<< July 2011 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
     2023.10.29 Sunday

一定期間更新がないため広告を表示しています

     2011.07.25 Monday
今日はCPL XCの試験日だ!!


って、カーテンをあけるとこれだよ。センター試験じゃないんだぞ。。。orz

クライストチャーチ15年ぶりの大雪だそうで。カンタベリー平野は関東平野と同様に雪が少ないので、交通機関が雪に対して脆弱なのか、バスも電車も飛行機も止まった。当然、私のCPL XCテストもなし。キャンセルの電話を学校に入れる。この天気なら、学生の間で悪名高いキャンセルフォーム(書かないと300ドルチャージするぞ!!と、建前上言われている。)を出さなくても口頭で認めてもらえるだろう。




試験官になるはずだったSCOTTにも一報を、って番号知らないのでテキストが送れない。「試験官の俺が来ているのに学生のおまえがきていないとは!」などというチンピラみたいな反応をする教官ではないことはわかっているが、そこはこちらの誠意の問題だ。番号を教えてくれと学校に再度連絡したが、それは教えられないルールになっているらしい。そりゃそうか。RECEPTIONのMATT曰く、

「大丈夫だよ、他にも来ていないやついるし!」

そりゃそうなんだけどね、何か面倒が起こってからケツ拭くのは、風下側に流された後のトラック修正みたいにめんどくさいんですよ。大丈夫大丈夫と誰かに言われたことを安易に信用して、実は大丈夫じゃないことがわかってお客さんに罵倒されにいくのは、いつだってその誰かじゃなくて私なんですよ。。。などととっさに愚痴り倒すには、私の英語の運用力は発展途上に過ぎる。とりあえず、MATTには雪でいけないという旨を、SCOTTに十分伝えてもらうことにした。


さーてしょうがないな!!何って、外が雪だってことは雪かきだ!!海なし雪なし県に生まれると、いくつになっても雪が降ると触らないことには気が済まぬ。張り切って外に出る。


フラットメイトの大きい人たちが、当たり前のように雪だるまを作っていた。しまった、出遅れた。


これは雪だるまではない。SNOWMANだ。



EUROPIANが作る雪の人形は、妙にリアルである。



そして、平均年齢は25歳以上のSNOW FIGHTが始まった。フランス人のステファンが私の車めがけて投げてきやがるので、サッカーボール大に丸めた雪をひそかに用意して、彼が彼の彼女(こちらはオランダ人)に雪球を投げ終わった瞬間に被弾するように放ってやった。ルースで巨大な雪だまを、そのとんがった鼻筋に食らうステファン。完璧なカウンターパンチだ。かわいそうに。さーて、股関節も痛くなったし、家に入って茶でも飲みますか。


やれやれ。
     2011.07.23 Saturday
IFRは、飛行機が雲の中に入ったりして、まったく外が見えない状態でも安全に飛行するための航法だ。パイロットは外が見えないので、ほとんど目の前の計器を見て飛行機を飛ばす。(ただし、IFR下でも見張りの義務はある。)今はその訓練をシミュレータを使ってやっている。

シミュレータといっても航空会社が持っている数億円するような6軸のフルモーションのもの(記事の最後に動画あります。)から、マイクロソフト社のフライトシミュレータ(通称MSFS)というパソコンゲームまで、いろいろある。私が今学校でやっているのは、ELITEと呼ばれるパソコンゲームの進化版だ。これが設置されている狭い部屋に、教官とASH TAKA MAKIの4人が詰めて座る。お互いのフライトを見ながら自分の番が来るのを戦々恐々と待っている。笑 それでも、一回で800〜1000NZドルが燃えてしまう実機訓練を無駄にしないために!と酸素不足になりながらがんばっておるのだ。

さて、ELITEである。(ふん、挑戦的なネーミングだ。)


こいつはコクピットのスイッチなど、設備はよく再現されているのだが、他の高級なシミュレータのように舵にかかる圧力やGを再現することはできないので、モニターに表示されている画像(主にここででは計器だが)を「目で見て」飛行機を操縦しなければならない。じゃぁ、実機のリアルさを再現できないこいつでは、それなりの訓練しかできないのかというと、そんなことはない。なにしろELITEである。パイロットは、IFRで飛行機を飛ばすのに最も重要な技術をここで習得しなければならない。


