<< October 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 海外でパイロットになること、日本でパイロットになること | main | そこ、グラグラしないように。 >>
     2019.01.29 Tuesday

一定期間更新がないため広告を表示しています


     2011.08.17 Wednesday
当校では、初等教育を重視しています。

飛行機の訓練は、最初が肝心です。

後になって変な癖がつかないように!!


・・・民間の飛行学校の広告で、よく見るうたい文句である。


初等教育は重要だし、変な癖をつけないことは肝心なのだが、私が訓練学校を選んでいたときに再三目にしたこの科白は、しかし、私を混乱させた。「初等教育が重要じゃない」という意見が間違っていることはわかる。でも、どういう訓練がダメな初等教育で、どういう訓練がよいのか、変な癖とは何なのか、どこの学校の教官も、私の腑に落ちる説明をしてくれなかったからだ。


今日は、この点について150時間飛んだ自分の視点から、説明してみたいと思う。


さて、このアイディアを象徴するような文章が、日本の航空大学校のHPに載っていた。以下に引用する。

「三つ子の魂百までの喩えのとおり、操縦訓練の初期段階(中略)からこの安全運航に対するプロフェッショナル・スピリットをしっかりと身につけなければならないと考えています。」

航空大学HP 航空大学校について 使命・理念の背景 より引用

「プロフェッショナル・スピリット」を身に着けるにあたり、重要なのが「質の高い」「適切な」初等教育というわけだ。大多数の民間飛行学校も、同じようなことをうたっている。私の学校もそうだし、教官もそう言っている。

訓練校を選んでいた当時の私はこれをきいて、

「日本人が日本のラインで働くことを念頭にやる訓練と言うのは、アメリカ人やkiwiがやる訓練と初めから(だって初等教育から違うんでしょ)コンセプトが違って、なんだかよくわからないが『質の高い』訓練をするらしい。。。」

そんな風に思っていた。MADE IN JAPANはすげーんだと。

そうやって鼻息荒く Effect of controlという最初の科目に臨んだのだが、これがまったくの見当違い。なにがなんだかよくわからず、むしろkiwiのほうがさっさとこつをつかんで訓練が進んでいる。どうなっているんだ、日本人の飛ばし方は、世界一正確で、ビシッと飛ばせるはずじゃなかったのか。「より適切な」初等教育を受けているのにもかかわらず、「普通の」初等教育を受けているkiwiより遅れている、ということはつまり、私が個人的に訓練についていけていないと、そういうことではないのか。驚いたことに、私は、訓練の最初からいきなりスランプになったのだ。


150時間飛んだ今から思うと、ちゃんちゃらおかしい。


いいですか。(過去の私に向け 笑)


初等教育、というのは、PPLの最初のほうだけではない。私は、今だって初等教育の真っ只中にいる。これから進んでいく大型の飛行機に比べたら、蚊みたいな速度と格好をしたトマホークで、やっとXCの目処がついたところだし、IFRだって決められたことをやるだけで精一杯だ。三つ子の魂を語るなら、私はまだ1.5歳くらいであり、赤熱した鉄である。

私達は、これから生涯にわたってテスト・チェックを繰り返していく。この「試験」に受かるためには、練習が必要だ。それを訓練と呼ぶわけだが、ここに落とし穴があると感じている。どういうことかというと、訓練を練習だけにとどめてはいけない、ということだ。

試験に受かるための訓練が、易しいというわけではない。試験というのは、日本だろうがアメリカだろうがNZだろうが、骨が折れる。完遂するには、反復練習しか方法がない。逆を言えば、試験に受かりたいなら、決められた手順をひたすら反復練習すればいい。


たとえば、机に紙を置いて「こんにちは」と正確に紙面に書く、というテストがあったとしよう。つまり、紙とペンが2段目引出しに入っていることを頭に入れて、2段目の引き出しをあけて、紙を机上に置き、右手でペンを持って、左手で紙を押さえて、「こんにちは」と書き、それがちゃんと「こんにちは」と読めれば合格。「質の悪い訓練」というのは、この一連の動作をひたすら反復して誰よりも正確に、早く、動作を完了できるようにする、そういう練習に偏ることだ。そのうち脳みそすら使わず、脊髄反射だけで手が動くようになるかもしれない。


でも、もしペンのインクが切れていたらどうしよう?

紙が破れていたら?

漢字で書けという指定があったら?

紙が黒でペンも黒で書いても字が見えなかったら?

間違えて「こんにちわ」と書いてしまったら?

書いている途中に蚊が腕にとまったら?

居眠りして紙の上に涎がたれてしまったら?

・・・


つまり「判断」を要する場面に出くわしたら、どうするか。どこの引き出しに何が入っているのか、引き出しの位置は全部覚えているか、いやまて、引出しの中に、物を入れた記憶が、そもそもあるのか。いつもいつも2段目に白い紙と黒いペンが入っていると考えて、そればっか練習していたら、それはそれは薄っぺらなパイロットになってしまうことだろう。それでも試験には多分、合格できるだろうけれど。

だからと言って、作業を練習することが必要ないといっているのでは、もちろんない。作業(PROCEDURE)と判断(DECISION MAKING)は両輪だ。作業は、すべての内容を網羅した一覧表を作り、それを上から順に繰り返し練習する。膨大な量だが、練習自体は決められたことを繰り返すだけなので単純で、やればやるほどうまくなる。だが、判断の練習と言うのはケーススタディを個別に研究するしか方法がなく、しかもそこで得た判断の材料は、いつ使うかわからない。引退するまで引出しの中から出さないかもしれない。結果が見えづらい。さらに悪いことに、これをやらなくても作業のほうを練習していれば「サボっている」という感覚がないので、一生懸命やる人ほど、応用が利かない反復練習に明け暮れる。

