2012.06.26 Tuesday
最近電車の中で読んでいる本は、もっぱらこれである。
この本は、60歳になった宮本武蔵が熊本の岩戸山というところにある霊巌洞という洞穴にこもって書いた、二天一流という自分の剣法について記したものだ。単純に剣術の技術指南書として読むことも出来るが、書物は地、水、火、風、空、という5つの巻に分けられ、個別の戦闘技術から大軍が激突する戦まで扱っているテーマには奥行きがある。「戦いに勝つ」という目的のための手立てをさまざまな遠近法で解説したものである。
さて、五輪の書で検索すれば、色々な本が出てくるのだが、この本の特徴は英語訳が見開きの右ページについていることで、しかも訳が秀逸。日本に造詣が深い外国人の訳は、左のページの日本語とちゃんと文量が合うようになっているので、訳と対比しながら読むことが出来る。これはすごく難しいこと。
だから電車の中で読んでいると、こんな表現があるのか!!と思わずひざを打つ場面が沢山あるこの本は要は教科書なので、教官になってから使えそうな言い回しも沢山ある。だから毎日電車の中で練習しているが、時々周りの人に気づかれてぎょっとされる。ちょっと紹介してみよう。(以下、青字部分が引用。)
火の巻 渡(と)を越すということについて
The Book of Fire Crossing the Water
「人が人生を渡る場合でも、一生のうちには海を渡るときのように危機に見舞われることは多いはずである。」
"And when people cross from one end of life to the other, they may encounter as many troubles as in crossing an ocean."
そりゃそうだ。
「舟路において、その危険な『渡』の場所を知り、中略 状況に応じて、あるいは横風に頼りあるいは追い風をも受け、もし風が変わったとしても二里三里は櫓をこいで港に着く気持ちで舟を乗りこなし、渡を越すのである。」
"Concerning the route, you know the dangerous crossings...you must adjust according to circumstance, that you may have a side wind, that you may have a tail wind, or that the wind may change altogether and force you to row the last few kilometers to reach the harbor. It is with such feelings that you manage your boat and set out to cross the water."
「その気持ちをもって人生を送るとき、一大事があれば正に『渡』を越すのだと思うべきである。」
"If you make your way through life with this in mind, and a crisis occurs, you can think of it as making a difficult crossing."
私はこの二文を読んで、たとえばフライトテストとか就職の面接とか、そういういわゆる「本番」に強くなるための心の持ちようがここにあるんじゃないかと思った。私のMEIRのテストのときは、結果的に受かったけど、受からないんじゃないか?という臆病なメンタルがはみ出してくるのを、カラ元気でひたすら拾っていくという方法だったのでテスト前からすごく疲れた。
でも「『渡』を越す」というフレーズを知っていれば、ストレスフルに違いない「本番」に対して必要以上に臆病になることなく、上手く集中力を持っていけそうな気がした。何かを成し遂げるかどうかは「本番」でいつもの力を出せるかどうかが鍵だと思うが、これは普段からメンタルを訓練していかないと難しい。和室で畳のふちを歩くのは簡単だが、同じ狭さの板の上をスカイツリーの上では必ずしも簡単に渡れないのと同じ。
「『渡』を越し危機を乗り越えれば後は簡単である。『渡』を越せばこちら側に強みがでて、中略 そうすれば大概において勝利できる。」
"If you successfully make the crossing and ride out the crisis, the rest is simple.Once across, the power is your side...If you can do that, than you can generally win."
「『渡』を越すという感覚を持つことは大切だ。中略 しっかりと研鑽をつめ。」
"it is important to maintain the notion of making a dangerous crossing. Look into this carefully."
しっかりと研鑽をつめ。はいー、でも「横風」は "cross wind"と訳して欲しかったなー。笑
この本は、60歳になった宮本武蔵が熊本の岩戸山というところにある霊巌洞という洞穴にこもって書いた、二天一流という自分の剣法について記したものだ。単純に剣術の技術指南書として読むことも出来るが、書物は地、水、火、風、空、という5つの巻に分けられ、個別の戦闘技術から大軍が激突する戦まで扱っているテーマには奥行きがある。「戦いに勝つ」という目的のための手立てをさまざまな遠近法で解説したものである。
さて、五輪の書で検索すれば、色々な本が出てくるのだが、この本の特徴は英語訳が見開きの右ページについていることで、しかも訳が秀逸。日本に造詣が深い外国人の訳は、左のページの日本語とちゃんと文量が合うようになっているので、訳と対比しながら読むことが出来る。これはすごく難しいこと。
だから電車の中で読んでいると、こんな表現があるのか!!と思わずひざを打つ場面が沢山あるこの本は要は教科書なので、教官になってから使えそうな言い回しも沢山ある。だから毎日電車の中で練習しているが、時々周りの人に気づかれてぎょっとされる。ちょっと紹介してみよう。(以下、青字部分が引用。)
火の巻 渡(と)を越すということについて
The Book of Fire Crossing the Water
「人が人生を渡る場合でも、一生のうちには海を渡るときのように危機に見舞われることは多いはずである。」
"And when people cross from one end of life to the other, they may encounter as many troubles as in crossing an ocean."
そりゃそうだ。
「舟路において、その危険な『渡』の場所を知り、中略 状況に応じて、あるいは横風に頼りあるいは追い風をも受け、もし風が変わったとしても二里三里は櫓をこいで港に着く気持ちで舟を乗りこなし、渡を越すのである。」
"Concerning the route, you know the dangerous crossings...you must adjust according to circumstance, that you may have a side wind, that you may have a tail wind, or that the wind may change altogether and force you to row the last few kilometers to reach the harbor. It is with such feelings that you manage your boat and set out to cross the water."
「その気持ちをもって人生を送るとき、一大事があれば正に『渡』を越すのだと思うべきである。」
"If you make your way through life with this in mind, and a crisis occurs, you can think of it as making a difficult crossing."