向かい合った相手の手の上に自分の手を添えて、相手がすばやく上下左右に手を動かすのに自分がついていこうとした時、目を開けているとできないが、目を閉じていると簡単にできる、というようなことがある。触覚は、視覚より運動神経に伝わるのが早いので、こういうことが起こるのだろう。

実際の飛行機では、操縦桿を引いたり押したりするときには、それなりの力が要る。また、飛行機の姿勢に変化がおきれば、身体がそれを感じる。目を閉じて手を追跡するときと同じ情報が身体に伝わる。

ELITEにはこれがまったくない。失速するまで機首を上げたって、横転するまで飛行機を傾けたって、操縦舵輪に感じる手ごたえはスッカスカ。強すぎるパワステみたいにだ。結果、ちゃんと飛ばすには計器を連続的に目で確認するしかない。目を開けて、手を追っかけるようなものだ。悪いことに、車と違って飛行機にはタコメーターみたいなのが6個ぐらいついている。飛行機の姿勢を示す計器(AH)や、垂直方向の動きに対する速度計(VSI)あるいは高度計、気流に対する滑りをあらわすBALLなど、とにかく数が多い。これらを一定の間隔で常に確認して、それを「判読して」手を動かす。判読という仕事が入るために、動作が遅れたり、修正量を読み違えてオーバーコントロールになりやすい。

それでも目を開けていなければならない理由は、IFRでは外が見えないためだ。外が見えない状況で目を開けて飛ぶ、とは、なんだか矛盾するように聞こえるが、そうではない。触覚は、早いが、だまされやすい、というのが理由だ。視覚情報を奪われた状態で加速度の変化が起こると、人間はすぐに「上がどっちなのか」がわからなくなる。「加速」している時にシートに押し付けられる感覚を「上昇」のそれと勘違いして「上がらないように」操縦桿を押す。機首が下がる。さらに加速。さらに押す。さらに。。。どーん。

そして、ただ飛行機をまっすぐ飛ばしていりゃいいかというと、そんなことはないわけで。それをしながら、RMIやHISなどといった、自分が今どこにいるのか、という情報をあらわす計器も見なければならない。IFRで初めて使うこいつらを読もうとするとき、慣れないのでついそこに目が留まってしまう。たちまち、まるで壁に映った光を追っかけるペンギンのように、飛行機の頭が上下左右に踊りだす。他の計器を確認することを忘れてしまうことを、「LAZY EYES」といって戒めているのはこのためだ。

ELITEはこの「LAZY EYES」を絶対に許さない。学生にこれを克服させるために、操縦桿の感度をMAX(OR それ近く)まで上げてあるらしい。私の最初のELITEは、かくして、ぐっちゃぐちゃになったが、最近はいくらかマシになってきている。高度もずらさなくなってきた。それをみた教官。

「ちょっと負荷をかけてみようか。」

なんですかなんですかなんですかやめてくださいよ必死なんですから。

「通っていた中学校の名前は。」

そうきたか!グラっ。

「ほう、それはどこにあるの。」

埼玉の西ですか。グラっ。

「高校は。」

埼玉の南ですか。グラっ。

「好きな子いた?」

そうきたか!なんか面白いことを言わねば!!(←?)グラグラグラ。

「彼女の名前は?」

K林さん!(後ろで見ているTAKAの苗字。もちろん大嘘。)そしてHOLDING PATTERNとはアサッテの方向に飛んでいく自分。一同大爆笑。

IFは楽しい。orz


おまけ。高級なシミュレータの例。B737のフルモーションシミュレータ。
     2011.07.17 Sunday
IFRの訓練が始まった。

今はELITEというシミュレータで飛行場の周りをぐるぐる周る練習をしている。これが難しい。IFRはINSTRUMENT FLIGHT RULEの略で、天気が悪くて外が見えないときに利用される航法だ。外は雲で何も見えない。夏になると、よく車内の温度上昇を少しでも抑えようと、ウィンドシールドの内側に銀色の遮光シートを取り付けるでしょう。あれをつけたままどこかのスーパーに買い物に行くような感じだ。


南半球では冬。この前の朝なんか空港の気温、 -7℃だって。


IFRで飛ぶ飛行機が通るルートは、そのルート上を正確に飛べば絶対に障害物に当たることがないようにあらかじめ高度とTRKが確保されている。だから、前が見えないからといってわき道から子供が飛び出してくるんじゃないか、電柱にぶぶかるんじゃないか、みたいな心配は要らないわけだ。ただし、ルートを外れなかったら、の話だ。そして、これがまた難しい。

