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     2013.06.21 Friday
テストレポートを書く前だが、現在の私の状況を記録しておこうと思う。

5月中旬にフライトテストに合格。

CV(履歴書)を提出。

免許申請書類の処理に時間がかかる。[1]

学校から面接の声がかかるのを待つ。

声がかかる目安である1〜2週間を超える。

学校から面接の声がかかるのを待つ。

他の学校を考え始める。

学校から面接の声がかかるのを待つ。

他の学校や会社にCVを送りまくる。

学校から面接の声がかかるのを待つ。

免許届く。(試験合格から1ヶ月)

学校から面接の声がかかるのを待つ。

校長や社長に免許見せる口実で面接を催促。

学校から面接の声がかかるのを待つ。




やばいじゃん。




通常、インストラクターコースは学校がそのコースの何人かを雇うことを前提に6人くらいのメンバーで実施される。そのため、面接はコース中に行われることが多く、そのうちの上位2〜3人がその時の需要に応じて雇われるというのが普通だ。

私が受けたコースでは私を含めて2人しかいなかった。参加を予定していた現地学生に教育ローンがおりなかった為だ。自己資金を用意できる学生が私と、もうひとりのKiwiしかいなかったのだが、これはラッキーだと思った。ライバルが減る訳だから。多分雇われるだろうと思って訓練に集中していた。ところが、今回はコース中に面接の声がかからなかった。私だけではなく、もうひとりのKiwiにも。

コースが終わり、CVを出し、面接が始まるのを待っていた。周りのKiwiともだんだん疎遠になってくる。時間だけがむなしく経っていく。校長や社長はニコニコと話をしてはくれるが、雇用の話になると確定的なことは決して言わない。校長からは「要らなければ要らないというが、約束はできない。」とのこと。そういうの一番やりづらいんだが。。。

試験合格から1ヶ月たっても声がかからないということは、学校側からすれば私のことが喉から手が出るほど欲しいという訳ではないということだ。向こうから欲しいと言わせるにはどうすれば良いか。今はそのことと、他の学校を行脚すること、BESIC GAS TURBINEという学科試験を受験すること、を考えている。

夢を実現する、というのは本当に難しいことだ。それは、「もしかしたらゴールにたどり着けないかもしれない、ダメかもしれない」という恐怖に常にさらされることに、ほとんどの人が耐えられないからだと思う。ちょうど、ゴールを知らされないままマラソンをするのに似ている。でも、私の先輩には日本で一千万の借金を背負って免許を取ってから2年、面接でだめと言われ続けてもバスの運転手をしながら食いつないでパイロットになった人がいる。

私は、そういう人が本当に強い人間だと思うし、運がよくてちゃっちゃかいってしまう人より魅力的だし、尊敬に値すると思う。私がどうなるかは、私にもよくわからない。でも少なくとも魅力的な人間になりたいと思っている。



1. "Fit and Proper Person" という、航空機の免許を取るにあたって犯罪履歴の観点から問題のない人物であることを証明する手続きに日数を要した。PPLのときに一度やったが有効期限が2年だったため。これからNZで免許を取る人は日本を始め6ヶ月以上滞在した国の犯罪経歴証明書が必要なので渡航前に取得することをお勧めする。
     2013.06.19 Wednesday
C-cat訓練中は、友達の家でフラット(間借り)をしていた。

彼はとあるLCC(最近日本でもなじみがある)の副操縦士で、凄く面白いやつだ。年齢も1歳しか変わらない。台湾とオーストラリアの二重国籍なのでどちらの国でも働くことが出来るが、彼はオーストラリアのほうが好きらしい。昔、台湾にいるときにインストラクターの資格を取ったが、すぐに現地のエアラインのCadetになり、Dash-8、777を経験して今の会社で320に乗っている。総飛行時間は6000時間近い。まったくうらやましい限りだ。英語と台湾語(?)のネイティブで、敬語の使い分けはできないが日本語も上手い。彼と話していると、日本語と英語のミックスになる。ルー大柴みたいになることもあるし、文章単位で切り替わることもある。非常に面白いコミュニケーションだ。彼と暮らしていて気付いたことがある。今日はそのことを書こうと思う。

友人が日本の会社に応募したことがあった。すると、シミュレータの試験のために分厚いマニュアルが送られてきてたくさんの数字(スピードとかパワーとか。よく「諸元」という)を覚えてこいと言われ辟易したという。それをきいた私がびっくりした。エアラインのパイロットはみんなそうやって数字で飛んでいると思っていたからだ。最初にNZにくる前に日本のパイロットの人から色々話を聞いて、飛行機を飛ばすには諸元が大切だときかされていた。だから訓練中も色々数字を集めたものだ。え?え?飛行機が速くなったら数字で飛ばさないと間に合わなくなるんじゃなかったのか。お前普段どうやってエアバス飛ばしてんだ、そう詰め寄ると、