私はこの二文を読んで、たとえばフライトテストとか就職の面接とか、そういういわゆる「本番」に強くなるための心の持ちようがここにあるんじゃないかと思った。私のMEIRのテストのときは、結果的に受かったけど、受からないんじゃないか?という臆病なメンタルがはみ出してくるのを、カラ元気でひたすら拾っていくという方法だったのでテスト前からすごく疲れた。
でも「『渡』を越す」というフレーズを知っていれば、ストレスフルに違いない「本番」に対して必要以上に臆病になることなく、上手く集中力を持っていけそうな気がした。何かを成し遂げるかどうかは「本番」でいつもの力を出せるかどうかが鍵だと思うが、これは普段からメンタルを訓練していかないと難しい。和室で畳のふちを歩くのは簡単だが、同じ狭さの板の上をスカイツリーの上では必ずしも簡単に渡れないのと同じ。
「『渡』を越し危機を乗り越えれば後は簡単である。『渡』を越せばこちら側に強みがでて、中略 そうすれば大概において勝利できる。」
"If you successfully make the crossing and ride out the crisis, the rest is simple.Once across, the power is your side...If you can do that, than you can generally win."
「『渡』を越すという感覚を持つことは大切だ。中略 しっかりと研鑽をつめ。」
"it is important to maintain the notion of making a dangerous crossing. Look into this carefully."
しっかりと研鑽をつめ。はいー、でも「横風」は "cross wind"と訳して欲しかったなー。笑
2012.06.19 Tuesday
自分の目の前にまな板と食材があって、料理ができたらそれを回転寿司みたいなベルトコンベアにのせる。厨房は体育館みたいに広くて、自分の他にもたくさんの人が流し台の前に陣取り、まな板に置かれた食材に向かっている。
彼らの行動はまちまちだ。
包丁で刻み出す者、コンロに火をかける者、二人で作業する者、大量の食材を買い込む者、流し台の排水パイプに開いた穴を直している者、床に落ちた材料を洗う者、料理が出来る前に試食する者、すでに二品目に取り掛かっている者。。。皆それぞれだが、異様に目立つ者がいる。それも複数。それは、腕組みをして食材を凝視している者だ。
よく見ると、彼らの流し台には、ひとつだけ共通していることがあった。コンロも流しも水道も排水口も調理器具も全て揃っているのだが、ただひとつ、時計がない。いや、正確には、あるのだが機能していない。体を動かしている人の厨房の時計は、赤いデジタル表示で時間が表示されている。現在時刻ではなく、カウントダウン表示だ。どうやら、これがゼロになったら、流し台を次の人に明け渡し、厨房から出て行かなければならないようだ。料理ができていようがいまいが関係ない。実際、かなりの量の食材が、ベルトコンベアにのってどこかへ運ばれていく。傷すらついていないものもある。
一方で、立派な料理になったものも確かにある。物質的には同じだが、両者は明らかに異なる表現だ。ただし、いい料理を作ったからといって、時間を超えて厨房に留まれるわけではない。時間が来たら、必ず退場する。その点において、表現に優劣があるわけではない。ただ「違う」だけ。
腕組をしている人たちは、まず最初に時計のスイッチをいれるという作業を忘れてしまった人たちだ。彼らは、あとどのくらいの時間が残っているかわからず、まずはじっくり検討して、どんな料理を作ろうか考えているようだ。周りの人の料理もかなり気になるようで、キョロキョロしてはため息をついている。もしかしたら考えることに夢中になり、時間が来たら厨房から退場しなければならないということを忘れているのかもしれない。
ふと目の前の自分の時計を見る。幸い、時計はついていた。残り時間は腕組をしているほど余裕があるとは言えなそうだ。まな板の上の野菜のはむいてあって、コンロにかけた鍋の湯がもう少しで沸騰するところだった。そうだ、私もついさっき腕組みをほどいて、やっとここまでやったんだった。私は、自分の料理が完成できずに終わることは望んでいない。そして、周りを見まわしている間は、私の料理は1ミクロンも前進しない。
さっさと自分の作業に戻らねば。
彼らの行動はまちまちだ。
包丁で刻み出す者、コンロに火をかける者、二人で作業する者、大量の食材を買い込む者、流し台の排水パイプに開いた穴を直している者、床に落ちた材料を洗う者、料理が出来る前に試食する者、すでに二品目に取り掛かっている者。。。皆それぞれだが、異様に目立つ者がいる。それも複数。それは、腕組みをして食材を凝視している者だ。
よく見ると、彼らの流し台には、ひとつだけ共通していることがあった。コンロも流しも水道も排水口も調理器具も全て揃っているのだが、ただひとつ、時計がない。いや、正確には、あるのだが機能していない。体を動かしている人の厨房の時計は、赤いデジタル表示で時間が表示されている。現在時刻ではなく、カウントダウン表示だ。どうやら、これがゼロになったら、流し台を次の人に明け渡し、厨房から出て行かなければならないようだ。料理ができていようがいまいが関係ない。実際、かなりの量の食材が、ベルトコンベアにのってどこかへ運ばれていく。傷すらついていないものもある。
一方で、立派な料理になったものも確かにある。物質的には同じだが、両者は明らかに異なる表現だ。ただし、いい料理を作ったからといって、時間を超えて厨房に留まれるわけではない。時間が来たら、必ず退場する。その点において、表現に優劣があるわけではない。ただ「違う」だけ。
腕組をしている人たちは、まず最初に時計のスイッチをいれるという作業を忘れてしまった人たちだ。彼らは、あとどのくらいの時間が残っているかわからず、まずはじっくり検討して、どんな料理を作ろうか考えているようだ。周りの人の料理もかなり気になるようで、キョロキョロしてはため息をついている。もしかしたら考えることに夢中になり、時間が来たら厨房から退場しなければならないということを忘れているのかもしれない。
