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     2015.07.25 Saturday
最近よく山の中を飛ぶ。

Terrain and Weather Awereness TrainingといってニュージーランドのPPL、CPLの免許取得時に必ずやらなければならないトレーニングだ。その昔、「地表に近いところで飛んでいてしかも天気が悪い」というような状況で小型機の事故が多発したためだという。私がCPLを終わらせた2011年に導入されたと記憶している。フライト中の景色はこんな感じ。(以下、写真は自分のオブザーブ訓練中に後席から撮ったもの。操縦中ではありません。笑)


いつも飛んでいるエリアから少し北へ足を伸ばすとすぐにサザンアルプスに入る。日本とは反対なので、今は冬。

山の中を飛ぶなんてエアラインのパイロットには必要ないんじゃ、と思うかもしれないが、先日事故が起きた広島空港だって山の中だ。オーストラリアみたいにだーんと広い大陸が続いているところならともかく、日本やニュージーランドはもちろん、このごろ元気のいい東南アジア等山の中にライン機が降りる空港がある国も少なくない。いちパイロットとして山の恐さや注意するポイントを知っているのは、いいことだと思う。なにより景色がものすごくきれいで小型機訓練の醍醐味とも言える。こんな訓練がシラバスに入っている国も少ないのではないか。他の国のことは知らんけど。


ひょうたん型のレイク ピアソン

そんな魅力が多い山岳飛行だが、教える方にとっちゃ結構大変だ。何しろ、飛行機で山の中に入っていくんですから。一歩間違えるとたちまち山肌が迫ってくる。天気だって変わりやすい。標高が高くなれば飛行機の性能も鈍る。不時着のオプションも少ない。常に頭が2手3手先にいっていないといけない。しかも、これは学生の「Awareness」つまり山に対する「認識」を高める訓練なので、学生に飛ばせるというよりは自分で飛ばす時間が長い。その上でべらべらと2時間もしゃべり続ける。これが割と大変だ。

もちろん、操縦技倆がある分、学生に飛ばせるより自分で飛ぶ方がいい場合もあるが、実は学生に「Pilot Flying」として飛んでもらって自分は「Pilot Monitoring」としてフライトをマネージメントしていた方が、フライトの全体をつかみやすい場合も多い。エアラインにつながるキャリアの重ね方として、インストラクターをやっていることの強みの一つがこの「隣の(学生といえども)パイロットと一緒に飛行機を飛ばす」というマルチクルーの頭が出来てくること。もちろん、コクピットが本当に二人で飛ばす仕様の飛行機でやるマルチクルーとは細かい部分が違うけれど、どちらが手足になって、どちらが頭になるのかという発想のスイッチに抵抗感がなくなるのは結構大事。長くなるのでこの話はまた後日。


キャッスル・ヒル。この記事で登った岩が見える。

そんな大変な山岳飛行なので、インストラクターなら誰でも出来る訳ではない。山の中を実際に飛ぶ前段階の教習経験を十分積んで、アセスメントフライトに合格する必要がある。ちなみに前段階の訓練というのは、低空飛行訓練のことだ。

ニュージーランドでは、飛行機は離着陸時を除き原則として地表から500フィート(約150メートル)以下を飛んではいけないことになっている。でも、例えばVFRクロスカントリーで遠出して帰って来る途中、雲が急に低くなって仕方なく低く飛ばざるを得なくなることだって考えられる。そうなると、周りは見えないし、低いから地図と全然見方が違うし、雲の中には入れないし、大変なわけだ。法律下限500フィートを割っていると判断した場合(あるいはもっとその前で)VFRのパイロットはIFRに移行できない限り、緊急事態を宣言してその辺の畑に安全に飛行機を不時着させる。その方が、雲の中に突っ込んだり地表すれすれを目的地まで飛ばすより安全だからだ。

そういうときにどんなことに気をつければいいのか、500フィートを割っているかどうかの判断はパイロットの目測なので、その高度では地表がどんなふうに見えるのか(羊の足が見わけられる高さは500ftらしい。牛の足なら1000ft。ニュージーランド限定テクニック。笑)そう言うことを学ぶのが低空飛行訓練。その為にわざわざ「Low Flying Area」なんてものを川等の上にもうけて、合法的に500ft以下で訓練できる環境を作り、その限られた「空間」を山の中と見立てて地表近くを飛ばす訓練を、実際に山の中に入る前に重ねる。山岳訓練はその延長線上にあるというわけだ。


