important. airline jobs always comes and goes so there's still a good chance for you to get a job in NZ if you have jet time. but i think it'll be harder to find a jet job as you get older, even if you have PR and speak perfect English.」


えええええそんな今更!!orz

ニュージーランドではコツコツゆっくりとフライトタイムをためていけばいつかチャンスはあるというつもりだったので、この友人が年齢を話題にしたことが意外だった。PRというのは永住権のことだ。永住権を持っていて完璧な英語をしゃべる人より、ジェットタイムを持っている方が、ジェットの仕事は見つけやすい。。。まぁ確かに当たり前のことだ。永住権を持っている英語をしゃべる人は、ニュージーランドにはたくさんいる。笑


ということで、もう一度日本の学校に行く道を再検討した。結論は、やはりニュージーランドでやることにした。何をぐだぐだと迷っているんだと思うかもしれない。でも、逆説的だが、ニュージーランドでやっていく覚悟を決める為に、今回の「大地震」は絶対に必要なことだった。もし今回日本での可能性を再検討していなかったら、ニュージーランドでやっていくことに支障が出たかもしれない。どうしてそういう結論になったのか、もし同じようなことを考えている人がいたら参考になるかもしれないので書き記しておく。



心がゆれたわけ
私の最終目標は、レシプロ機の教官ではない。ジェット機に乗りたい。


じゃぁ、その最終目標にダイレクトにたどり着くには、日本の方がいいんじゃないのか?


これが今回心が揺れたきっかけだった。そのジェットスターの友人から、さらに日本の某航空会社で訓練をしているパイロットの方を紹介してもらって話をきいた。その人も大体同じ意見だった。日本で飛んでいる方の意見はジェットスターの友人以上に年齢に関する危機感が強く、話を聞いていると焦るばかりだ。(実際にスカイマークは年齢制限を始めた。)


今年始めにかき集めた、学費の見積もりの情報や資金調達の資料を引っ張りだしてきて、また日本でやることを具体的に再度検討しはじめた。不思議なことに、日本で飛ぶことを考えると気持ちがどんどん憂鬱になっていく。なぜかはわからない。日本で飛びたくない訳ではない。大好きだったニュージーランドの空と同じくらい、祖国の空がどんな様子なのか、日本人として絶対に見ておきたいという気持ちは、その実、強い。石垣島の1500mの滑走路でMAX Performance Take offしてみたいし、レインボーブリッジを飛び越えてFinal Approachしてみたいし、戦時のパイロットが目標にしていた島を眼下に見ながら平和な空に感謝して飛んでいたい。

でも具体的に検討すればするほど、だめだ。お金が追いつかない。教育ローンの上限は大体どこも300万円だが、すぐにぽんぽん貸してくれる訳ではない。審査があって、個人の信用リスクにより金額が決まる。それでも、借金しようと思えばできるのかもしれない。(アコムとか?)実際にそうやった人はいるし、先日内定を勝ち取った先輩もいろいろなところから借りまくっていた。でも、私がそれをやるということは、親の老後の生活資金に手を突っ込むということだ。銀行で借金したとしても、連帯保証人に家族の名前を書いた時点で同じこと。事故って脚が吹っ飛んだあとに私がいくら自己破産を申請しても、連帯保証人は支払いを続けなければいけないのだ。



退路を断つということ。
よく考えた。私は何も消去法でニュージーランドを志望している訳ではない。教官は自分に合っていると感じているし(下手だったから下手な人を上手くすることはできるとおもうから)行ったからには最終目標であるジェットに行くまで飛び続ける。でも、その最終目標に対する最短距離が他にある可能性がちらつくので、本当に正しいのだろうか、といつまでもぐだぐだしてしまうのだ。だったらこの際、日本では訓練できない理由を「立証」して、自分に突きつけようと思った。今まで海外で成功した人というのは、「もう俺には海外しかない!!」と吹っ切れた人だった。多分、海外では途中で苦しくなったときに、今回のように日本が頭をよぎるのだろう。そこで吹っ切れていないと、続かないのだと思う。