ふと目の前の自分の時計を見る。幸い、時計はついていた。残り時間は腕組をしているほど余裕があるとは言えなそうだ。まな板の上の野菜のはむいてあって、コンロにかけた鍋の湯がもう少しで沸騰するところだった。そうだ、私もついさっき腕組みをほどいて、やっとここまでやったんだった。私は、自分の料理が完成できずに終わることは望んでいない。そして、周りを見まわしている間は、私の料理は1ミクロンも前進しない。
さっさと自分の作業に戻らねば。
2012.06.16 Saturday
フライトグッズといえば、スリッパとか仮眠マスクとかブランケットとか、キャビンで快適に過ごすためのものを思い浮かべるかもしれぬが、今回は小型機の訓練をするパイロットに便利なグッズを紹介してみたい。そんなの参考になる人がどれだけいるかは知りませんが。飛行機の雑誌なんかにたまに出てくる「パイロットの七つ道具」みたいなやつじゃなくて、実際に訓練した人じゃないとわからない、個人的にこれがあったら!と思ったもの。
1.PILOT社のフリクションシリーズ ボールペン
書いた文字が消せるペン。もって行けばよかったなー。PILOT社だし。
NZのチャート(航空用地図)は、ラミネートされていないただの紙なので、書き込みには基本的に鉛筆を使う。だが、鉛筆は地図上で見づらい。また、一回のフライトが終わるごとに消さなければいけないので、面倒だし、消しゴムを使うと地図がすぐにぼろぼろになってしまう。
そういうわけで、私は地図に自分でラミネートをして使っていた。近所のWarehouseでジュラシールという透明なラミネートシートを買ってきて、学校のテーブルで貼った。地図は大きいので、気泡が入らないようにするには体全体を使って少しずつ慎重に貼っていかなければならない。かなり重労働な上に、人に見られるとぎょっとされる。なにしろ、大の男がテーブルに広げた地図の上で鞠を見つけた猫のようにごろごろ転がっているのだ。
こうした努力のおかげで油性ペンで地図に書き込みができるようになり快適だった。唯一の問題は、油性ペンはキャップをはずした状態で放置できないので、ペンを使う際に両手を使わなければならないこと。また、油性ペンのにおいは閉鎖空間だと気分が悪くなる可能性がある。自分は慣れればいいが、お客さんを乗せたら問題になってくるかもしれない。
フリクションペンがあれば、消すときに強い摩擦は必要ないので地図はぼろぼろになりにくい。ノック式なので、書くときも片手でいける。ただ、インクが若干水っぽいので、書き味が薄くなるところが気になるのと、インク切れになったときに現地で補充できないのがネックになるか。
2.PILOT社のフリクションシリーズ 蛍光ペン
同じシリーズだが、こちらは蛍光ペン。
MAKIがこれを持っていた。IFRの訓練になったときに使っていた。IFRになると、今までとは違うチャート(地図)を使うようになる。IFRでは、安全と効率のために飛行機が飛ぶルートが電波の道で厳密に決まっているため、地図にはすでにルートが書き込まれている。黒い線がそれだ。
IFRというのはだから地図の準備は簡単だ。くもの巣のように引かれた白地に黒の線のどれかを選んで、蛍光ペンで線を引けばいい。このペンなら、あとから消せるので重宝するはず。ただ、やはりインクの減りが早いと感じる。NZの文房具の質は極悪(笑)なので次にいくときは大量にストックを持っていくつもりだ。
3.巻き取りコード付キーホルダー(?)
時々持っている人はいるが、NZはおろか、日本でもなかなかない。
これはビレッジバンガードで500円で売っていた。コクピットの中ではペンを落としたくないので、首からストラップで提げるのだが、そのままでは文字を書くときに短すぎる。十分な長さにすれば、無様に垂れ下がってしまいかっこよくない。そこでこいつ。書くときだけ引き出せ、自動的に巻き取られるので使い勝手はよいだろう。今は会社のIDを腰からぶら下げている。いい感じ。
4.小型時計
飛行機に飛ばすにあたって、時計は重要だ。もっとも重要な役割は、燃料を管理することだ。今何時かわからなかったら、あとどのくらいで燃料が切れるかわからなくなる。(新しいコクピットの飛行機は除く。)また、SARTIMEという遭難に備えたレスキューサービスにかかわる時間の管理も重要だ。もちろん、出発や到着時刻を知るためでもある。法律にも「時間がわかる装備をもっていきなさい」と明記されており、時間がわからない状態で飛ぶことは違法になる。そんなに重要な時計だから、パイロットは普通、腕時計をしている。しかもいいやつを。(ちっ)法律には何も、「腕時計」と書かれているわけではないので、懐中時計でも目覚まし時計でも時間がわかればいい。そこでこんなの。
実は腕時計は、コクピット内では意外と使いづらい。だいたい、時間を確認するために腕を動かさなければいけないのがいけない。離陸したときなど、手は操縦桿とスロットルから離したくないことは多い。悪いことに、そういうときに時間を確認する必要があったりする。しぶしぶ腕を上げても、袖口に隠れてしまってることが多く見づらいことこの上ない。笑
時計は腕じゃなくて目玉を動かしてみたほうが楽だろう。そこで、シンプルな小型時計を見やすいところに設置すれば、トマホークをグラスコクピット化できる。(嘘です。)今日偶然見つけて買ってみたのだが、LCDは正面を向いていないと見づらくなった。うーん、ちょっと期待はずれ。腕時計を操縦桿にくくりつけたほうが良かったかな。
5.フライトコンピュータの滑り止め
これは先輩に教えてもらったもの。風を計算する面の、独特のまわしづらさを克服するために、透明なラバーを東西南北の位置に貼る。動かしやすくなる。
これは確か、トイレのふたがタンクに当たって破損しないようにする衝撃緩衝材だった。透明なものは100均には売っておらず、ホームセンターで購入。また、真ん中の風速を入れる回転定規の先端にテープを重ねて貼り、摩擦を調節している。位置を決めた後、勝手に動かないようにするため。
6.チャートをはさむパックン的なこいつ
ちょこざいなしゃくれ顔をしているが、仕事はします。。。
吸盤になっている一端を窓にくっつけて、次の空港に降りるための情報が書かれたチャートをはさむ。教官からもらったものだ。