どうやって、空に引かれた道筋を正確にたどるかというと、地上にある、携帯電話の基地局のような施設から電波を受信し、自分の位置を確認しながら飛ぶ。飛行機の中に、その基地局の電波をキャッチして電波の飛んでくる方向を矢印で指し続ける ADF(Automatic Direction Finder)という機械があり、それを使う。ADFがキャッチする電波を発信する基地局を、NDB(Non Directional redio Becon)という。ちなみに日本ではNDBの運用はもう行われていないと聞いた。より直進性が強く、気象状況に左右されにくいVHF帯の電波を使うVORという基地局や、もっと効率的なGPSを利用した航法が主流だそうだ。ただ、VORもADFの進化系みたいなRMIという計器を使うので、訓練でADF(RMI)を使うことは未だ有用だ。


計器の読み方を整理するために作った、手作りのRMIとHSI。涙ぐましい。。。


機内でくるくる回る矢印から、自分が基地局に対してどこをどのくらい離れて飛んでいるか、風はどこから吹いているのかといったことを瞬時に頭に視覚化して飛行機を基地局の真上に持っていく。飛行機を操縦しながらそれをやるのはものすごい負荷だ。特にELITEは操縦桿の感度をかなり上げてあり、少しの操作でも飛行機が敏感に反応する。スキャニング(多くの計器の連続確認)を怠るとすぐにHDGがずれたり、高度がとっちらかったり、しまいには基地局をOVERHEADできない状態になる。ただぐるぐる周ることがこんなに難しいとは。外が見えていれば、飛行場の上を通過することなんて、朝飯前なのだが。。。



あれ、なんでMAKIそんなにできるの??



シミュレータは飛行機の描いた軌跡を現在進行形で見ることができるのだが、MAKIの軌跡と私やTAKAのそれをくらべると、全然違う。ずれたトラックを戻すのもよくできている。なによりすごいのは、それを高度やHDGをずらさずにできていること。うーん。やっぱ一番センスあるよ。私のは特にひどい。何せ、広がりすぎてトラックを表示するマップの縮尺が変わってしまったのだ。orz


ただ、「うまくいかないこと」には、絶対に原因がある。


EFFECT OF CONTROLのころからセンスなどという言葉から無縁の私は、自分が「できない」ということにびっくりしなくなった。そんなの、原因を見つけて、対策を立てて、修正すればいいだけだ。そういうのは得意だ。多分原因は、

・情報の視覚化がうまくできていないこと。
・場面ごとに考えるべきことと考えるべきでないことの整理がついていないこと。

だとおもう。

HOLDING PATTERNは、直線と曲線がそれぞれ2本ずつの、ちょうど小判のような形をしている。小判のふちに沿って飛行機がぐるぐる回る。左右どっち向きになるかは、地上にある基準点がどこにあるかで決まる。この基準点には、NDBが設けられていて、飛行機はまずその上空を通過する。NDBをOVH(OVERHEAD)したあと、すぐに小判の曲線部に入る。ここでは右旋回として1分間で180度旋回した後、反対側の直線に入って1分間直進。1分後、もうひとつの曲線に入ってさらに1分、右に180度旋回。これでNDBに機種が向いていることになり、さらに1分直進すればまたNDBのOVHだ。これを繰り返す。

何言っているかわからない??そりゃそうです。IFRですから。計器だけを見て飛ぶというのは、今のような文章を理解しながら飛ぶということだ。でも、文章を理解する、という方法では、飛行機のスピードには追いつけない。時速200km/hで飛んでいる飛行機に追いつくには、言語化ではなく視覚化しなければならない。頭の中で絵にして、その絵を「見て」飛ぶのだ。


LET'S VISUALIZE! 家にある暖炉。火を見ていると飽きない。何に見える??