Valley Fogが残っている。山の中では地表がでこぼこしていて日射が届かない部分ができる。そこでは気温が上がらず、フォグが残る。

なんでこんなことを書いているかというと、灼熱地獄のニッポンに南半球のさわやか風を届けるためでもあるが、インストラクターになってもパイロットである以上、常に技倆の向上が必要だという当たり前のことを確認したかったからだ。

(同様にパイロットである)学生を見ていると、「上手くなる」のが上手い人と、下手な人がいる。今、上手いかどうかではなく、そこからの変化率の話だ。今下手でも、期間内に上手くなればいいわけで、これができないと特にプロパイロットになるのは難しい。プロパイロットというのは、人に金を出してもらって訓練するからだ。そこで、最近自分にとって上達が必要だったこの山岳訓練で、どうやって私はこれを自分のものにしたのだろうと思ったのだ。


山の中では飛行機の姿勢の基準となる水平線が見えづらい。雪や雲のラインを参考に姿勢を合わせたりする。

でも、長くなってしまったので次回にしよう。笑

     2015.07.08 Wednesday
長かった。いや、短かったのか。

1000時間くらいの頃は「このままずっと陸単ピ」か、と思っていた。双発機、ましてジェットなんてものとは深い深い「断絶」があるように思えて仕方がなかった。陸上単発ピストン機の操縦が嫌いというわけではない。むしろ大好きだ。くるっと回してぴたっと止めてすーっと流し、顔をぐりぐり巡らして外を監視しまくった後にやっと、おまけのように中の計器を見たときにびた一文ずれていないときの快感といったら。乗り物を操縦する楽しさに関して軽飛行機ってやつは抜群である。こんなふうに。

See the ShrinersFest Air Show from our perspective.

Posted by Evansville Courier & Press on 2015年6月26日


いや、これは軽飛行機じゃなかった。。。


それでも、自分のキャリアというと話が違ってくる。なんでかは分からない。やっぱりでかい飛行機に乗ってみたいという素直な感情なのかもしれない。エアラインのオペレーションを経験してみたい、いつかチャンスはくるだろう、世界中でパイロットが不足しているのは間違いないのだ。今はプカプカ浮いているだけでも、そのときは絶対にくるはずだ。陸単ピだからって、呆然と飛ぶ訳には行かない。遅いと言っても時速200kmで移動する乗り物の責任者で、隣には大切なお客さんを乗せているのである。そう思った矢先、日本からは景気のいい話が飛び込んでくる。同期や後輩が数百時間でジェットへの就職を決めていく。仲間の努力と根性と金銭的負担が報われたことに対する安堵の反面、誘導抵抗のように発生する焦燥感。

「で、俺のはいつだ。」

いかんいかん、そうやって考えてはいかん。そうやって考えることは、いつか来るチャンスをものにするために役立たないばかりか、有害ですらある。「そのとき」になってやる気を出しても遅いからだ。やる気は目標が具体的になってからなら容易く発生するが、それでいいなら誰も苦労はしない。それでは遅いのだ。「そのとき」が具体化していない状態、つまりやる気が容易く発生しないときに目の前のことに集中し、今出来る小さなことを積み重ねておかなければならない。それだけが、大きな目標を達成する唯一の方法だ。当然のように聞こえるが、知っての通りこれは大変難しい。日常の些細なこと、寝るのか、勉強するのか。飯を食うのか、風呂に入るのか。パソコンに向かうのか、さっさと寝るのか。朝起きてから夜寝るまでの「選択」を全て意識的に行った。「あれをやらなくちゃ」と考えるのではなく、「これをやらないようにしよう」と考えてきた。

昔学生だったころ、近くをタキシングするボーイングをみて「でもいつかあそこの窓から、こっち側を見る日が来るのかな。そのときはどんな気持ちでこの文章を読むのかな。」と書いたことがあった。それから4年以上が経った。紆余曲折を経て、毎日、バーベキューの燃え残りの炭のような気持ちに再点火をしながら、いや正確には、火なんて付くはずがないけれども、絶対に生煮えの肉は出さないようになんとか余熱で耐えてきた。

そうしてやっと「そのとき」を迎え、「あちら側の窓」に移ることができた。自分自身を注意深くコントロールしてきた結果、この結果がある。あこがれの窓からの景色は、ただの仕事場からの景色だった。ここからが勝負だ。


・・・と、あと1年後、遅くとも2年後までに、この記事を書ける状況になるようにしよう。



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