こいつのすごいところは、そのしゃくれ顔にある。ここに書類を入れると、中にあるゴムがうまく紙をくわえ込む。その後、すばやく力をかければ引き出せる。つまり、書類を挟むのに片手しか要しないということ。機内にはクリップなどがついていることもあるが、クリップを開き、書類を差し入れるには両手を使う必要がある。操縦桿から手を離したくないパイロットにとってはとてもありがたいアイテムだ。もともとパソコンで作業するときに、画面の横に書類をぶら下げておくためのオフィス用具。残念ながら日本では絶版らしい。
他にもあったら教えてください。
1.PILOT社のフリクションシリーズ ボールペン
書いた文字が消せるペン。もって行けばよかったなー。PILOT社だし。
NZのチャート(航空用地図)は、ラミネートされていないただの紙なので、書き込みには基本的に鉛筆を使う。だが、鉛筆は地図上で見づらい。また、一回のフライトが終わるごとに消さなければいけないので、面倒だし、消しゴムを使うと地図がすぐにぼろぼろになってしまう。
そういうわけで、私は地図に自分でラミネートをして使っていた。近所のWarehouseでジュラシールという透明なラミネートシートを買ってきて、学校のテーブルで貼った。地図は大きいので、気泡が入らないようにするには体全体を使って少しずつ慎重に貼っていかなければならない。かなり重労働な上に、人に見られるとぎょっとされる。なにしろ、大の男がテーブルに広げた地図の上で鞠を見つけた猫のようにごろごろ転がっているのだ。
こうした努力のおかげで油性ペンで地図に書き込みができるようになり快適だった。唯一の問題は、油性ペンはキャップをはずした状態で放置できないので、ペンを使う際に両手を使わなければならないこと。また、油性ペンのにおいは閉鎖空間だと気分が悪くなる可能性がある。自分は慣れればいいが、お客さんを乗せたら問題になってくるかもしれない。
フリクションペンがあれば、消すときに強い摩擦は必要ないので地図はぼろぼろになりにくい。ノック式なので、書くときも片手でいける。ただ、インクが若干水っぽいので、書き味が薄くなるところが気になるのと、インク切れになったときに現地で補充できないのがネックになるか。
2.PILOT社のフリクションシリーズ 蛍光ペン
同じシリーズだが、こちらは蛍光ペン。
MAKIがこれを持っていた。IFRの訓練になったときに使っていた。IFRになると、今までとは違うチャート(地図)を使うようになる。IFRでは、安全と効率のために飛行機が飛ぶルートが電波の道で厳密に決まっているため、地図にはすでにルートが書き込まれている。黒い線がそれだ。
IFRというのはだから地図の準備は簡単だ。くもの巣のように引かれた白地に黒の線のどれかを選んで、蛍光ペンで線を引けばいい。このペンなら、あとから消せるので重宝するはず。ただ、やはりインクの減りが早いと感じる。NZの文房具の質は極悪(笑)なので次にいくときは大量にストックを持っていくつもりだ。
3.巻き取りコード付キーホルダー(?)
時々持っている人はいるが、NZはおろか、日本でもなかなかない。
これはビレッジバンガードで500円で売っていた。コクピットの中ではペンを落としたくないので、首からストラップで提げるのだが、そのままでは文字を書くときに短すぎる。十分な長さにすれば、無様に垂れ下がってしまいかっこよくない。そこでこいつ。書くときだけ引き出せ、自動的に巻き取られるので使い勝手はよいだろう。今は会社のIDを腰からぶら下げている。いい感じ。
4.小型時計
飛行機に飛ばすにあたって、時計は重要だ。もっとも重要な役割は、燃料を管理することだ。今何時かわからなかったら、あとどのくらいで燃料が切れるかわからなくなる。(新しいコクピットの飛行機は除く。)また、SARTIMEという遭難に備えたレスキューサービスにかかわる時間の管理も重要だ。もちろん、出発や到着時刻を知るためでもある。法律にも「時間がわかる装備をもっていきなさい」と明記されており、時間がわからない状態で飛ぶことは違法になる。そんなに重要な時計だから、パイロットは普通、腕時計をしている。しかもいいやつを。(ちっ)法律には何も、「腕時計」と書かれているわけではないので、懐中時計でも目覚まし時計でも時間がわかればいい。そこでこんなの。
実は腕時計は、コクピット内では意外と使いづらい。だいたい、時間を確認するために腕を動かさなければいけないのがいけない。離陸したときなど、手は操縦桿とスロットルから離したくないことは多い。悪いことに、そういうときに時間を確認する必要があったりする。しぶしぶ腕を上げても、袖口に隠れてしまってることが多く見づらいことこの上ない。笑
時計は腕じゃなくて目玉を動かしてみたほうが楽だろう。そこで、シンプルな小型時計を見やすいところに設置すれば、トマホークをグラスコクピット化できる。(嘘です。)今日偶然見つけて買ってみたのだが、LCDは正面を向いていないと見づらくなった。うーん、ちょっと期待はずれ。腕時計を操縦桿にくくりつけたほうが良かったかな。
5.フライトコンピュータの滑り止め
これは先輩に教えてもらったもの。風を計算する面の、独特のまわしづらさを克服するために、透明なラバーを東西南北の位置に貼る。動かしやすくなる。
これは確か、トイレのふたがタンクに当たって破損しないようにする衝撃緩衝材だった。透明なものは100均には売っておらず、ホームセンターで購入。また、真ん中の風速を入れる回転定規の先端にテープを重ねて貼り、摩擦を調節している。位置を決めた後、勝手に動かないようにするため。
6.チャートをはさむパックン的なこいつ
ちょこざいなしゃくれ顔をしているが、仕事はします。。。
吸盤になっている一端を窓にくっつけて、次の空港に降りるための情報が書かれたチャートをはさむ。教官からもらったものだ。
こいつのすごいところは、そのしゃくれ顔にある。ここに書類を入れると、中にあるゴムがうまく紙をくわえ込む。その後、すばやく力をかければ引き出せる。つまり、書類を挟むのに片手しか要しないということ。機内にはクリップなどがついていることもあるが、クリップを開き、書類を差し入れるには両手を使う必要がある。操縦桿から手を離したくないパイロットにとってはとてもありがたいアイテムだ。もともとパソコンで作業するときに、画面の横に書類をぶら下げておくためのオフィス用具。残念ながら日本では絶版らしい。
他にもあったら教えてください。
2012.06.10 Sunday
褒められた!