実際にどう「立証」したか、具体的な数字ははまたの機会に書いてみるけど、先に書いたように、検討の結果家族が路頭に迷う可能性を残したまま「大丈夫だよ」と言う資格はないと結論づけたということだ。「大丈夫だよ」と、そうやって言ってみせることは、一見「それほどまでに日本で飛びたいんだ!」というやる気の表れみたいに見えるかもしれないけど、私にとってはそれは違う。実際、やってみたら大丈夫なのだろう。でも、辺りを良く見回すと、ほとんどの人が親類から全部か、かなりの額の援助をその余剰資金から受けているのだ。


私は、私の持っているカードで勝負する。さらば、日本の空。




     2012.06.19 Tuesday
自分の目の前にまな板と食材があって、料理ができたらそれを回転寿司みたいなベルトコンベアにのせる。厨房は体育館みたいに広くて、自分の他にもたくさんの人が流し台の前に陣取り、まな板に置かれた食材に向かっている。

彼らの行動はまちまちだ。

包丁で刻み出す者、コンロに火をかける者、二人で作業する者、大量の食材を買い込む者、流し台の排水パイプに開いた穴を直している者、床に落ちた材料を洗う者、料理が出来る前に試食する者、すでに二品目に取り掛かっている者。。。皆それぞれだが、異様に目立つ者がいる。それも複数。それは、腕組みをして食材を凝視している者だ。

よく見ると、彼らの流し台には、ひとつだけ共通していることがあった。コンロも流しも水道も排水口も調理器具も全て揃っているのだが、ただひとつ、時計がない。いや、正確には、あるのだが機能していない。体を動かしている人の厨房の時計は、赤いデジタル表示で時間が表示されている。現在時刻ではなく、カウントダウン表示だ。どうやら、これがゼロになったら、流し台を次の人に明け渡し、厨房から出て行かなければならないようだ。料理ができていようがいまいが関係ない。実際、かなりの量の食材が、ベルトコンベアにのってどこかへ運ばれていく。傷すらついていないものもある。

一方で、立派な料理になったものも確かにある。物質的には同じだが、両者は明らかに異なる表現だ。ただし、いい料理を作ったからといって、時間を超えて厨房に留まれるわけではない。時間が来たら、必ず退場する。その点において、表現に優劣があるわけではない。ただ「違う」だけ。

腕組をしている人たちは、まず最初に時計のスイッチをいれるという作業を忘れてしまった人たちだ。彼らは、あとどのくらいの時間が残っているかわからず、まずはじっくり検討して、どんな料理を作ろうか考えているようだ。周りの人の料理もかなり気になるようで、キョロキョロしてはため息をついている。もしかしたら考えることに夢中になり、時間が来たら厨房から退場しなければならないということを忘れているのかもしれない。

ふと目の前の自分の時計を見る。幸い、時計はついていた。残り時間は腕組をしているほど余裕があるとは言えなそうだ。まな板の上の野菜のはむいてあって、コンロにかけた鍋の湯がもう少しで沸騰するところだった。そうだ、私もついさっき腕組みをほどいて、やっとここまでやったんだった。私は、自分の料理が完成できずに終わることは望んでいない。そして、周りを見まわしている間は、私の料理は1ミクロンも前進しない。

さっさと自分の作業に戻らねば。





     2012.06.16 Saturday
フライトグッズといえば、スリッパとか仮眠マスクとかブランケットとか、キャビンで快適に過ごすためのものを思い浮かべるかもしれぬが、今回は小型機の訓練をするパイロットに便利なグッズを紹介してみたい。そんなの参考になる人がどれだけいるかは知りませんが。飛行機の雑誌なんかにたまに出てくる「パイロットの七つ道具」みたいなやつじゃなくて、実際に訓練した人じゃないとわからない、個人的にこれがあったら!と思ったもの。


1.PILOT社のフリクションシリーズ ボールペン

書いた文字が消せるペン。もって行けばよかったなー。PILOT社だし。




NZのチャート(航空用地図)は、ラミネートされていないただの紙なので、書き込みには基本的に鉛筆を使う。だが、鉛筆は地図上で見づらい。また、一回のフライトが終わるごとに消さなければいけないので、面倒だし、消しゴムを使うと地図がすぐにぼろぼろになってしまう。