「そんなわけないよー、みんな感覚で飛んでいるよー。」(日本語で)

数字の計画ができることは良いパイロットの条件のように感じていた私はこのとき、当たり前だけど重要な事実に気がついた。つまり、飛び方は一つではないということだ。


数字か、センスか
友人はこうも言っていた。

「日本のやり方は暗記力を試しているだけじゃないか。普通はなにも情報を与えずにシムに入れて、最初はできないけど短期間に出来るようになる、そのプログレスを見るものでしょう、そうじゃなかったらその人がパイロットに向いているかどうか、センスがあるかどうかわからないじゃないか。」

彼は台湾の航空会社にいたこともあるので、アジアの会社がそういう傾向にあるということは知っていた。真面目に、真剣に、根拠を持って。。。西洋の教育を受けた彼にはそういう文化は合わなかったらしい。それが今の会社にいる主な理由だそうだ。実際に、彼が家で勉強している姿は見たことがない。私がC-catでヒーコラ言っているときも、映画をみて笑っていた。ジェット機の操縦について聞いても、「コクピットではAP(オートパイロット)をのことをDick(男の名前)と呼ぶけど日本ではなんて名前で呼ぶんだ、ひょっとしてヒロシか?」とか、「エアバス操縦の極意はサイドスティックを男のチ○コだと思ってできるだけ触らないことだ」などとふざけたこと[1]しか返ってこない。

結局彼はオーストラリアの会社に転職した。


さて、C-cat訓練では、Kiwiの教官になった。Google Earthでウエストメルトン(クライストチャーチの西にある訓練飛行場)のファイナルの長さを調べた、といったらそんな意味の無いことはやめろといわれた。

「そんなことをしていると、パイロットのセンスが育たない、数字から外れたら何も出来ない頭でっかちになってしまうぞ。」

二人とも、センスという言葉を使った。そしてそれがパイロットとして重要なことだと言っていた。日本では「感覚で飛ぶ」ことは戒められた。この正反対と言っていいほどの違いはどこからくるのだろうか。日本以外にもエアラインはあるわけで、彼らが問題なく日々離着陸しているということは、別にセンスで飛んでも差し支えないということにならないだろうか。

唯一の正解と多様な解
色々な人と話をしてみて、たどり着いたのは「飛行機」の捉え方の違いなのではないかということ。日本で飛行機、といったら、B747とか787とかそういう旅客機のことをイメージすることが多い。それは実際に日本でオペレーションしている飛行機の大半がそういうジェット旅客機だからだと思う。羽田空港にセスナが止まっている所なんて見たことない。勢い、「飛ばし方」も旅客機のそれが考察の対象になる。そして「パイロット」になるための訓練では、旅客機の方法が「飛行機の飛ばし方」のただ一つの正解ということになる。

一方、ニュージーランド[2]では、飛行機とはジェット機もあればターボプロップもある。農薬散布の飛行機もあれば、私が乗るようなトレーニング用の飛行機もある。それらみんな飛行機で、旅客機のパイロットだけがパイロットではない。それぞれの状況に合った解が無数にあることになる。

例えば、飛行機が降下する角度はだいたい3度と決まっている。ニュージーランドでもそれは変わらない。でも、小型機はその辺の畑と区別がつかないような飛行場に降りることが多い。ファイナル直下に立ち木どころか木がライン状にならんでいることすらある。ファイナルは5度パスになる。日本では3度パス、それは旅客機の飛び方が「正解」だから。でもだからといって飛行機が4度や5度で下りてはいけない訳ではない。その飛行機が通常のマニューバの範囲で安全に降りられるなら、10度で下りてもいい。カイコウラのスカイダイビングのセスナなんか、ほとんどダイブしながら下りてくるのだ。

何を教えるべきか
場所が違うから要求されるものも違う。考えてみれば当たり前だ。それなら、日本での就職を考えている人には、あくまで旅客機がゴールなのだから日本スタイルの「根拠、数字、諸元」というコンセプト、つまり「お手本をなぞる技量」[3]を教えるのが良いのだろうか。それとも、飛行機というものを限定せずに場合によっては10度パスも考えられるんだよ、と教えた方がパイロットとしての幅は広がるのだろうか。

個人的にはこう思う
私は後者が重要と考える。四角の外に出たときに対応できることが重要と考えるからだ。でも、日本の訓練や採用試験が前者を求めるなら前者に重点を置くことが必要なのかもしれない。難しいところだ。