翻訳の仕事というのは、楽チンそうに見えて結構しんどい。大体、8時間のほとんどを座ってすごすのは、場合によっては動き回るより疲れる。事務仕事をしている人はわかると思うけど、腰と尻に疲労が蓄積してくる。私は最近、電車で目の前の席が空いても座らなくなった、他人と体が触れ合うのが嫌だというのもあるが、なにも電車で座らなくても尻に鈍痛が出るまでオフィスで座れるからだ。
尻の痛みに耐えながら来る日も来る日も同じ作業を続ける中、先日翻訳を納品したクライアントから、こちらの上司経由でありえないフィードバックが返ってきた。
「担当のAtsusukeさんという方は、物事の要点の捉え方がピカイチです。」
最初は何をいっているのかよくわからなかったが、どうやら私のやった仕事を褒めてくれているようだった。これはうれしかった。仕事で褒められたのなんていつ以来だろうか、100年ぶりくらいだろうか。。。
工夫している点はある
私はもともと技術者なので、技術者が書くわけのわからない独特な日本語というのに相当な免疫を持っている。だから、主語と目的語が両方ともないような文章(例:○○時、Reset復帰にて再開する)とか接続詞の誤用(例:「〜だから、〜のため」と書いてあるのに因果関係がない、あるいは「〜だが」とあるのに逆接になっていないとか。)に対して書き手の本当の意図に比較的簡単に気づくことができる。
また、質問を具体的な提案という形にすることができるのも強い。今述べたように、文章の裏側を読むことができるので、「本当はこう言いたかったんじゃないですか?」という風に、YES/NOで答えられる質問が作れる。ほかの翻訳者は、質問をするにしても「これはどういう意味ですか?」という風にしか聞くことができないので、結局また相手のわけのわからん独特な日本語が上塗りされてこんがらがってしまう。
パイロットと同じく、翻訳者も最初の仕事を得るのが難しい。仕事を得るには経験が必要で、経験は仕事をすることでしか手に入らない。その点で、私はものすごくラッキーだった。翻訳の経験がいっさいないのに、翻訳専属の仕事が見つかることはほとんどない。大体は、事務仕事の傍らに翻訳をやらせてもらい、それを積み重ねて経験とする。私の場合、派遣会社に登録した次の日にたまたま今の会社の案件が振ってきたらしい。運がよかった。
そういうわけで、私はほかの翻訳者とは少し毛並みが違う。(相対的に優れているという意味ではなく、単純に「違う」という意味で。)平たく言うと、日本語で勝負している翻訳者だ。英語もがんばっていはいるが、私の英語はほかの翻訳の人に比べるとまだまだ浅い面が否めない。ほかの人は、たとえばeconomy、an economy、the economy、 economiesの違いを知って訳すことができるが、私は(最近意識しだしたけどね)そういう力はまだまだだ。その代わり、エンジニアの日本語を平易なわかりやすい「日本語」に翻訳する能力は、他より優れている。わかりやすい日本語なら、私も精度よく訳すことができる。結果品質も上がる。
越権行為
今回の思いがけないフィードバックは、私の持つ、翻訳者としての異質さが先方の担当者(設計者)によく映ったということなのだろう。普通の翻訳者は、原稿に書いてあることを正確に訳すことに全力を尽くす。また、パフォーマンスを上げるために無駄なことは一切しない。原稿が間違っていようが、意味のわからない日本語だろうが、そこに書かれている言語としての構造を日本語から英語にするだけだ。それは、当たり前のことで、翻訳者のひとつのあるべき姿でもある。
だが、私は誤記を見つけたら確認する(仕様書なのに数字が間違っているということもある)し、だらだらと長い文章で書かれた表現を箇条書きにしたり、さらにそのフォーマットを他にも適用して変化を数字だけにする(そうすればそのフォーマットで書かれた箇所は数字の違いだけを見ればいいので「読まなくてもわかる資料」が出来上がる)ことを提案したりする。今回はそれがいいほうに取られた。つまり、書かれていることの意味と意図を徹底的に理解して、それを逐一設計者にフィードバックしながら翻訳作業を続けていたので、設計者にとって「なんて物分りのいい翻訳者なんだ」と映ったのだと思う。
一方、まったく逆の評価になっていた可能性もある。私の翻訳は、そのスタイルから原稿にも大幅な修正が入ることがある。自分の書いた文書にうだうだと突っ込みを入れられるのを快く思わない人だっているだろうし、なにより私のやっていることは翻訳者としては越権行為だ。それでも、社内翻訳という立場で外注の翻訳者との違いを見せるために、設計者との近さを活かしてより優れたアウトプットをしようと、あえてやっている部分もある。
褒めた人がすごい
見方によって文句を言うことができた状況で、いいところを見つけて、言葉にしてそれを伝えるという行為の珍しさを考えると、賞賛すべきは私ではなく、私を褒めてくれたその設計者だと思う。普通、仕事相手に文句を言うことはあっても褒めることはほとんどない。皆ちゃんとやって当たり前だと思っているし、他人を褒めると自分が低くなったように感じることもある。人をちゃんと「褒める」ことができる人はとても少ない。
でも、その日仕事が終わって駅まで歩いていくときの気持ちのよさといったら。夜のビールのうまさといったら。周りの世界はいつもと何一つ変わっていないのに、誰かの気持ちをこんなにクリアにできることができるなら、これは是非やるべきだとおもった。今回のように、誰かのやったことは同じでも、自分が返すフィードバックは2通りという場面は多くあると思う。どちらを選ぶかは自分次第だ。
私は人を褒める側にいたい。減るモンじゃあるまいし。
翻訳の仕事というのは、楽チンそうに見えて結構しんどい。大体、8時間のほとんどを座ってすごすのは、場合によっては動き回るより疲れる。事務仕事をしている人はわかると思うけど、腰と尻に疲労が蓄積してくる。私は最近、電車で目の前の席が空いても座らなくなった、他人と体が触れ合うのが嫌だというのもあるが、なにも電車で座らなくても尻に鈍痛が出るまでオフィスで座れるからだ。
尻の痛みに耐えながら来る日も来る日も同じ作業を続ける中、先日翻訳を納品したクライアントから、こちらの上司経由でありえないフィードバックが返ってきた。
「担当のAtsusukeさんという方は、物事の要点の捉え方がピカイチです。」
最初は何をいっているのかよくわからなかったが、どうやら私のやった仕事を褒めてくれているようだった。これはうれしかった。仕事で褒められたのなんていつ以来だろうか、100年ぶりくらいだろうか。。。
工夫している点はある
私はもともと技術者なので、技術者が書く