小判の縁取りの各時点で考えるべきことがあって、逆に言うと考えるべきでないことがある。たとえば、NDB OVH直後
の右旋回と、後ろに進んだ後のもうひとつの右旋回では、考えていることがまったく違う。2つの直線も、それぞれで考えることが違う。その時に、何を考えているべきなのか、それがわかっていないと見るべきときに見ていなければならない計器から目が外れて、情報を見落として、高度が、速度が、旋回半径が、そしてHOLDING PATTERNの軌跡そのものが、とっ散らかる。これが、HOLDING PATTERNがうまく描けない原因だ。原因が分かれば、対策を立てて、修正できる。


クロスカントリーや他のすべてのフライトにいえることだが、フライトにはいろいろな場面があって、そのときそのときに考えるべきことと、考えるべきでないことがある。おそらくこれは、プロとして飛び始めてからも同じだろう。この先、飛行機を飛ばすことそのものの負荷は、どんどん減ってくる。オートパイロットだって付いている。(D1900にはついていないんだっけ、、、)つまり、今私が苦労しているようなことは、全部機械がやってくれるようなコクピットが用意されるのだ。そこで、自分がいつ、何を、考えるのか。そして無限の選択肢からそれを選んだのは何故なのか。

きっと、フライトに唯一の解なんてないんだろう。自分のフライトをしよう。
     2011.07.10 Sunday
「パイロット」と聞いてどんな人物像を思い浮かべるだろうか。


TOPGUNのMARVERICKだろうか。GOOD LUCKの新海 元だろうか。


今から私がトムキャットや747-400のパイロットになる可能性は、おそらく低い。私にとってパイロットとは、EAGLEの大野さんや教官の八木さんや国さんや人見さんやゴルさん、元水上機を飛ばしていた高木さん、日本のラインでがんばっていらっしゃる江口さんや牧野さんであり、GREGでありJAYでありPPL試験をみてくれたCATHARINEであり、SCOTTである。JETSTARでA320に乗っているWILLという同い年の友達もいれば、RANGITATAで私を気遣ってくれたRUSSELだってMICRO PLANEのパイロットだ。

パイロットになりたいという人は、自分にとってパイロットという人間像がどんなものかというのを一度確認してみるといい。周りにパイロットがいない人は、意外とトムクルーズと木村拓哉しか思い浮かばないのではないだろうか。(私もそうだった。)でも「パイロット」という言葉はそんな狭い範囲の定義におさまるものではない。

私のように個人的に訓練を受けてパイロットになろうという人は、グッドラックだけにあこがれてくると、もしかしたら挫折するかもしれない。絶対にいえることは、パイロットという職業は、これから給料は下がるし、夜間や時差を越えての労働や、英語の運用能力に対するいっそうの要求など、本当に大変な職業だということ。メディカルや技量の定期チェックもあるし、なってしまえば安泰という職業ではない。技量を維持できなければ、すぐにクビだ。決して、高い生活水準を期待してはならない。そんな古き良き時代は終わった。と個人的に考えている。笑



それでもパイロットになりたいですか。



私は、YESだ。もう他のどんな仕事も考えられない。自分の工夫が技量の改善となって現れたとき、何か困ったことが起こって管制塔や他機と連絡をとり優先順位を次々と変えて助け合い、うまく問題を処理したとき。それはものすごい達成感だ。多分、コミュニケーションがうまくいくというのはどんな仕事でもやりがいの源泉だとは思うが、パイロットをやっているとそんなのが日常的に起こる。本当に楽しい。私は、空を飛ぶことをそういう風に捉えられるようなベースを持っているので、つらいことが起こってもあきらめようと思うことはこれからもないと思う。


「そんなこといったって、将来採用されないんじゃいつかその夢は途絶えるんじゃないの??」


まぁ確かにそうだ。でも、これは問いの立て方が間違っている。パイロット=グッドラックしか想定していない人にとっては、そうなのだろう。ラインパイロットの採用は、景気の浮き沈みがそのまま採用の浮き沈みになるので、自分がどんな人間か(あるいはパイロットか)ということに関係なく、景気の山にあたれば採用されるし、谷にはまれば採用はないという身も蓋もない話になる。つまり、もともと将来の保証を考えられるような選択肢ではないので、その点はあきらめるしかないのだ。将来の保証がない上での努力というのは、ゴールの知らされていないマラソンのような苦しさがある。でも、我々ができることは、そうして技量を磨き続けて、チャンスが来た時につかむ。これしかない。

そのときに、自分の「パイロット像」が物を言う。その範囲が狭いと、本当はチャンスなのに、それをチャンスとして気づけないかもしれない。もったいない。でも、視点を変えてみればそうではない。飛びに飛び続け、チャンスを待っていれば、パイロットになる可能性は、実はそんなに低くはないのだ。

