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     2019.01.29 Tuesday

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     2015.04.01 Wednesday
学生に自分で目標を設定し、問題解決を促すのなら、教官はそれを自分が邪魔していないか常に慎重に自問していなければならない。

たとえば、

Too High Too Fast
Too High Too Slow
Too Low Too Fast
Too Low Too Slow

これはよく言われるFaulty approachesというやつで、着陸の最終段階に入った飛行機がRWYに正対し、滑り台の上を降りてくるようにRWYに向かって降下していくときに、よく問題になる。飛行機はその滑り台を決まった角度とスピードで降りてこなければならないのだが、パイロットは飛行機の持つ位置エネルギーと運動エネルギーを同時にコントロールしなければならないため、経験が浅いうちはとても難しい。角度とスピードの状態を4パターンに分けたのが上記の表現というわけだ。

パイロットは角度とスピードをパワーと姿勢でコントロールする。例えば二番目の状況、つまり「高くて遅い」場合、スピードだけ見て「運動エネルギーが足りないんだ」と判断してしまうとパワーを増やしてしまう。でも、よく見ると自分は高い位置にいるのだから、姿勢を下げることで位置エネルギーを運動エネルギーに変換すれば、わざわざパワーを動かさなくていい。車で言えば、急な下り坂で一時的に減ったスピードをアクセルを吹かして増速しようとするようなもの。その後すぐにブレーキを踏むことは目に見えている。無駄な動き。

このように、置かれた状態によって何を動かして修正するのかは決まっている。間違ったやり方でやっていると、学生はブリーフィングで上記の4つのパターンを示されて、適切な方法で修正しろよ、と教えられる。


問題はここからだ
さて、このアドバイスを受けた学生は、次のフライトでは当然、ずれたらコントロールを動かして修正を試みるだろう。言われた通りコントロールを動かしてみるのだが、なかなか上手く行かない。スピードと高度が一向に落ち着かない。この学生をスランプに陥れるのは簡単で、「そもそもずらすな。」と言えばいい。学生は、ずれたらこうやって直せ、と言われたのに、それをやるなと言われて混乱する。あるいは「修正が遅すぎる」でも、「センターラインに乗っていない」でもいい。

正しいやり方で修正しろ、と言うくせに、それを直そうとしてコントロールとパワーを動かしたら動かすな、と言われる。あるいは、修正が遅いだのセンターラインだのと他の項目について横やりが入る。前者はダブルバインドになるし、後者は今やったやり方の評価が宙ぶらりんなので、結局何をどう動かしていいのか分からない。そしてフライト後のブリーフィングでそううったえると、

「ケースバイケースだし、そもそもお前がずらすのが悪い」

なんてわけのわからん責任放棄の後出しじゃんけんが出てくる。

これは、教官が評価軸をすり替えたことによって発生した混乱である。ズラした場合の修正の仕方を教えたのだから、次の評価は「ズラした場合に」修正が「適切かどうか」を評価するべきだ。そうやってひとつひとつつぶしていくのが上達の近道だし、教官の腕だ。

でも、たいがいの教官は(私を含むたいがいの人がそうであるように)そのときの思いつきと印象に対して散発的にコメントをするにとどまる。上記の評価軸を堅持して、一つ一つステップアップさせる為のガイドが完璧に出来る教官は、残念ながら見たことがない。それもそのはず、教官といえども教える為の専門教育は受けていない。気休め程度の「教育」コースはあるけれど、実際にやっていることは自分のパイロットとしての感覚を隣に座ったパイロット(学生)のそれとすりあわせて、違和感を感じたところを指摘しているのが関の山。経験のある教官とてほとんどの人が「この兆候がでたらこうなる」という観天望気的な経験則をよりどころにしているだけで、厳密な意味で「教育サイクル」を回している人はほとんどいない。つまり、

課題の提示
課題の実行
結果の評価
次回の課題設定

というサイクルである。


何の話だったっけ
先ほどのスピードと角度の話に戻れば、たとえ修正方法が適切な操作で出来るようになっても、飛行時間が少ないために、修正量はオーバーコントロールになりがちなので、飛行機は安定しない。でも、「飛行機が安定していない」という結果をもって「ズラしちゃダメ」と言ってはいけない。なぜなら、ここでの評価はあくまで「ずれた場合に」その修正のために動かしたものが「適切かどうか」(遅いというだけで高さがあるのにパワー入れたりしていないかなど)を見るべきだから。

それができているのなら、いくら飛行機がグラグラでも課題に対しては「それでいい」と言わなければいけない。教官としては、これはとても難しい。グラグラしているのに肯定しなければいけないからだが、面倒でもこのプロセスを通さないと学生はスランプに陥る。

オーバーコントロールになるのは頭ではなく身体の問題。ただ、経験が少ないから身体の運動神経が追いついていないだけ。つまり、ずれの検知レベルが荒い、検知したずれに適切なリード量が分からない、リード量がわかっても、手が動かない、というようなこと。これが「次の課題」になる。

これらを向上させるには、「練習」しかない。そこに明確に意識を併せて「練習」時間を設ける。練習が終わって初めて、

「そもそもずらさなければこんなテクニックを発揮することもないのだよ」とニヤついて言うことができる。もちろん、「ずれないデモ」とセットでだ。それが「ひとつひとつやる」ということだ。

学生があることがらを練習しようとしているときに、それと同じものを教官が見ていないと、学生は練習に集中できないので上手くならない。フルストップ毎に「次はこうやってみよう」と合意をとり、正確に評価する。ピッチの修正を勉強しようとしているときに、センターラインのことを評価してはいけない。それは次以降の課題にする。

また、無駄にいくつも失敗させないように、場合によってはあらかじめ上手くいくやり方を教える必要がある。DWで減速したらTrim 2.5回転とか、Speed (DW) - Height (Base) - Centreline (Final) の漸次処理でファイナルで自動的にずれがない状態にしむけるとか。

最後に、教官はあらかじめ合意を取る事項のリストが頭に入っていて、どれをどう直せば完成するのかグランドデザインがないと、行き当たりばったりになって学生をスランプに追い込んでしまう。

だから学生は、教官がべらべらしゃべり出したり、そもそも論を語り出したら眉唾で聞いていた方がいい。それは教官自身がゴールへの道筋がわかっていないということのサインなのだ。えぇ、もちろん全部私のことです。ガーッ。
     2019.01.29 Tuesday



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