そういうわけで、私は地図に自分でラミネートをして使っていた。近所のWarehouseでジュラシールという透明なラミネートシートを買ってきて、学校のテーブルで貼った。地図は大きいので、気泡が入らないようにするには体全体を使って少しずつ慎重に貼っていかなければならない。かなり重労働な上に、人に見られるとぎょっとされる。なにしろ、大の男がテーブルに広げた地図の上で鞠を見つけた猫のようにごろごろ転がっているのだ。

こうした努力のおかげで油性ペンで地図に書き込みができるようになり快適だった。唯一の問題は、油性ペンはキャップをはずした状態で放置できないので、ペンを使う際に両手を使わなければならないこと。また、油性ペンのにおいは閉鎖空間だと気分が悪くなる可能性がある。自分は慣れればいいが、お客さんを乗せたら問題になってくるかもしれない。

フリクションペンがあれば、消すときに強い摩擦は必要ないので地図はぼろぼろになりにくい。ノック式なので、書くときも片手でいける。ただ、インクが若干水っぽいので、書き味が薄くなるところが気になるのと、インク切れになったときに現地で補充できないのがネックになるか。


2.PILOT社のフリクションシリーズ 蛍光ペン
同じシリーズだが、こちらは蛍光ペン。




MAKIがこれを持っていた。IFRの訓練になったときに使っていた。IFRになると、今までとは違うチャート(地図)を使うようになる。IFRでは、安全と効率のために飛行機が飛ぶルートが電波の道で厳密に決まっているため、地図にはすでにルートが書き込まれている。黒い線がそれだ。



IFRというのはだから地図の準備は簡単だ。くもの巣のように引かれた白地に黒の線のどれかを選んで、蛍光ペンで線を引けばいい。このペンなら、あとから消せるので重宝するはず。ただ、やはりインクの減りが早いと感じる。NZの文房具の質は極悪(笑)なので次にいくときは大量にストックを持っていくつもりだ。


3.巻き取りコード付キーホルダー(?)
時々持っている人はいるが、NZはおろか、日本でもなかなかない。



これはビレッジバンガードで500円で売っていた。コクピットの中ではペンを落としたくないので、首からストラップで提げるのだが、そのままでは文字を書くときに短すぎる。十分な長さにすれば、無様に垂れ下がってしまいかっこよくない。そこでこいつ。書くときだけ引き出せ、自動的に巻き取られるので使い勝手はよいだろう。今は会社のIDを腰からぶら下げている。いい感じ。


4.小型時計
飛行機に飛ばすにあたって、時計は重要だ。もっとも重要な役割は、燃料を管理することだ。今何時かわからなかったら、あとどのくらいで燃料が切れるかわからなくなる。(新しいコクピットの飛行機は除く。)また、SARTIMEという遭難に備えたレスキューサービスにかかわる時間の管理も重要だ。もちろん、出発や到着時刻を知るためでもある。法律にも「時間がわかる装備をもっていきなさい」と明記されており、時間がわからない状態で飛ぶことは違法になる。そんなに重要な時計だから、パイロットは普通、腕時計をしている。しかもいいやつを。(ちっ)法律には何も、「腕時計」と書かれているわけではないので、懐中時計でも目覚まし時計でも時間がわかればいい。そこでこんなの。




実は腕時計は、コクピット内では意外と使いづらい。だいたい、時間を確認するために腕を動かさなければいけないのがいけない。離陸したときなど、手は操縦桿とスロットルから離したくないことは多い。悪いことに、そういうときに時間を確認する必要があったりする。しぶしぶ腕を上げても、袖口に隠れてしまってることが多く見づらいことこの上ない。笑



時計は腕じゃなくて目玉を動かしてみたほうが楽だろう。そこで、シンプルな小型時計を見やすいところに設置すれば、トマホークをグラスコクピット化できる。(嘘です。)今日偶然見つけて買ってみたのだが、LCDは正面を向いていないと見づらくなった。うーん、ちょっと期待はずれ。腕時計を操縦桿にくくりつけたほうが良かったかな。


5.フライトコンピュータの滑り止め
これは先輩に教えてもらったもの。風を計算する面の、独特のまわしづらさを克服するために、透明なラバーを東西南北の位置に貼る。動かしやすくなる。



