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     2016.07.15 Friday
先日、上級インストラクター資格のB-category instructor ratingの試験を終え、無事に合格した。



C-catも大変だったが、B-catも大変だった。Cはフィジカルに、Bはメンタル的にタフだった。というのも、実は一度試験を受けて落としてしまい、後がない中での受験だったのだ。今回はそのへんのことを書こうと思う。


数ヶ月前。一度目の試験を受けた。B-cat要件の倍以上のフライトタイムとなり、自分より経験の少ないKiwiもサクサク受かっていた。みんな「C-Catの焼き直しに毛が生えたくらいだよ」と言っていて、まさか落ちるとは思っていなかった。

で、落ちた。orz

改めて感じたのは、試験というのはナマモノだってこと。一発勝負。やれ、と言われてできなかったら、さくっと落ちる。仕事で学生に偉そうなことばかり言って、肝心の教官が試験に通らなかったら世話ない。「簡単な試験」なんてものはないのだ。ぶっこいていると、足元をすくわれる。

2度目の試験、これを落としたらそこでキャリアは終わりだ。前日の緊張度はものすごかった。でもそれは意図してやったところもある。緊張のピークを前日に持ってこようとしたのだ。落ち込むネタには事欠かなかった。前日のCFIとのトレーニングフライトでも「学生みたいなミスしやがって」「今までお前がやってきたトレーニングが間違っていたんじゃないのか」「数字に頼りすぎて、感覚をおろそかにしてきたツケが回ってきたな」「同じレベルの連中はもっとうまいぞ」などと、カッターナイフで心臓の壁を外側からスライスしていくような言葉の数々を軽いリズムでいただいていたからだ。orz

今回本当に厄介だったのが、学生に対してはできることが、トレーニングで見せられなかったこと。自分より経験のある人を隣に乗せると、無意識にお伺いをたてる心持ちになるようで、判断が鈍る。自分のやりたいようにやればいいだけなのに、なぜか急いだり、焦ったりしてどんどん自分を追い込んでいってしまうのだ。畳の縁を歩くのと、同じ幅の板の上をを50階建てのビルの間で歩こうとするのは、内容としては同じだが、成功率には大きな差が出るだろう。

1度目を落としたのも同じ感じだった。少しずらした時に隣のじいさんが吠えて、たったそれだけのことでペースを持ってかれた。PICを渡してはいけないと理屈で理解していても、体がハマるのだ。緊張し、体が固くなり、飛行機の上下動を体性感覚(Seat of Pants)でキャッチできなくなる。頭のフォーカスがコクピットの中に移っていく。外のモニタリングを無意識のうちにおろそかにしてしまい、風の強い日に取り返しのつかないところに流されたりする。無意識に、というのが曲者だ。隣が騒ぎ出し、思考が阻害され、フライトが破綻する。まいったな、これは根が深いぞと。

解決策は、気にしないことと、人に相談すること。

いろいろ気にしないことにした。とは言っても、皆がさくさくと受かる「簡単な」試験に合格できないってことは、何かが根本的に足りないんじゃないだろうかとか、自分にはもうこれ以上は無理なんじゃないか、せいぜいC-cat止まりってことかなど、そういう自己否定の思考はどうしても生まれてしまう。そういうふうに考えるな、といわれても、ふとした時にまるでアドベクションフォグのように流れ込んでくる。止められないので、それすら放っておくことにした。人と比べてもしょうがないし、これは自分との戦いなので、そうやって浮かんでは消える思考を日々傍観していた。気にしても仕方ない。落ち込む、ということもひっくるめて了承することにしたのだ。

で、ここまではまぁいつもと同じと言えば同じ。自分の心をコントロールしようとあの手この手をつくすのだが、ここからが今までの私とは違う。いろいろな人に、弱音を吐いて回った。意図的に。今までは、強がりとカラ元気と気合だけでやってきたのだが、今までのやり方でうまくいかないので、何か変えないといけないと思ったのだ。一見、情けないことのように思えるが、人に弱みを見せることの方が、勇気がいることだ。そして、その見返りも大きい。

人に話すと、みんな色々言ってくれる。「他人ごと」の意見だから「リラックスすれば大丈夫だよ」みたいな意見が多いが、その中にたまに、自分では気付けなかった視点が見つかることがあるのだ。プロシージャ中に、外ではなく、必要以上にコクピットの中に視点と意識が向き、それが外部のモニタリングをおろそかにし、自分の置かれている状況を客観的に把握できなくなっているということは、同僚のインストラクターとディスカッションをしている時に発見した。緊張のピークを前日に持って行くやり方は、エアラインパイロットの師匠が言っていた。自分の実力がないわけではなく「実力を出すための空間作り」に失敗しているのだと気付いたのは、師匠のフライトをオブザーブする機会を得たことで気がつくことができた。全て自分でやろうとして、隣のパイロットがお荷物になったフライトは、破綻する可能性が高い。毎晩飯を食いながら妻にも相談。親身になって聞いてくれた。かたじけない。

自分が無意識に、つまり認識の外でやっていることは、自分の頭だけで治すことはできない。誰かに鏡になってもらうことで、初めて発覚するのだ。本番中は、ひたすら外に意識を向け、試験官と目を合わせてコミュニケーションをとり、リラックスして飛行機を飛ばすことに意識を向けた。体の柔らかさや声の調子をモニターして、自分の実力が出ていることを確認しながら注意深くフライトを組み立てていった。仕事をしながら、退職するまで安定してチェックに受かり続けなければならないので、今回の経験は本当に役に立った。皆にはただの簡単なC-Catの焼き直しかもしれないが、私にとっては多くを学んだ大事な試験だった。

いやー。真面目なこと書いてるねー。さて、ビールはどこかなと。
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