また、質問を具体的な提案という形にすることができるのも強い。今述べたように、文章の裏側を読むことができるので、「本当はこう言いたかったんじゃないですか?」という風に、YES/NOで答えられる質問が作れる。ほかの翻訳者は、質問をするにしても「これはどういう意味ですか?」という風にしか聞くことができないので、結局また相手の
パイロットと同じく、翻訳者も最初の仕事を得るのが難しい。仕事を得るには経験が必要で、経験は仕事をすることでしか手に入らない。その点で、私はものすごくラッキーだった。翻訳の経験がいっさいないのに、翻訳専属の仕事が見つかることはほとんどない。大体は、事務仕事の傍らに翻訳をやらせてもらい、それを積み重ねて経験とする。私の場合、派遣会社に登録した次の日にたまたま今の会社の案件が振ってきたらしい。運がよかった。
そういうわけで、私はほかの翻訳者とは少し毛並みが違う。(相対的に優れているという意味ではなく、単純に「違う」という意味で。)平たく言うと、日本語で勝負している翻訳者だ。英語もがんばっていはいるが、私の英語はほかの翻訳の人に比べるとまだまだ浅い面が否めない。ほかの人は、たとえばeconomy、an economy、the economy、 economiesの違いを知って訳すことができるが、私は(最近意識しだしたけどね)そういう力はまだまだだ。その代わり、エンジニアの日本語を平易なわかりやすい「日本語」に翻訳する能力は、他より優れている。わかりやすい日本語なら、私も精度よく訳すことができる。結果品質も上がる。
越権行為
今回の思いがけないフィードバックは、私の持つ、翻訳者としての異質さが先方の担当者(設計者)によく映ったということなのだろう。普通の翻訳者は、原稿に書いてあることを正確に訳すことに全力を尽くす。また、パフォーマンスを上げるために無駄なことは一切しない。原稿が間違っていようが、意味のわからない日本語だろうが、そこに書かれている言語としての構造を日本語から英語にするだけだ。それは、当たり前のことで、翻訳者のひとつのあるべき姿でもある。
だが、私は誤記を見つけたら確認する(仕様書なのに数字が間違っているということもある)し、だらだらと長い文章で書かれた表現を箇条書きにしたり、さらにそのフォーマットを他にも適用して変化を数字だけにする(そうすればそのフォーマットで書かれた箇所は数字の違いだけを見ればいいので「読まなくてもわかる資料」が出来上がる)ことを提案したりする。今回はそれがいいほうに取られた。つまり、書かれていることの意味と意図を徹底的に理解して、それを逐一設計者にフィードバックしながら翻訳作業を続けていたので、設計者にとって「なんて物分りのいい翻訳者なんだ」と映ったのだと思う。
一方、まったく逆の評価になっていた可能性もある。私の翻訳は、そのスタイルから原稿にも大幅な修正が入ることがある。自分の書いた文書にうだうだと突っ込みを入れられるのを快く思わない人だっているだろうし、なにより私のやっていることは翻訳者としては越権行為だ。それでも、社内翻訳という立場で外注の翻訳者との違いを見せるために、設計者との近さを活かしてより優れたアウトプットをしようと、あえてやっている部分もある。
褒めた人がすごい
見方によって文句を言うことができた状況で、いいところを見つけて、言葉にしてそれを伝えるという行為の珍しさを考えると、賞賛すべきは私ではなく、私を褒めてくれたその設計者だと思う。普通、仕事相手に文句を言うことはあっても褒めることはほとんどない。皆ちゃんとやって当たり前だと思っているし、他人を褒めると自分が低くなったように感じることもある。人をちゃんと「褒める」ことができる人はとても少ない。
でも、その日仕事が終わって駅まで歩いていくときの気持ちのよさといったら。夜のビールのうまさといったら。周りの世界はいつもと何一つ変わっていないのに、誰かの気持ちをこんなにクリアにできることができるなら、これは是非やるべきだとおもった。今回のように、誰かのやったことは同じでも、自分が返すフィードバックは2通りという場面は多くあると思う。どちらを選ぶかは自分次第だ。
私は人を褒める側にいたい。減るモンじゃあるまいし。
2012.06.05 Tuesday
私の行っていた学校では、日本人スタッフが期ごとに卒業記念ビデオを作っている。(我々の期では作らなかった、ちょっと残念。)
これを、インド人が作ると、こうなる。
カメラはブレブレで、(ってか2:45!!音楽パクってるだろ! 笑) 編集も何もあったものではないが、学校を隅から隅まで歩いているので様子はよく分かる。雑だが、学校を紹介するという目的は完璧に達成している。笑 なんだか、日本人とインド人のフライトの違いがそのまま現れているようで興味深い。
・日本は細部をきっちり、美しくやる。それも、みんなでやる。職人気質。その代わり、緊張しいで細部にこだわりすぎて大事なことを忘れることがある、英語が苦手、かたまって閉鎖的になることがあり、コミュニケーションは受動的。
・インド人(Kiwiもそうだが)は考え方が大雑把で、細かいことに気が回らない。最低限の重要なことは何かはわかっている。勉強する人とそうでない人の落差がものすごい。でも、英語は自信満々。コミュニケーションは能動的でマシンガンのようにしゃべる。
足して2で割るとちょうど良い。
最後に、インド人の学校へのインタビューが。彼らの発音には、慣れるまで時間がかかった。今では全部分かってしまう自分が怖い。笑
このビデオをみて、どう思うだろうか。顔が大写しで発音もすごくなまっていて日本人の「空気」で見ると滑稽に見えるかもしれない。だが、「学校についてどう思う?」と聞かれて、即座に、カメラの前で、彼らと同じように話せないのなら、あるいは、「空気」を気にして自意識過剰になり、大写しになった顔についている口はピクリとも動かないのなら、笑われるのはむしろこちらのほうだ。
彼らがEnglish proficiency test(航空英語証明)という、日本人の弱点である試験を楽にLevel 6で通過していくのは、こうやって話を振られてスッと話せるからだ。Level 6というのは、飛行機を飛ばすに当たって英語の運用能力がネイティブ並と判断されたということ。有効期限は無期限。Level 5で6年、Level 4で3年(だったっけ?)因みに私はLevel 5。英語圏で教官になることだし、私も早く6を取りたい。そのためには、アウトプットの訓練をしなきゃなと思って最近色々やっている。それについてはまた今度。
日本人の学生さんたちも、こうやってアウトプットの機会を強制的に作れば、英語の運用力は飛躍的に上がると思うんだけどなぁ。学校紹介インタビュー、英語でやってみたらどうだろう。
これを、インド人が作ると、こうなる。
カメラはブレブレで、(ってか2:45!!音楽パクってるだろ! 笑) 編集も何もあったものではないが、学校を隅から隅まで歩いているので様子はよく分かる。雑だが、学校を紹介するという目的は完璧に達成している。笑 なんだか、日本人とインド人のフライトの違いがそのまま現れているようで興味深い。