これは確か、トイレのふたがタンクに当たって破損しないようにする衝撃緩衝材だった。透明なものは100均には売っておらず、ホームセンターで購入。また、真ん中の風速を入れる回転定規の先端にテープを重ねて貼り、摩擦を調節している。位置を決めた後、勝手に動かないようにするため。


6.チャートをはさむパックン的なこいつ
ちょこざいなしゃくれ顔をしているが、仕事はします。。。


吸盤になっている一端を窓にくっつけて、次の空港に降りるための情報が書かれたチャートをはさむ。教官からもらったものだ。



こいつのすごいところは、そのしゃくれ顔にある。ここに書類を入れると、中にあるゴムがうまく紙をくわえ込む。その後、すばやく力をかければ引き出せる。つまり、書類を挟むのに片手しか要しないということ。機内にはクリップなどがついていることもあるが、クリップを開き、書類を差し入れるには両手を使う必要がある。操縦桿から手を離したくないパイロットにとってはとてもありがたいアイテムだ。もともとパソコンで作業するときに、画面の横に書類をぶら下げておくためのオフィス用具。残念ながら日本では絶版らしい。


他にもあったら教えてください。


     2012.06.05 Tuesday
私の行っていた学校では、日本人スタッフが期ごとに卒業記念ビデオを作っている。(我々の期では作らなかった、ちょっと残念。)




これを、インド人が作ると、こうなる。



カメラはブレブレで、(ってか2:45!!音楽パクってるだろ! 笑) 編集も何もあったものではないが、学校を隅から隅まで歩いているので様子はよく分かる。雑だが、学校を紹介するという目的は完璧に達成している。笑 なんだか、日本人とインド人のフライトの違いがそのまま現れているようで興味深い。

・日本は細部をきっちり、美しくやる。それも、みんなでやる。職人気質。その代わり、緊張しいで細部にこだわりすぎて大事なことを忘れることがある、英語が苦手、かたまって閉鎖的になることがあり、コミュニケーションは受動的。

・インド人(Kiwiもそうだが)は考え方が大雑把で、細かいことに気が回らない。最低限の重要なことは何かはわかっている。勉強する人とそうでない人の落差がものすごい。でも、英語は自信満々。コミュニケーションは能動的でマシンガンのようにしゃべる。

足して2で割るとちょうど良い。

最後に、インド人の学校へのインタビューが。彼らの発音には、慣れるまで時間がかかった。今では全部分かってしまう自分が怖い。笑



このビデオをみて、どう思うだろうか。顔が大写しで発音もすごくなまっていて日本人の「空気」で見ると滑稽に見えるかもしれない。だが、「学校についてどう思う?」と聞かれて、即座に、カメラの前で、彼らと同じように話せないのなら、あるいは、「空気」を気にして自意識過剰になり、大写しになった顔についている口はピクリとも動かないのなら、笑われるのはむしろこちらのほうだ。

彼らがEnglish proficiency test(航空英語証明)という、日本人の弱点である試験を楽にLevel 6で通過していくのは、こうやって話を振られてスッと話せるからだ。Level 6というのは、飛行機を飛ばすに当たって英語の運用能力がネイティブ並と判断されたということ。有効期限は無期限。Level 5で6年、Level 4で3年(だったっけ?)因みに私はLevel 5。英語圏で教官になることだし、私も早く6を取りたい。そのためには、アウトプットの訓練をしなきゃなと思って最近色々やっている。それについてはまた今度。

日本人の学生さんたちも、こうやってアウトプットの機会を強制的に作れば、英語の運用力は飛躍的に上がると思うんだけどなぁ。学校紹介インタビュー、英語でやってみたらどうだろう。








     2012.06.01 Friday
戦略の不在は不安を呼ぶ

戦略はどこで負けるかを考えて、戦術は局面でどうやって勝つかを考える。私は帰国して以来、日本でやるか、NZでやるか、決めかねてウロウロウロウロしてたわけだが、先日NZでやる!と決めたことで、心が極(き)まった。おかげで今は、電車に乗っていても不安になることは少なくなった。肉を切らせて骨を断つ、というけれど、どこの肉を切らせるのかを決めることが戦略を考えることなんだと思う。