質の高い、適切な、初頭訓練と言うのは、膨大な作業を効率よく(本当は効率よく、なんてのはない。サボらないでやるだけだ。)運動神経にしみこませ、人や自分の経験を、時に(試験のためには)無駄ともとれるような範囲に及んで研究し、引き出しにスペアインクやセロハンテープや辞書や42色のクレヨンや修正液や虫除けスプレーやハンカチを忍ばせておくこと。そういう訓練のことを言うのではないだろうか。

判断のための研究に必要なことは、まずはそれが大事だと学生自身が気づくこと、自分の教官が四次元ポケットを持っていること。そして、教官自身も出てくる道具のメンテを怠らないこと。もらった道具が壊れていたら、意味がないからだ。

自分も間違えることもある、と考えている教官は、経験の上にあぐらをかいている教官よりパイロットとして誠実だ。私の学校の教官(日本人もKIWIも)は、皆そのバランスがよく取れている。生徒に不安は絶対に見せないが、同時に発展途上の自分を認めている。わからないことは、こちらを真っ向から見返して「わからない」とはっきり言い放ってくれる。笑 それとて、間違えたことを教えられるより数倍いい。教官達のそういう姿勢は、学生にも伝播し、ここに「適切な」初等教育が完成する。

私が今、こうやって自分の訓練を振り返ってよかったこと、よくなかったことを仕分けして、アイディアを更新していること、つまり、この文章を書いていることそのものが、「適切な」訓練を受けている証左になるとおもうのだが、どうだろう。
     2019.01.29 Tuesday



コメント
しらとさん>
コメントありがとうございます。そうですね、昔は、雲の上の景色が日常という人と言うのは、どういう精神でいるんだろうと感じていましたが、今はいたって普通です。しいて言えば、耳抜きがうまくなりました。

航空大学校や他校でがんばっている人たちは、ライバルでもありますが、同じ課題に同じように取り組んでいるはずなので敬意をもっています。私は英語ベースでやっているので、英語という分野では確かに彼らより秀でているかもしれませんが、日本の空の詳細に関しては、現時点で彼らにはかなわないでしょう。基本は変わらないので、NZで学んだことを、日本にどう応用するか、それがうまくできて初めて英語というプラスアルファを持ってくることができると思います。

ここでスロットル絞ったらすぐに落っこちてしまうと思います。笑
  • Atsusuke
  • 2011.08.29 Monday 19:39
こんにちは。

前回は航空大学の事故に関して詳細な解説ありがとうございます。

もう150時間も飛んでいるのですね。
私は自分の運転で空を飛んだこともありませんので、まさしく「非日常」なことですが、Atsusuke さんにとっては空を飛ぶことは「日常」になりつつあるのでしょうか?

パイロットの求人については門外漢なので詳しくはわかりませんが、航空大学校と同レベルのトレーニングを積んできて、彼らに負けていない技量を持っていることをアピールできればなんだか受かってしまうように感じるのは門外漢ゆえの考えなのでしょうか?
また、日本語ベースでトレーニングや日常を過ごしてきた航空大学校の人たちと比べれば、Atsusuke さんの語学力は群を抜いていると思いますので、負ける気はしないんですよね。(笑)
  • しらと
  • 2011.08.26 Friday 20:33
toshiyaさん>
いやー、なんだか涙が出そうになりますね。笑
将来のことを考えれば、本当はいつだって不安ですが、四の五の言う前にそれを潰すために具体的な行動に出ることでしか、結果を出すことはできないと思います。怖いけど進むしかないんですよね。

そして、結果を出すことを試験に合格することだと考えれば、それはそれはビールがうまいでしょうけれども、それだけではダメだと言うこともわかってきました。冗談ではなく、人の命を預かる、ということがどういうことなのか、そのために普段から何をしておくべきなのか、少しずつわかってきたように感じます。
  • Atsusuke
  • 2011.08.25 Thursday 17:02
3000時間飛んで改めて確信したこと。
自分の成長を信じて頑張ることが明日へつながるということ。かっこ良いことばかり考えて、地道な積み重ねをおろそかにすると、あとから倍になってツケがかえってくるということ。
飛行機を上手に操作すること「だけ」がパイロットの仕事ではないということ。人の命を預かるしごとだということ。
150時間のときと、いまの自分がキチンとつながっているということ。
やっぱり、僕は飛ぶことが好きだということ。
がんばれ!
  • toshiya
  • 2011.08.24 Wednesday 23:30
コメントする








 
この記事のトラックバックURL
トラックバック
スポンサードリンク

プロフィール
2010パイロット訓練
2013インストラクター
2018エアライン

命を削って、キャリアを掴む。

ブログ移行しました。
2018年9月から、note.muに移行しました。詳しくは、最後の記事の本文を参照ください。

おすすめリンク先。
  • » ■うさこの日々。
  • » ■IAANZ(フライトスクール 日本語版)
  • » ■IAANZ(フライトスクール)
  • » ■海外でパイロットへの道 IN NEW ZEALAND
  • » ■無料留学エージェントのサザンクロス
  • » ■手数料を節約して便利に海外送金する方法
  • » ■NZ大好き.com
  • » ■点描-brog-
  • » ■BLOG クライストチャーチ最高!&NZ生活 / 生活情報
  • » ■鳳文書林(航空図書 航空図 航空用品)
  • » ■国土交通省
  • » ■気象庁
  • » ■無料ブログ JUGEM
  • » ■ニュージーランドアカデミー

  • PR
    ランキング参加中
    にほんブログ村 転職キャリアブログ 20代の転職・転職活動へ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 海外生活ブログへ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 海外生活ブログ ニュージーランド情報へ
    にほんブログ村
    JUGEM PLUS