・日本は細部をきっちり、美しくやる。それも、みんなでやる。職人気質。その代わり、緊張しいで細部にこだわりすぎて大事なことを忘れることがある、英語が苦手、かたまって閉鎖的になることがあり、コミュニケーションは受動的。
・インド人(Kiwiもそうだが)は考え方が大雑把で、細かいことに気が回らない。最低限の重要なことは何かはわかっている。勉強する人とそうでない人の落差がものすごい。でも、英語は自信満々。コミュニケーションは能動的でマシンガンのようにしゃべる。
足して2で割るとちょうど良い。
最後に、インド人の学校へのインタビューが。彼らの発音には、慣れるまで時間がかかった。今では全部分かってしまう自分が怖い。笑
このビデオをみて、どう思うだろうか。顔が大写しで発音もすごくなまっていて日本人の「空気」で見ると滑稽に見えるかもしれない。だが、「学校についてどう思う?」と聞かれて、即座に、カメラの前で、彼らと同じように話せないのなら、あるいは、「空気」を気にして自意識過剰になり、大写しになった顔についている口はピクリとも動かないのなら、笑われるのはむしろこちらのほうだ。
彼らがEnglish proficiency test(航空英語証明)という、日本人の弱点である試験を楽にLevel 6で通過していくのは、こうやって話を振られてスッと話せるからだ。Level 6というのは、飛行機を飛ばすに当たって英語の運用能力がネイティブ並と判断されたということ。有効期限は無期限。Level 5で6年、Level 4で3年(だったっけ?)因みに私はLevel 5。英語圏で教官になることだし、私も早く6を取りたい。そのためには、アウトプットの訓練をしなきゃなと思って最近色々やっている。それについてはまた今度。
日本人の学生さんたちも、こうやってアウトプットの機会を強制的に作れば、英語の運用力は飛躍的に上がると思うんだけどなぁ。学校紹介インタビュー、英語でやってみたらどうだろう。
2012.06.01 Friday
戦略の不在は不安を呼ぶ
戦略はどこで負けるかを考えて、戦術は局面でどうやって勝つかを考える。私は帰国して以来、日本でやるか、NZでやるか、決めかねてウロウロウロウロしてたわけだが、先日NZでやる!と決めたことで、心が極(き)まった。おかげで今は、電車に乗っていても不安になることは少なくなった。肉を切らせて骨を断つ、というけれど、どこの肉を切らせるのかを決めることが戦略を考えることなんだと思う。
日本でやるとしたら
私はNZでやることを決めたが、もし日本でやるとしていたら、どうなるか、ちょっと想定してみよう。
私は日本の学校に行けばパイロットになれる勝算は大いにあると感じていた。なぜなら、同じ訓練をした先輩がラインに就職して活躍していること、飛行学校で訓練中の先輩も、順調にラインの推薦制度にコマを進めていること、今年から訓練を始めた同期も、着実に日本の訓練を消化している様子を聞いているからだ。もちろん、彼らは彼らなりに個人的な努力を重ねているし、同じ訓練をしたから合格できるというのは論理の飛躍だけど、少なくとも私は彼らと同じだけの努力をする熱意と根気と方法を知っている。
ジェットスターの説明会でも感じたとおり、日本には沢山ラインパイロットがいて、皆自分の生活のために良い条件の雇用はないかと目を光らせている。私たちより経験もあるし、人が集まれば倍率も高くなる。狭き門だ。でも、そこは日本という特殊条件を逆手に取ることが出来る。海外では500時間弱の飛行経験でエアラインのF/Oに応募できるところなんてない。
日本で一番規模の大きな飛行学校に行って、まずその中でベストを尽くせば、その中でも上位にくい込むことは(それを「簡単だ」というつもりはない。先輩達もそれぞれのプレッシャーを抱えてぎりぎりのところでやっている。念為。)出来ないわけではない。そうして良い評価を得た上で就職戦線に並べば、数百倍の倍率が数十倍くらいにはなるだろう。
そして、実際の面接やシミュレータなどで採用試験を受けるときは、たとえ数百人という応募があっても、その全てをいちどきに面接するのは物理的に不可能だから、集団面接でも、せいぜい5、6人だ。この位の人数なら、手に負える。つまり、たくさん応募者がいても、局面局面でベストを尽くして各個撃破していけばいい。
戦略と戦術
戦略はどこで負けるかを考え、戦術は局面でいかに勝つかを考えるといった。では、今述べた日本でのやり方について、それぞれなにがどう当てはまるだろうか。この作戦に、戦略はあるのだろうか。
まず、作戦を立案する前の段階、つまり日本を選ぶという選択をすることそのものが、私にとって戦略的発案になる。なぜなら、NZを捨てるという選択をしているから。NZで飛ぶということは私にとってすごく魅力的だから、それをあきらめるということは、肉を切らせている、つまり負けているということだ。その代わり、日本で良い給料でジェット機を飛ばすという「骨」を断ちに行く。
また、日本の飛行学校に行くというのも負けどころである。フリーランチはない。これには膨大な訓練費がかかる。お金を払う、という負け。私は、どうして日本の訓練はセスナでも1時間で5万円(NZではチェロキーは12000円くらい)などと法外な値段がするのだろうとずっと疑問だった。飛行機のオペレーションコストが高いから、というのは答えになっていない。知りたいのは、飛行機を飛ばすという質的に違いのないサービスに、なぜこんなに違いが出るのかということだ。最近の私の見解は、これは、海外なら膨大な時間を掛けてゆっくりとPICの経験(恐い経験も楽しい経験も)を積み、やっと得られる資格を「超短期間で手に入れるための値段」なのだと思った。でもその代わりに得るのは、世界では類を見ないラインパイロットへの切符。ラインパイロットに早く到達するという「骨」を断つために、金という「肉」を切らせるのだ。
ここまで決めて、やっと戦術に頭を移すことが出来る。採用試験が始まったら、負けは許されない。ここにおいては戦略など不要、四の五の考えずにベストを尽くす。絶対に負けられない戦いだ。局面を各個撃破していくには、当然それ相応の実力(主にフライトスキル、コミュニケーションスキル)が必要で、それを学校で身につけるのだ。就職戦線の枠に食い込むためには、日本の学校に入る時点で自分の強みや弱みを把握できていないと、海外ではありえないこの特殊制度の旨味を活かせない。先輩や同期たちは、その点に限って心配はない。
結局、私は最初の選択を仕切りなおして、NZに行くことが自分にとって「骨」だと気づいた。それでもやることは変わらない。皆、問題なく日本でラインパイロットを勝ち取っていくだろう、応援しています!
