<< May 2013 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
     2023.10.29 Sunday

一定期間更新がないため広告を表示しています

     2013.05.24 Friday
前途多難な予感で始まったC-catトレーニングだが、発見が無かった訳でもない。

教え方はどうあれ、Senior B(経験のあるB category instructor)だけあってジェイソン本人はやっぱり上手い。Steep turnもMax rateもずらさない。先を読んでいる。でも基本的に「おれになれ」というスタンスなので、「教わる」ことを期待してはいけない。この手の教官は、技を「盗む」作戦でいく。とにかくいろいろやらせてみて、この場合はどうするのか、ある場合はどうするのか、上空で彼の判断をいろいろと見ておく。そして地上に降りたらデブリーフィングでいろいろと突っ込みを入れて「なぜ」そういう判断になったのかということを逐一言語化して取り出す。

そういう判断は大体において教官自身も無意識にやっているので、説明は難しいだろうけど、私は感性ではなく言葉で理解して飛ぶタイプなので、言葉にしてほしい。せめて擬音・擬態語でもいい。でも悲しいかな、英語には擬音・擬態語がものすごく少ない。全て「説明」になる。加えて、もともとKiwiの教官(もちろん個人差はあるが)はブリーフィングをそこまで丁寧することに慣れていない。それは文化的なものもあると思うけど、多分学生がそこまでつっこみを入れないからだと思う。私は自分で稼いだお金で飛んでいるのでその辺は必死になる。その日の訓練からどれだけの情報を引き出せるかは学生の「技量」と考えている。


教官も模索する
さて、そうやって訓練を重ねていくと、教官の言っていることがころころと変わっている部分があることに気付く。パターのやりかたであったり、Attitudeの取り方であったり。そこは、教官自身も理屈に出来ないところだ。要するに、どう教えるべきかよくわかっていないところ。例えば、外を見て飛べ、とはよく言われることなのだが、高度がズレ始めるとどんな教官もほぼ100%高度計を指やペンでコツコツ[1]指して「直せ」と伝えてくる。そうすると、学生はその指された高度計を見て高度を直し始める。それは最初に言われた「外を見て飛べ」に反しているから、教官は今度は「針を追うな、外を見て飛べ」と言ってくる。学生は永遠にAttitudeフライトを完成できない。

Attitude(外を見ること)で飛びながら、高度をしっかりと維持することはAttitude flightのゴールだから、フライト中にそれを練習しなければ体得できない。だから教官はAttitudeで飛べとか高度を直せとか結果を節操に求めるのではなく、どうしたらその技能がない隣の学生が自分と同じAttitudeフライトが出来るようになるか、その真の原因はなんなのか、選り分けて適切なアドバイスをする必要がある。

「それが出来ている教官なんてほとんどいない。残念ながら。」


学生側に出来ること
自費訓練の学生は自社養成や軍のパイロットではないので、会社や国にお金を払ってもらって訓練をしている訳ではない。自分のお金で訓練を受けている。だから、理屈として教官を替えてもらう権利はある。でも、替えてもらった教官とて同じかも知れない。人を教えるということは元来難しいことだから、教えることがものすごく上手い教官に巡り会えるかは完全に運だ。

じゃぁどうするのか。そういう教官に巡り会えるまで時間とお金を使うという選択肢も確かにある。だが残念ながら、私にはそういう時間的金銭的余裕はなかった。今後の雇用の話もある。つまり、同期のリチャードはスイスイいっているのにここで「教官が悪いんだ!」などと駄々をこねたらどうなるか。自分の出来の悪さを教官のせいにした落ちこぼれの烙印を押されてしまうだろうし、学校側もそういう状況でシニアBを批判したぺーぺーC-catを雇おうとするだろうか。[2] 

だからといって、試験までに準備ができなくて落ちてしまったらおそらくそれも雇用に大きく響くはずだ。この学校はC-catコースを他校と比べてかなりの短期間に設定している。それは訓練についてこられる者とそうでない者を振り分ける為の措置と私は考えている。レースは始まっている。なにより、いつか誰かにお金を払ってもらって訓練をする段階にいったときにどうなる。そこにいるパイロットは教官ではないかもしれない。OJTでは現場のパイロットがいるだけだ。訓練期間は決まっていて、結果をその中で出さなければならない。

学生側に出来ること?そんなの決まっている。プロを目指すなら、自分の力でなんとかするしかない。それだけだ。


良い教官とは
ここに至って「良い教官」とは何だろうかと思う。私が仮に、先に書いたようなどんな学生の弱点も適切に見抜き、適切なアドバイスをする「教えるのが上手い教官」になれたとして、それは確かに教官自身の努力の方向として間違ってはいないとは思うのだけれど、果たしてそういう教官に最初に出会った学生は、そのずっとあとにひかえた殺伐とした訓練についていけるのだろうか。「それが出来ている教官なんてほとんどいない。残念ながら。」と書いたけど、本当にそれは「残念」なことなのだろうか、そんなことを考えながらふと横を見る。

書類整理から逃げ出せてウキウキなジェイソンが左席でハーネスを締めている。多分彼はそんな面倒くさいことを考えたことは無いんだろうなと思い至り頭を切り替える。

さて、Pre-start checklist...




