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     2013.03.09 Saturday
今週は月曜日から木曜日の4日間でInstruction Techniques Courseなる講座を受けた。(@うちの学校)

このコースは外部から「人を教育する」ことに特化した専門家を招いてその技術を学ぶもので、インストラクターコースの一環だ。インストラクターになるにはこのコースを修了して、ログブックにその証明としてステッカーを貼りつけなければならない。授業の最終日にはAssessmentとしてひとり1テーマでプレゼンをする。講師はもちろん、学生もお互いを評価して結果が出る。昔はこういうのは無かったらしく「ものどうを教えるか」は個人の裁量・要領だったようだが、今はこうして体系的に学ぶ機会が与えられている。


うちの学校の隣にあるヘリコプターの学校にて。講座を受けた学生のうち、2人がヘリパイでそのうち1人がこの学校からきていた。

このコース、多くのKiwiは「めんどくせー」と言って何となく軽視しているように思うが、私にはとても面白かった。講師は航空業界とは全然異なる50-60代のおばちゃんで、面白いことに学校の先生でもない。どこかの学校のアドバイザーのような仕事をしているらしい。学生が5人[1]と少ないこともあり、授業のスタイルは完全にディスカッションだった。自分の意見を言わなければいけない。ぼけっとしているとすぐに質問が飛んでくるので全く気が抜けない。一日中英語をそれも100%の集中力で聞き続けるのは久々で結構タフだったが、こういう西洋式の授業を受けるのは実は初めてだったのでいろいろと勉強になった。


訓練用のロビンソンR22。一つ前の写真のでかいヘリはユーロコプターAS355でジェットエンジンが2機もついている。これがめっさかっこいい。もちろん操縦席にも座った。


想像力の問題
内容については、私が常々考えていたこととよく似ていて考えが補強できた。つまり、教育のゴールは「教わる側が教える側の想定水準(以上)に成長すること」なのだけれど、教える側も教わる側にも様々なスタイルがあって、時にその違いが断絶を生む。それを解決するのは正しい知識と想像力に基づいたコミュニケーションだけ、ということだ。

授業ではそういう抽象的な説明を講師がし出す[2]と、そのうち学生側に「あなたはそういう経験したことない?」といきなり牽制球を投げてくるので、ぼけっとしている暇はない。抽象的な内容を聞きながらその説明を自分の体験したことに落とし込んで、何か無かったかなーと準備しておく必要がある。上記のようなコミュニケーションの話を聞きながら、私は自分の最初の失速訓練のことを思い出していた。あのときは教官が「Stick Forward」という言葉を使うことで学生(私)に伝えたかった情報が、私にその想定通り伝わらなかったことが原因だった。私に教官のメッセージが届いてそれが翻訳された結果「操縦桿を前に押す」という部分がかなり強調された理解になり、結果私が出したアウトプットは飛行機をダイブさせることだった。[3]


R22のエンジンはチェロキーと同じライカミング製のレシプロエンジンだ。

脳は100Hz
もうひとつ面白かったのが、コミュニケーションの問題を脳や神経の生理的・物理的構造から軽く説明するような話になったときだ。ワークブックに、こんな表があった。


Quoted from:INSTRUCTION TECHNIQUES COURSE Lani Morris

脳とコンピュータを比べるというありがちな手法だけど、改めて数字で比べるとその違いがよくわかる。基本的にどちらもよく似ているが、脳は学習や外乱に強い代わりに処理速度がものすごく遅い。CPUの処理速度が100Hzのコンピュータなんて今どきどこを探しても無いだろう。大体この手の話は脳とコンピュータにはそれぞれ得手不得手があって、使いどころが大事です、なんて結論になるんだけど、私が持った印象は少し違う。私は常々「コクピットに乗ったときからパイロットの頭の半分はどっかに飛んでいってしまう」と考えていたのだが、もともとの処理速度が100Hzなどという性能なら、コクピットというストレス下では、頭は50Hzしか働かないことになる。この具体的な数字がどれだけ信頼性のあるものかは知らないけど、自分の経験してきた実感とよく合致するなぁ[4] という印象を受けた。

同時に、頭というのは相当注意して環境を整えてやらないと、すぐにキャパを超えてしまうんだろうなとも思った。勉強もガリ勉はいけない、寝不足で昼間活動するのもよくない。もともと性能の弱いコンピュータを引っさげてそんなアプリを何個も立ち上げながらコクピットに座るような愚なまねは慎むべきだ。せめて50Hzを100Hzに近づけられるように。