戦略はどこで負けるかを考えて、戦術は局面でどうやって勝つかを考える。私は帰国して以来、日本でやるか、NZでやるか、決めかねてウロウロウロウロしてたわけだが、先日NZでやる!と決めたことで、心が極(き)まった。おかげで今は、電車に乗っていても不安になることは少なくなった。肉を切らせて骨を断つ、というけれど、どこの肉を切らせるのかを決めることが戦略を考えることなんだと思う。
日本でやるとしたら
私はNZでやることを決めたが、もし日本でやるとしていたら、どうなるか、ちょっと想定してみよう。
私は日本の学校に行けばパイロットになれる勝算は大いにあると感じていた。なぜなら、同じ訓練をした先輩がラインに就職して活躍していること、飛行学校で訓練中の先輩も、順調にラインの推薦制度にコマを進めていること、今年から訓練を始めた同期も、着実に日本の訓練を消化している様子を聞いているからだ。もちろん、彼らは彼らなりに個人的な努力を重ねているし、同じ訓練をしたから合格できるというのは論理の飛躍だけど、少なくとも私は彼らと同じだけの努力をする熱意と根気と方法を知っている。
ジェットスターの説明会でも感じたとおり、日本には沢山ラインパイロットがいて、皆自分の生活のために良い条件の雇用はないかと目を光らせている。私たちより経験もあるし、人が集まれば倍率も高くなる。狭き門だ。でも、そこは日本という特殊条件を逆手に取ることが出来る。海外では500時間弱の飛行経験でエアラインのF/Oに応募できるところなんてない。
日本で一番規模の大きな飛行学校に行って、まずその中でベストを尽くせば、その中でも上位にくい込むことは(それを「簡単だ」というつもりはない。先輩達もそれぞれのプレッシャーを抱えてぎりぎりのところでやっている。念為。)出来ないわけではない。そうして良い評価を得た上で就職戦線に並べば、数百倍の倍率が数十倍くらいにはなるだろう。
そして、実際の面接やシミュレータなどで採用試験を受けるときは、たとえ数百人という応募があっても、その全てをいちどきに面接するのは物理的に不可能だから、集団面接でも、せいぜい5、6人だ。この位の人数なら、手に負える。つまり、たくさん応募者がいても、局面局面でベストを尽くして各個撃破していけばいい。
戦略と戦術
戦略はどこで負けるかを考え、戦術は局面でいかに勝つかを考えるといった。では、今述べた日本でのやり方について、それぞれなにがどう当てはまるだろうか。この作戦に、戦略はあるのだろうか。
まず、作戦を立案する前の段階、つまり日本を選ぶという選択をすることそのものが、私にとって戦略的発案になる。なぜなら、NZを捨てるという選択をしているから。NZで飛ぶということは私にとってすごく魅力的だから、それをあきらめるということは、肉を切らせている、つまり負けているということだ。その代わり、日本で良い給料でジェット機を飛ばすという「骨」を断ちに行く。
また、日本の飛行学校に行くというのも負けどころである。フリーランチはない。これには膨大な訓練費がかかる。お金を払う、という負け。私は、どうして日本の訓練はセスナでも1時間で5万円(NZではチェロキーは12000円くらい)などと法外な値段がするのだろうとずっと疑問だった。飛行機のオペレーションコストが高いから、というのは答えになっていない。知りたいのは、飛行機を飛ばすという質的に違いのないサービスに、なぜこんなに違いが出るのかということだ。最近の私の見解は、これは、海外なら膨大な時間を掛けてゆっくりとPICの経験(恐い経験も楽しい経験も)を積み、やっと得られる資格を「超短期間で手に入れるための値段」なのだと思った。でもその代わりに得るのは、世界では類を見ないラインパイロットへの切符。ラインパイロットに早く到達するという「骨」を断つために、金という「肉」を切らせるのだ。
ここまで決めて、やっと戦術に頭を移すことが出来る。採用試験が始まったら、負けは許されない。ここにおいては戦略など不要、四の五の考えずにベストを尽くす。絶対に負けられない戦いだ。局面を各個撃破していくには、当然それ相応の実力(主にフライトスキル、コミュニケーションスキル)が必要で、それを学校で身につけるのだ。就職戦線の枠に食い込むためには、日本の学校に入る時点で自分の強みや弱みを把握できていないと、海外ではありえないこの特殊制度の旨味を活かせない。先輩や同期たちは、その点に限って心配はない。
結局、私は最初の選択を仕切りなおして、NZに行くことが自分にとって「骨」だと気づいた。それでもやることは変わらない。皆、問題なく日本でラインパイロットを勝ち取っていくだろう、応援しています!
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