日本でやるとしたら

私はNZでやることを決めたが、もし日本でやるとしていたら、どうなるか、ちょっと想定してみよう。

私は日本の学校に行けばパイロットになれる勝算は大いにあると感じていた。なぜなら、同じ訓練をした先輩がラインに就職して活躍していること、飛行学校で訓練中の先輩も、順調にラインの推薦制度にコマを進めていること、今年から訓練を始めた同期も、着実に日本の訓練を消化している様子を聞いているからだ。もちろん、彼らは彼らなりに個人的な努力を重ねているし、同じ訓練をしたから合格できるというのは論理の飛躍だけど、少なくとも私は彼らと同じだけの努力をする熱意と根気と方法を知っている。

ジェットスターの説明会でも感じたとおり、日本には沢山ラインパイロットがいて、皆自分の生活のために良い条件の雇用はないかと目を光らせている。私たちより経験もあるし、人が集まれば倍率も高くなる。狭き門だ。でも、そこは日本という特殊条件を逆手に取ることが出来る。海外では500時間弱の飛行経験でエアラインのF/Oに応募できるところなんてない。

日本で一番規模の大きな飛行学校に行って、まずその中でベストを尽くせば、その中でも上位にくい込むことは(それを「簡単だ」というつもりはない。先輩達もそれぞれのプレッシャーを抱えてぎりぎりのところでやっている。念為。)出来ないわけではない。そうして良い評価を得た上で就職戦線に並べば、数百倍の倍率が数十倍くらいにはなるだろう。

そして、実際の面接やシミュレータなどで採用試験を受けるときは、たとえ数百人という応募があっても、その全てをいちどきに面接するのは物理的に不可能だから、集団面接でも、せいぜい5、6人だ。この位の人数なら、手に負える。つまり、たくさん応募者がいても、局面局面でベストを尽くして各個撃破していけばいい。

戦略と戦術

戦略はどこで負けるかを考え、戦術は局面でいかに勝つかを考えるといった。では、今述べた日本でのやり方について、それぞれなにがどう当てはまるだろうか。この作戦に、戦略はあるのだろうか。

まず、作戦を立案する前の段階、つまり日本を選ぶという選択をすることそのものが、私にとって戦略的発案になる。なぜなら、NZを捨てるという選択をしているから。NZで飛ぶということは私にとってすごく魅力的だから、それをあきらめるということは、肉を切らせている、つまり負けているということだ。その代わり、日本で良い給料でジェット機を飛ばすという「骨」を断ちに行く。

また、日本の飛行学校に行くというのも負けどころである。フリーランチはない。これには膨大な訓練費がかかる。お金を払う、という負け。私は、どうして日本の訓練はセスナでも1時間で5万円(NZではチェロキーは12000円くらい)などと法外な値段がするのだろうとずっと疑問だった。飛行機のオペレーションコストが高いから、というのは答えになっていない。知りたいのは、飛行機を飛ばすという質的に違いのないサービスに、なぜこんなに違いが出るのかということだ。最近の私の見解は、これは、海外なら膨大な時間を掛けてゆっくりとPICの経験(恐い経験も楽しい経験も)を積み、やっと得られる資格を「超短期間で手に入れるための値段」なのだと思った。でもその代わりに得るのは、世界では類を見ないラインパイロットへの切符。ラインパイロットに早く到達するという「骨」を断つために、金という「肉」を切らせるのだ。

ここまで決めて、やっと戦術に頭を移すことが出来る。採用試験が始まったら、負けは許されない。ここにおいては戦略など不要、四の五の考えずにベストを尽くす。絶対に負けられない戦いだ。局面を各個撃破していくには、当然それ相応の実力(主にフライトスキル、コミュニケーションスキル)が必要で、それを学校で身につけるのだ。就職戦線の枠に食い込むためには、日本の学校に入る時点で自分の強みや弱みを把握できていないと、海外ではありえないこの特殊制度の旨味を活かせない。先輩や同期たちは、その点に限って心配はない。

結局、私は最初の選択を仕切りなおして、NZに行くことが自分にとって「骨」だと気づいた。それでもやることは変わらない。皆、問題なく日本でラインパイロットを勝ち取っていくだろう、応援しています!









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2018エアライン

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