あ、Assessmentでは1 in 60 Ruleをみんなに教えて結果は無事パスでした。



1. 多くても8人くらいだという。ヘリパイからは楽しい話がたくさん聞けた。固定翼よりオペレーションは面白そうだが危険も大きい。
2. この文章は私が日本語で練り直した内容。実際の授業で話されているのは、ここまで抽象的ではない。
3. ダイブを経験させる為だったとしたらうまいやりかたなので参考にしようかな。
4. 一生懸命覚えたプロシージャも、エンジンをかけた瞬間にコクピットに充満する騒音で真っ白になってしまうのも50Hzのせいだ!
     2013.03.04 Monday
先週の土曜日、あるイベントにパイロットとして参加した。

17 Squadronというボーイスカウトみたいなことをやっているらしい(実はよくわかっていない)ところの子供達をのせて近くの飛行場をハシゴした。クライストチャーチから3人の子供をのせて離陸、いつもTGL(Touch and Go Landing)をやっているウエストメルトンをベースにする。その近くの飛行場に飛んでいって着陸した後、地上で3人の座席をローテーションする。全員が前席に座れるようする為だ。そしてウエストメルトンに帰り、違う3人をのせてまた同じことを繰り返す。。。というのを3回やった。

初めて誰かにお金を払ってもらって飛んだフライトだった。何しろ、私はこのフライトに1ドルも払っていないのだ。給料という形ではないにしろ、飛行機代はお客さんが支払ったのだからこれはCommercial Opereationだ。私はCPLを持っているのでこれが出来る。学校側としては、頭数が足りないところに都合良くC-catのHour building中の連中が数人いたのでただ働きさせようという意図があったのだろうが、とにかくパイロットとして仕事をオファーされたことはとてもうれしかった。

直前まで自分が少し緊張しているのが分かった。[1] でも前日にコースの下見に行ったし、ちょっと前にもお客さんをのせて飛んだから[2] フライトに関してはそんなにビビることはなかった。問題は、難しい年頃の子供達にどうやって満足して帰ってもらえるかということだ。私はまだインストラクターではないのでインストラクションをすることは出来ない。Kiwiのように気の利いた会話を続けることも厳しい。さらに、飛行機のブッキングの問題で私が飛ばすのはチェロキー140という一番古くて狭い飛行機。他のみんなはグラスコクピットのきれいな飛行機に乗ったのになんで僕たちだけこんな古くせーしかもろくにしゃべりもしない東洋人のパイロットなんだ、と思われたのでは面白くない。どうせ仕事をするなら、楽しく、意味のあることをやりたい。しばし考えた末に、たどり着いたのがこれ。



こちらにも紙飛行機というものは存在するけど、折り紙という文化のある日本人が作った垂直尾翼つきの紙飛行機は珍しがるはずだ。[3]こいつに乗った飛行機のコールサイン「DUP」と日付を書き込んで物で釣ってあげたらどうだろう。という考えようによっては姑息な工夫に出た。でもこの紙飛行機は上反角をつけて横揺れの安定を、クリップをつけて重心を前から1/3付近に持ってきて空力中心と合わせることで縦揺れの安定を確保したりと、いつか役立つことが入っているので彼らの為にもなるのだ。そうなのだ。

結果は思ったより好評で、物珍しいのか凄く喜んでくれた。途中、ヘッドセットのセパレータ[4]がちょっと緩んで飛行中にノイズ音を立てたり、フォレストフィールドという飛行場の滑走路が波打っていてぼこぼこ跳ねながら離陸したりとマイナーな「事件」が起こったフライトだったが、なんとか乗り切ることが出来た。その日は昼飯も食えず、ものすごく疲れたけど初仕事を無事終えた充実感は心地よいものだった。


そして、今日からInstruction Technique Courseが始まった。C-catコースの一環だが、これについてはまた後日。




1. 経験から、自分が緊張しているのが分かっていれば大丈夫だということを分かっていたので問題は無い。
2. そのお客さんはものすごく恐がったけど、子供達は静かなもんでした。私のフライトは良いのか悪いのか。。
3. 少なくともガキの頃の私だったら欲しい。
4. 日本人学生から借りたヘッドセット(Hさんありがとう!)とそのセパレータ(Nさん、事後承諾になってしまい申し訳ない!大変助かりました!)が無かったら私のフライトは成り立たなかった。お二方、ありがとうございました!





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