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     2013.04.27 Saturday
6週間のインストラクタートレーニングが終わろうとしている。

フライト訓練は続くが、座学は終了。凄く大変なコースだった。別に難しいことをやる訳ではないのだが、とにかく量が多い。たぶん学校側はわざとやっているんだと思う。わざと不可能なほどのワークロードをいちどきに与え、それをどうマネジメントするかを見ているような気がする。以前見てきた学校にもC-catコースはあるが、こんなやり方はしないそうだ。そういう理由でブログも書けなかったのだが、少し時間を作って(今だって時間があるわけではないのだが)このコースの感想を書いてみようと思う。[1]

コース初めごろ
問題は、明らかに時間がないということだ。23種類の飛行訓練ブリーフィングと、54種類の航空力学(Principle of Flight 略してPOF)の解説をほぼ丸暗記しなければならない。実際の試験ではそれらをホワイトボードに決められた順番でプレゼンする。台本はあらかじめ出来ている。


これが


こうなる

1日だいたい3種類のブリーフィングが新しく課題として出される。ノートにホワイトボードに書くことを写し、その隙間という隙間に台詞を書き込む。字ってこんなに小さく書けるんだと我ながら関心した。一度インストラクターがデモをし、直後にやれ、といわれるのだが英語ではやはり厳しい。ノートに台詞を書いておかないと何も出てこなくて只立ち尽くすしかなくなる。実際初日はそうなった。どうしても予習が必要になってくるのだが、最初の2日間はimposeされるばかりでノートの取り方もわからず見事にハマった。インストラクターのあきれた顔をみて自分の中に逃げ出したい気持ちが出てくるのが分かったが、その気持ちを持ったまま次の日までにプログレスを示そうと必死になった。

結果、その後数日はかなりの改善を見せられたとおもう。予習で次の日の練習まで出来たときはもっとよくなった。最初がひどくてもいい、プログレスを見せることが最も重要だ。

こんな感じのノートに。


コース中盤 フライト訓練開始
やっと予習復習のリズムが出てきたところで、教官同乗訓練(Dual flight)が始まる。そこでそれまでの方法は通用しなくなった。フライトの予習復習も必要になってくるので完全にキャパを超えた。一時期は次の日の頭のパフォーマンスを削るとわかっていながら夜中の3時頃まで予習をしなければならなくて、てーへんだった。

難しいのは、ただ「がんばればいい」という訳ではないというところ。ちゃんと結果を出すことが重要。どんな方法[2] でもいいが、自分が発表するときにちゃんと形にしておくこと。それさえしっかりやっていれば文句は出ない。

私の同期のKiwiのリチャード君[3] は当然英語が出来るので、予習をあまりしなくてもスイスイ。若いKiwiの教官はリチャードのときは冗談でも飛ばしながら和やかな雰囲気でやるが、私のときはおそらく鏡で見せたら本人も驚くんじゃないかというくらいのしかめっ面でブリーフィングの内容を聞き、ため息をつき、ペンをカチカチ言わせ、iphoneでゲームを始め、自分の勉強を始め、私がつっかえると眉間に瞬間接着剤で固めたかのような深いしわを寄せながら「What?」と聞いてくる。


リチャード。内容はおふざけ。

ブリーフィングやPOFは何回か教官にデモをして教官が合格判定をすると「Sign Off」という状態になり、それ以上教官にデモをする義務がなくなる。Sign offの数は進度を測る目安になっていて、ホワイトボードに書かれた数字がそれぞれ23と54から減っていくのだが、それが少しずつ数字の差となって見えてくる。明らかに私のほうが「落ちこぼれ」のように見えてくる訳だ。それは悔しいので学校の中の誰よりも早く来て誰よりも遅く帰り、おそらく学校の学生の中で誰よりも遅くまで起きて勉強していたはずだ。


でも「結果」は出ない。


コース終盤
この頃になると、私はリチャードより出来が悪いという空気が何となくできてきていて、それに耐えるのは結構精神力を使った。でもそのことで落ち込んだりするのは時間の無駄なのでやめることにした。なにしろ、ニコニコしていてもしていなくても、結果(出来ないという結果)は変わらないからだ。となれば、少なくとも明るくしていた方が身体にも良いだろう。

どうして結果が出ないのか、考えてみた。

今までの動きを整理してみると、最初はノートを軽く取っていたらホワイトボードを前にして何を言えば良いのか分からなくて立ち尽くした。次に、気合いで予習+参考ノートの一言一句を書き写してそれを読んだ。次にノートを見すぎだという指摘が入った。ノートをチラ見でべらべらしゃべるには、ノートにトリガーだけ書いておいて授業後に練習をするという方法を取った。この時点でのきつさは毎日3時間残業って感じ。ところがここにフライトが入ってきたため、物理的に時間が足りなくなった。残業3時間+12時まで持ち帰り、それでもノートが作れない。

「がんばれば」いいという単純な話ではなくなってきた。休みの無い準備はフライトでの集中力に影響し始める。何か根本的にやり方を変えなければならない。朝、英語でデモをされたブリーフィングをその場ですぐに再現するのは「無理」なのだがそんな言い訳には興味は無い。あるのは、どうしたら朝デモをされたブリーフィングをその場で再現できるか、というその方法だけ。