小型機の段階で習得するべき最も重要なことは、操縦技量に特化して言えば、飛行機が苦手なお客さんを乗せて悲鳴をあげられないような飛ばし方が出来るかどうかだと思う。それを目指せば大体のことはカバーできるはずだ。数字に過度に縛られる必要は無いと思う。パイロットの技量は操縦に関するものだけではない。コクピットの中で同時多発するタスクを順繰りに処理する優先順位のつけかたとか、今日のオペレーションでのThreatsを見つけるカンとか、それが飛行機を飛ばすことのセンスだと思う。

私のC-catテストの日、ニュージーランド航空のB737がクライストチャーチ空港の周りを周回していた。日本の会社がチャーターした737で、日本の航空局から試験官がわざわざやってきて行う機長昇格訓練[4]だったそうだ。そういえば私がIFをやっていたときも黄緑の会社が同じことをしにきていたっけ。

彼らは、どんなことを考えながらクライストチャーチの空を飛んでいたのだろうか。





1. フライバイワイヤの操作方法としては的を得ているらしい。
2. 私はニュージーランドしか知らないので。他の外国がどうかはわからない。知っている人いたら教えてください。
3. これが本当にエアラインで求められていることなのか、よくわからない。
4. いったいいくらかかるのだろう。
     2013.06.02 Sunday
訓練も折り返しを過ぎる頃になると、なんとなくコツややり方が分かってきて落ち着いてくる。


はずだった。


今まではそうだったのだが、今回はいつまでたっても上手く行っている実感がない。グラウンドとフライトが一日のうちどこかに入る。フライトが午前のこともあれば、午後のこともある。夜遅くまで勉強しているのでフライトが朝一の8時-10時で入っているときはかなりきつい。この時間帯にフライトがある学生は学校に7時半に来て飛行機をハンガーから出さなければならないのだ。

毎回何かテーマを持って臨み、それを自己評価するというのが私の訓練スタイルだったが、ジェイソンはあくまでジェイソンのペースで訓練を進めたい。私のテーマはブルドーザーに対峙するぺんぺん草のように簡単に破壊されてしまい、意気消沈、シオシオノぱーになって地上に下りてくる。グラウンドの予習に時間を割けばパターができない、パターをやればグラウンドでコテンパンにされる。そんな日々が続いた。


相談しようそうしよう
クライストチャーチに戻ってきていた師匠に相談しにいった。上記のことを伝えると、師匠にもかつて同じことが起こっていた。教官とソリが合わず、だんだんと募る不信感。でも文句を言う時間もお金の余裕も無い。与えられた条件の中で、結果を出すしか無い。出せなければそこでパイロットの夢は終わりだ。いろいろと話し込んで出た結論はシンプルで「自分が納得していないことを、学生に説明することはできない。」ということだ。試験に合格することが目的なのではない。どちらを優先するべきかは明らかだった。

納得していないことをジェイソンやグラウンドを担当するぺーぺーのC-catに質問してもちゃんとした答えは返ってこない。彼らの求めることは、この学校のやり方(特定の試験官に合わせたやり方)にさっさと慣れなさいということで、本気で航空力学の議論をしたい訳ではない。そのうち質問する気は失せた。フライトも、グラウンドも、上辺だけ問題ないように振る舞って、あとは全部自分でやることにした。パターは言うことを大幅に削ってどうでもいいことは言わないようにした。そうすると、ジェイソンからは当然、あれも言えこれも言えと指摘が入る。予想通り。今まではそれにいちいちリズムを崩されていたけど「わかった、今度また練習してくる、さぁ次にいこう」という感じで進めて、ジェイソンの評価をあまり気にしなくなったらなんだか自信が出てきた。フライトも安定する。

また、状況によっては「パターをしない」という決断も必要だと気付いた。例えば試験では「理想的な不時着[1]を今から見せます」と言いながら自分でMixtureを切り、教科書通りのパターンを描いて見せるのだが、パターンの途中に雲があったり、そもそも雲が低くて上れない場合はどうする。そんなことを想定する教官は誰もいない。でも試験でそうなるかもしれないし、実際に自分が教官になったらもう誰も教えてくれない。自分が判断しなければいけないことだ。今日は不時着日よりじゃないから訓練は中止!などと能天気なことは言えない。エンジンは雲の高さを見て止まってくれる訳ではない。パターは省略しなければならないだろう、低い高度からグライドアプローチだけを見せるとか、あえてぐちゃぐちゃにして低高度では不時着が如何に難しいかを見せるとか、やりかたはいくらでもある。パターより大事なことはたくさんあるのだ。そういう「決められた枠組み」の外に出ることを如何に想定するかっていうのが一番難しいところで、よく訓練するべきことだと思うのだが、どうも私とはピントがずれている。しゃべって飛べる教官が良い教官だとでもいうのだろうか。

師匠も同じ考えだった。よし、ならばしばらくこれでいってみよう。独りよがりはいけないが、自分の中にこうだという芯をもつことはパイロットとして絶対に必要なことだから。



1. 不時着に理想もへったくれもあるかい。



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