1. 自衛隊の教官はヘルメットをゴツゴツかもしれないけど。

2. 私が今こんな偉そうなことを言っているのも、一応試験にパスするという結果を出したから。結果を出すまで書きたいことがブログに書けなかったのはそういう意味もある。実際ジェイソンはうまいからあの時点で教官を換えるという選択肢は、雇用を狙う私には実質なかった。正論が良論とは限らない。
     2013.05.20 Monday
先日C-catインストラクターの試験があり、無事に合格した。

訓練中は本当に時間が足りなくてやってもやっても合格する気がしなかった。テスト前日までしなかった。ブログも書けなかった。書きたいことはたくさんあった。近くテストレポートを書こうと思うのだが、まずはNZ到着から今までの動きをざっと振り返ってみる。

1月6日 NZ到着

1月 学校選び

2月〜3月中旬 Hour building

3月上旬 Instruction Technique Course

3月18日〜4月26日 C-cat Ground course(6週間)

3月下旬〜5月13日 フライト訓練

5月14日 試験


今日はフライト訓練の話を書こうと思う。


Kiwiの教官
2011年の訓練(PPLからCPL)までは日本人教官に教わっていたが、C-catからはKiwi(ニュージーランド人)の教官でいくことにした、将来の同僚になる可能性がある彼らとしっかりと信頼関係を作っておいた方がよいとおもったからだ。また、日本人教官との教え方、考え方の違いなども把握しておきたかった。もちろん、英語でのインストラクションに慣れるという意味もある。その結果、私の教官になったのはジェイソンというイギリス人のおやじ。クルーカット銀髪、大柄でいかにも「ジェイソン」という感じだ。意味不明だが。

最初のブリーフィング。挨拶もそこそこに今日のレッスンプランを。。。ってほとんどブリーフィングなんかしない。「さぁ飛ぼうぜ!」とデコに書いてある。「パターはあまり気にするな、要所をつかんでいれば俺はお前が上で何を言おうと気にしないし、第一上空でベラベラしゃべっても学生の頭にはほとんど入らない。」

「パター」とは上空でやる科目のインストラクションの台本のようなものだ。Makiの助言もあり、飛行訓練が始まる前からある程度覚えていた。みんなが思い思いにやっていたインストラクションを科目ごとにまとめて冊子にしてある。特に、試験官であるピーター・ディクソンの意向がかなり反映されていて、一種のテスト対策になっていた。Hour buildingを始めた当初、このパターで基本をおさらいできたおかげでフライトの安定が増したことを書いたが、後にこれが原因で訓練に支障が出ようとは露知らず、がんばって半分は覚えた状態でフライトに臨んだ。

「いいか、基本的にこれから俺は『学生』だからな、RadioもAirspaceもTrafficも基本的にはお前の判断で対応するようにしろよ。」


矛と盾
初フライトでは意気揚々と覚えたパターを披露した。すると、基本的には良いが、もっとこう言うといい、というところを教えてくれる。教えてくれるのは良いのだが、とりあえず全部デモンストレーションされる。私としては、パターは覚えたのだからさっさと次にいってほしいのだが、ジェイソンは気に入らない所があるらしい[1]。だが、半ばお経と化しているパターを今から変えようとするとそこで頭が引っかかって変な英語になったりフライトが崩れる。

パターは気にするな、じゃなかったのか?

パターノートにある台詞を完全にコピーしたのに、それに手を加えられたのでは予習のしようがない。Kiwiならいいかもしれないが、こちとら純ジャパニーズである。上空でアレンジするのが難しいから地上で時間をかけて準備をしてきているのに、その辺が全然分かっていない。やりづらい。


パターについて意見をいうと自分のパターの優越性についてものすごい早口でべらべらと説明を始める。その間、無意味にぐるぐる旋回する。

べらべらしゃべっても学生の頭には全然入らないんじゃなかったのか??

半ば操縦桿を奪うように「I have」しても同じ。やはりBits and pieces に変更が入る。そこに頭をとられる。フライトが崩れる。だんだんこちらのAuthorityを失ってくる。そして終始あーしろこーしろと指示を受け、それに従うフライトになる。

あんた「学生」じゃなかったのか???



デブリーフィング(飛行後のブリーフィング)では紅茶を片手に[2]トレーニングレコードに何やら書き込む。

「Good Start」


ほんまかいな。

つづく。



1. 例を挙げると、「もっとフレンドリーに。パターとパターの間につなぎの言葉を入れろ。」
「Effect of Controlの最初ではNote the distance between the nose and horizon increases の前にNose Pitches down を必ず入れろ。」
「Climbingの前は 『S & Lでは4本指、でも今回は2本指を使う(ノーズの水平線に対する位置の話)』という断りを入れてからパターだ。」等

2. さすがイギリス人だ。








Ashへのご連絡はこちら
質問箱へ
プロフィール
2010パイロット訓練
2013インストラクター
2018エアライン

命を削って、ニュージーランドでキャリアを掴む
ブログ移行しました。
2018年9月から、note.comに移行しました。
ランキング
にほんブログ村 転職キャリアブログ 20代の転職・転職活動へ
にほんブログ村
にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 海外生活ブログ ニュージーランド情報へ
にほんブログ村
JUGEM PLUS
PR