おふざけその2

そこで、100点を狙うことをやめてみた。一言一句再現できなくても、キーワードを拾って70点を狙えば良いかと。結果は良くなかった。キーワードを拾ってもつなぎの英語でつっかかる。つなぎの英語をノートに書いていないと、そこからもう前に進めない。70点を狙おうとしたが、30点が良いとこだ。次に、ゴールの質そのものを変えてみた。デモを一言一句再現することを100点としていたが、「伝えたい情報をしっかり伝える」を100点としてみた。すると「伝えたいこと」をそもそも理解していなかったことが明らかになった。ホワイトボードに書くことを再現したノートを見返すと、余白に台詞はたくさん書いてあるが「伝えたいこと」は少なかった。文字も小さく実際のプレゼンでは目が迷ってほとんど読めない。そこで、蛍光ペンでセクションごとの「伝えたいこと」を一言ずつ置いてみた。すると、つなぎの言葉が自然に出てきた。

ここでいけるかなと思ったのだが、その「伝えたいこと」をコアに持って自分の言葉で説明しようとすると英語の壁に打ち当たる。教官からは「大事なことを落として、不必要なことをしゃべりすぎだ」という評価が毎回出た。私にしてみれば、結果を出したつもりだったが、それは彼らの求める「結果」ではなかったということだ。

結果と「結果」
たくさんの基準にDouble bindedされていると感じた。言葉を覚える必要は無い、内容を理解してポイントを押さえていれば良い、重要なのは如何に学生にEngageしてやる気を出させるかだ、というくせに、評価自体は結局1言1句覚えないとだめという感じだし、私は私自身が納得していないことをスラスラと覚えて自信ありげに説明することが出来ないらしく、どうしてもConfidenceが出ない。

じゃぁ納得するまで聞いてみようとPOFについて質問しても「よくわからない」「そこまで深く考える必要は無い」というばかりで全く参考にならない。時には教科書で裏を取っていってそれを突きつけても「テストで主張したいならすれば」で終わる。彼らのよりどころは、自分らが「そう教わった」からそれ以外のことはわからないという一点で、「Sign offされるのが先だろう、それが出来てから出直してこい」という感じだ。[4]

どうすんの。
まぁ権限を持った複数の人がいろんなところでバラバラなことを言い出すというのは仕事でもよく経験してきたのでいまさら驚くことはでは無い。だから怒ったりはしない。私の興味は自分がどうやって自分の目的を達成するかだけだから、外部要因がどうであれ知ったこっちゃない。ただ、ゴールがどこにあるのか分からないと努力の方向性が決まらないので力が分散して結局何もできないことになってしまう。それだけは避けたかったので、いつもアドバイスをもらっているラインパイロットの先輩に相談しにいった。その結果、やり方の方向性は固まった。結論はやっぱり「自分が納得していないことを生徒に教えられるはずが無い。」だった。そりゃそうだ。テストの為に勉強しているのではない、教官は安全を確保しながら的確に人を教えられるようになる為に訓練しているのだ。だから、パターを立て板に水では伝わらないし、状況に寄って教えることや訓練プランを変えられなければならない、その柔軟さはどこからくるのか。それは自分が核心を理解していること、それを伝えようと努力することそこだけだ。[5]


相談しに行ってよかった。





1. パソコンで見た場合のこのブログの横に設置してあるツイッターにも何回か投稿した。断片的なアイディアは日々浮かんでくるが、そういうアイディアをこうしてまとまった文章にするには1時間くらいかかってしまう。そのための措置だった。今回の記事はそれらを編集して書いてみた。
2. 同期のリチャードは毎日テレビを見ながらノート取っていたらしい。
3. リチャードは元陸軍にいてアフガンに派遣されていたらしい。すごく良いやつだ。
4. 要するに、彼らはそんなに深く考えていないのだ。さっさと終わらせようぜ、というだけでなにか新しい発見や議論をしたい訳ではない。第一フライトタイムにもならないしそんなにお金ももらっていないのだろう、基本的に最近のKiwiのグランドコースの教官は皆そういう感じだ。もっとも、彼らにすればそれは悪いことではない。契約の範囲内で文句のいわれない最小限のパワーで前に進んでいるだけだ。最低限のことはこなしているので、こちらもクレームを入れづらい。実際(ナメた態度をとっているにしろ)こちらのいいところと悪い所をピックアップしてレコードに残すという、彼らの「義務」は果たしているのだから。そして、充分プログレスを見せているKiwiが隣にいるのだから。私がここでクレームを入れればそれは多分「自分の出来なさを教官のせいにした」ととられるだろう。だから文句はいわなかったが、日本でがんばって貯めたお金をこんなしょぼいグランドコースに使ったのかと思うとただひたすら残念だ。私は、そういう教官にならないようにしよう。
5. エアラインでやっているプロシージャとの比較も出来て凄くためになった。ニュージーランド航空の訓練指定校になってから、ライントレーニングの内容(TEMなど)が少しずつ入ってきているのだが、ラインでの使われ方と学校でやっていること、理解されていることにはかなりの隔たりがある。



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