金持ちにはなれないかもしれないけどね。
     2011.07.06 Wednesday
人間が乗り物に乗って移動するという贅沢をあきらめない限り、事故を「0」にすることはほとんど不可能だとおもう。

もっと遠くに、もっと速く、という欲求をかなえるために、自分たちの身体の造りと強度では到底耐え切れないほどのエネルギーをひときりに集めて、圧縮して、車輪やエンジンやタービンを高速で回すことでそれを実現している。事故を「0」にしたかったら、乗り物には乗らないことだ。

プロパイロットを目指す人間がこんなことをいうのは、無責任だと思うだろうか。

逆説的だが、そういう事実に目をそむけないことが、事故を「0」にするか、少なくともそれに限りなく近づくために必要なことなんだとおもう。統計的には一定の確率で事故は起こるが、被害の程度は小さい事故で食い止めるようなシステムを作ることはできると信じたい。そのためには、事故は起こるもの、という事実を受け入れることが前提条件だ。一定の確率で起こる事故を、どうコントロールするか。「ときどき事故は起こるが、航空機の事故では誰も死ぬことはない。」航空業界が、そんな風に捉えられるような日が来ればいい。



【MOTUEKAにEYF見参!!CH-MK//-KI//-CHで300NM達成。】


最近は、自分の行動が変わってきているのを感じる。

とにかく、焦らなくなった。

これまでは、たとえば「CPL XCの準備は、プランからすべてを1時間で終わらせるべきだ!」という教官の言葉をそのまま受けて止めて、準備中にタイムリミットの1時間が近づいてくると、「はやくしなきゃはやくしなきゃはやくしなきゃ あ、WEATHERのプリンタ壊れた。この馬鹿プリンタめ!!」

とか、

たとえば、「安全のみを見ていたPPLから、効率という要素を入れ始めるのだから、タキシングしながらいろいろてきぱき進められるようにならなければならんならんならーん!!!」

みたいなことを繰り返していた。焦ったり、急いだりするとなんとなく「がんばっている」ような気分になるのだ。「深刻に」なることで、真剣さをかもし出していた。当たり前だが、物事に「深刻に」取り組んでいるからといって、それが正しい方法であるとは限らない。


準備が1時間で終わらないからといって、実際にオペレーションに入ってから自分をプッシュして時間を短縮したって何の意味もない。急がなきゃ、とか、なんとかしなきゃ、という気持ちを持った時点で、プランがまずいのだ。最も重要なのは、その「まずい!」を、そのオペレーション中に取り戻そうとしないことだ。テーマがあって、それが未達成になりそうだったら、リラックスしてそれを地上に、安全に持ち帰ればいい。そうして、次のプランに活かせばいい。もしかしたら教官にはがっかりされるかもしれないが「急ぐ」ことで結果的につじつまを合わせて「できました」と報告することに、なんの意味があるだろうか。

誤解を恐れずに言えば、最近はプリフライトも給油もログの記入も天気の分析も、意図的に「だらだら」やっている。絶対に、急がない。変だな、とおもうだろうか。プロを目指すなら、ひとつひとつの行動を「てきぱき」やるべきだろうか。

逆だ。

行動自体をだらだらやっても、時間通りに出発できるようにするにはどうすればいいか、と考えるべきだと思う。「てきぱき」やるという考えでは、その「てきぱき」を崩す何かが起こったときに、自分が「急ぐ」ことでしか状況を立て直せない。そして、オペレーションというのはそういう何かが常に起こる。冒頭に言ったように、事故は「起こるもの」として捉えなければならないのは、その芽がそこらじゅうに転がっているからだ。



【SKYDIVING用の飛行機洗い中。NELSON AVIATIONがあるのもここMOTUEKA (NZMK)だ。IFRの訓練中だという日本人の方にも一人、お会いした。】


今日、TIMARUのターミナルに駐機してあるイーグル(D1900)の横を、LINEUP のためにタキシングしているときだった。出発直前なのだろう、お客さんが続々と乗り込んでいる。ぶつからないように何度も翼の先をチェックしながら通り過ぎようとしたとき、まるで博物館の展示品をひとつひとつ眺めているような風情で、D1900のノーズギアやピトー管を見つめている人物がいた。

パイロットだ。

非常にゆっくりと、「だらだら」した印象を受けた。本番でだらだらできるのは、プランがいいからだ。実際、イーグルは私が離陸した直後、おそらく定刻に離陸して、フルパワーで3000あたりをあえぎながら昇っている私のトマホークを一瞬で抜き去り「5500FTを上昇中だよ♪」という無線とともに北東のどこかへ消えていった。ちゃんと結果を出している。笑

ああいう風になろう。
     2011.07.03 Sunday
Today, I was supposed to complete the 300NM cross country flight.

