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     2013.11.18 Monday
お金をもらって飛ぶ立場になると、最優先事項が変わってくる。学生のときは「上手くなる」ことが一番の課題だった。でも、今はいかに「ミスをしないか」ということに変わっている。インストラクターになると、自分が上手くなることよりも、自分と学生の命を守ることへの責任がこれまでとは比べ物にならないくらい重くなる。もちろん、学生で飛んでいるときだってソロフライトはあった。自分の命だって守らなければならない。安全第一というのは変わらない。でも、なんというか、もうプレッシャーの質が違うのだ。

CPLの頃は、呑気だった。
学生の頃は、ターン中に高度をずらさないことや、ファイナルでいかにパスをずらさないで、オンパス・オンスピードで降りてくるかなど、飛行機の操縦技量そのものにこだわりを持つことが出来た。それが、フライトでやるべき「実」の部分だった。

そうした結果、たまにミスをした。「上手くなること」に意識をとられすぎると、もっと当たり前な、大事なことを忘れる。一点集中といってパイロットとしては最も戒められるべきことだ。人の命を預かる立場になると、そういうことは絶対にできなくなる。自分の後ろにはもう本当に誰もいないという立場になって、訓練生のときはまぁ呑気なフライトをしていたもんだと思う。フライトの「実」となる部分へたどり着くまでに、やることがたくさんあるというのに。。。

インストラクターの仕事は教育だから、ターンの仕方や正しい降り方、ストールのリカバリーなどをいかに「上手く」教えるかということが「実」であるはずだが、今、欲を出してそういうことに簡単に手を出してはいけない気がする。では何をするのかというと、このレッスンをすると自分はどんなミスをする可能性があるだろうか、逃げ道がなくなるところはどこだろうか、という粗探しをする。そして、最低限のことをする。無理はしない。教えられることはたくさんあるかもしれないけれど、天気、その他の外因によって自分のキャパシティがあふれてしまいそうになるなら「教える」という本来の仕事を放棄していったんワークロードを下げなければならない。保守的になる。一見、「実」の部分が達成できない質の低いフライトになってしまうように見える。

いやいや、まてよ。よく考えよう、本当に「実」とはそこなんだろうか。

ほんとうに大切なもの
技を教えることが、本当に一番大切なことなんだろうか。もちろん学生が上手いに超したことはないが、上手い下手にこだわれるのはお客さんを乗せないフライトだけだ。お客さんからしてみれば、まずは墜落しないことが200%保証されていることのほうが大事だろう。「そんなの当たり前だろう」と思うかもしれない、でも安全っていうのは穴のあいたバケツに水を入れ続けるように、常に積極的にコミットしないといけないものだ。だからエアラインでもいろいろな工夫をして、オペレーション上のThreatを管理する方法をたくさん考えて実行しているわけだ。このオペレーションでミスが出る可能性があるところはどこか、粗探しをする。今から自分がやろうとしていることをネガティブにシュミレーションすることは、頭にとっては結構面倒な手続きで、普段から訓練していないと見落としが出る。何のことはない、保守的になって危険を鋭く察知する嗅覚を鍛えなければいけないのは、エアラインでも同じなのだ。

ということは、プロを目指す学生に一番教えなければいけないことは、どこにThreatがあるか、それはどんなErrorにつながるのか、どうやってManagementするのか、という一連の考え方だ。なぜなら、学生だっていつかは「自分の後ろには誰もいない」という状況を扱うのだから。実の周りの皮だと思っていた保守的な姿勢が、実は一番伝えるべき「実」の部分なのかもしれない。上手くなるための方法は、地上で考えればいい。

どんなフライトをするか、どのように技量を伝える工夫をするか、経験を積んで徐々に慣れていくのだろう。でも、今のこの「おっかなさ」を覚えておこうと思う。恐いから、準備する。代替策を考える。

「陸単ピ」でも、PICで飛ぶっていうのはなかなか難しい。おもしろい。
     2013.11.15 Friday
ウエストメルトンでの地上勤務が終わった。

一日中ぼーっとクラブハウスの部屋の一角に座って、飛んでいる連中のわがままを聞き、飛行機をやりくりし、トイレットペーパーを注文して燃料の手配をする。3年前にはクラスメイトだった同期が一緒に働くとすごく嫌なやつだったということに愕然とし、インストラクター訓練中に同期だったやつがスタコラと飛んでいくのを窓の中から見つめ、学生を送迎して一日が終わる。そんなのを2週間繰り返した。

汚れ仕事をやらされてわかったのは、いかにも弱いな、ということ。ゴールが見えない、いつまでこんなことが続くかわからない、という状況に本当に弱い。目の前のことに集中して少しでも成果を、なにかしらクリエイティブなことを、という姿勢が私の売りだったのに、そんなことすっかり忘れて省エネモードで働く。昔やっていた仕事も、そうなっているところにパイロットという可能性が見えてそっちに移ったんじゃなかったっけ。

ゴールが見えない、というのは嘘かもしれない。山を登っていたはずなのに途中で少し下り坂になった、「この道は実は谷底へ続いているんじゃないか」と勝手に想像してしまう。ゴールは見えていないんじゃない、その違う姿を心の内に打ち立ててしまうだけだ。周りに立ちこめる霧に投影したそのネガティブな「ゴール」を見てしまうことで、もういいや、少し休んでしまえと腰を下ろしてしまう。霧が晴れてみるとなんてことはない、長い上り坂の中の短い下りだっただけで、あと数歩進めばまた上り坂が続いていた。だったら腰なんか下ろさずに一歩一歩進んでいればよかった、と。

師匠曰く「今の仕事にいかに集中できて、何を世の中に残せたのかが重要だろう。ただ時間を貯めて、ただパイロットになれればいいのか?そうやって今、ここ、に集中できないやつは、自分がやってきた仕事に誇りを持てず、いつまでも責任感が持てない。実際、コマンド(機長)になりきれない連中はたくさんいる。そうなりたいのか?」

おし、これからは五里霧中でもゲラゲラ笑いながら前進しよう。



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