I came to school at 0730AM, completed preparation at 0900AM, and set 1030 for my departure time to avoid possible low cloud or valley fog in the mountainous area en route. At 1015AM, I was running the engine up on the grass.

WHEN I was just about to taxi on the taxiway delta for short of grass 02, I noticed that this awesome fog was drifting into the airfield from west.




At 1130AM, really bad,



At 1140, my latest time of departure had come.


At 1150. SKY CLEAR!



Such a perfect day. orz
     2011.07.01 Friday
学校の教室に、こんな本があった。



飛行機操縦教本。FAA(アメリカの飛行ルール)を参考にしているためか、NZで習っていることと違いがあって面白い。DOWN WIND への入り方とか、SHORT FIELD TAKE OFFは不整地でつかうなとか。。。その中に、こんな記述があった。

「操縦士が地上で飛行機を損傷させることは、最も恥とするべきこと」

恥、という日本語が、当時の心境をものすごく的確に表している。へこませた翼を見たときに感じたのは確かに「恥ずかしい」という感情だった。もう絶対にあんな思いはしたくない。繰り返さないためには、どうすればいいだろうか。

PPLを取った時の資料やノートを見返して、基礎的なプロシージャに抜け盛れがないか、また機外点検など地上での準備は、朝学校に着いたらまず最初に何を見て、どう動くか一連の動作を毎日同じ順序と要領で行うことにした。要は、基礎の徹底である。そうすれば、何か異常があった場合に「普段と違うぞ」と発見しやすいし、「不注意」が入り込む余地を潰せる。


【動画第2弾、本日のRYOの後席。PPLから我々を悩ますFORCED LANDING、つまりエンジン故障を想定した不時着訓練。飛行中、教官のタイミングで突然エンジンがバシバシ切られる。そこからエンジンが止まった状態で、滑空して不時着に持っていく。普通に飛んでいるときに、つまり、ターンしたり地図を見たりRADIOを入れていたりログに時間を記入したりしているとき、頭の片隅に風とパドックに対するアイディアを置いておかないと、切られた瞬間にパターンを描けず、うまくいかない。】


また、自分の行動にTEM(THREAT AND ERROR MANAGEMENT)を取り入れる。仰々しい英語だが、なんてことはない。今日は何が危険かな、と動く前に一瞬想像力をめぐらすだけでよい。動く前に、というのが重要だ。動きながらやる場合は、二人乗っている場合のみとしよう。教官に見張りを頼んでもいいのだ。


【TUからDIVERSION。「やっぱちょっとここ寄ってくれる?!」というわがままな客の要求にも、ニコニコしながらいいですよというための訓練。100NM離れた山の中にある湖などを指定してくる。】


【雲に覆われる平野部を右手に、山に向かう。何時に着くか、燃料は足りるか、夜になる前にCHに帰ってこられるか、雲が低くなって想定していた航路で帰れない時はどうするか、エンジン故障時に不時着する場所はあるか、AIRSPACEはどこまで上がっていいか、周りのトラフィックは?障害物は?この客は本当に金払ってくれるのか・・・】


「もうあんな思いはしたくない。」などと、ブログに書いているが、これがもし柵と翼ではなく、プロペラと人だったら、こんなところでこんな文章は書いていないだろう。置かれた状況如何によっては、人を殺していたかもしれないのだ。想像力をはたらかせるということは、そういうことだ。どこかの紅(あか)い豚も言っていた。いいパイロットの第一条件は、経験ではない、想像力だと。



Ashへのご連絡はこちら
質問箱へ
プロフィール
2010パイロット訓練
2013インストラクター
2018エアライン

命を削って、ニュージーランドでキャリアを掴む
ブログ移行しました。
2018年9月から、note.comに移行しました。
ランキング
にほんブログ村 転職キャリアブログ 20代の転職・転職活動へ
にほんブログ村
にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 海外生活ブログ ニュージーランド情報へ
にほんブログ村
JUGEM PLUS
PR